表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/427

●一章-6.律法の翼

自分の表現力と語彙力の無さに軽く絶望中

どうしてもこのお話は説明が多いので読み疲れないようにしたいと思うのですが……

もどかしい。


※前回のあらすじ

 賞金首と賞金稼ぎの戦い。

 鬼が介入。

 瞬コロ

-fate アキヒト-




「あなたみたいに慎重な人、珍しいわ」


 カウンターの向こうで皿を拭く美少女がそう、俺を評した。

 年齢は高校生ほど。綺麗なブロンドをポニーテールにし、上はTシャツ、下はジーンズという活動的な出で立ち。その上から付けたエプロンが大きなふくらみに持ち上げられている。

 あ、ちょっと眉根が寄ったので慌てて視線をサンドイッチに。何処も注視していませんよ。

 これ、美味いな……。いや、ここの料理は異種人用でもない限り原則美味しいけど。


 彼女はフィルさん。フェルシア・フィルファフォーリウというのがフルネームとのこと。何この早口言葉とは思ったが、人様の名前を論うものではないと自粛。

 それにしても異世界ってなんでこう美男美女が多いんですかね。しかも飛びぬけたレベルの。

 シノは元より、この店の店長である彼女もそうだし、先ほどの騒ぎに現れた制服組もなんだかんだ二枚目三枚目が揃っていた気がする。非常に眼福なのだが、人ごみに紛れたら見分けがつかないと言われた俺としては意識するたびに居た堪れない。


 ……逆に個性的とか言われないかな?

 …………空しいから、この話はここまでにしよう。


「珍しいですかね?」

「町の中でそこまで慎重な人は初めて見たかもしれないわね」


 呆れている様子は無く、何故か感心しているようだ。これだけカオスな街で慎重にならないって豪胆な人が多すぎやしないだろうか。


「律法の翼の話だったわね。

 彼らはこの街に法律を制定するべきと主張していて、独自に治安維持活動を行っているわ」

「自警団というか、警察みたいな感じでしたね」


 同じ制服を纏い、賞金首を制圧する様はまさにそれだ。統率の取れた集団であることは素人目にもわかる。


「ただ、あなたが遭遇したドイルフーラって人は過激派なのよね」


 一瞬で警察というお堅いイメージが終了しました。それってテロリストとかに付く単語ですよね?


「彼らは元々、クロスロード成立前に発生した覇権争いに巻き込まれた人たちが、自衛のために結束した集団よ」


 戦争の裏側で良く語られる、非道なあれこれがあったということだろう。


「そういう経緯と実績もあって彼らの評価は高いわ。

 そして同じことが繰り返されないためにも、特に武器の携帯、持ち込みなどを主とした刑法の制定を主張したのだけど、門前会議ではその主張は受け入れられなかったの。

 終わってみれば一番大きな被害を出したのは大襲撃だったし、貴重な戦力の排斥や、有事に備えて武器を封じるような真似はできなかったのね」


 コーヒーのお替りが置かれる。ファミレスでない喫茶店なんて入ったことは無かったが、インスタントじゃないコーヒーって別物だなと実感中。

 ……あ、これ、コーヒーで合ってますよね? PB経由の案内だとコーヒーのはずなんだけど。


「それでその集団は一度は解散したものの、その後、管理組合の失脚を狙ったテロが頻発した事を受けて再結集。『律法の翼』として体裁を整え、法律の制定を主張すると共に自警団活動を再開させたのよ」

「普通に良い事だと思いますけど、そこからどうして過激派なんてワードが出てくるんですか?」

「彼らの中に、そう称するに相応しい行為を働く者が居るからよ」


 見た目からして暴力の化身のようなドイルフーラさんだったが、言動は相当に理性的だったように思える。少し抜けていたが。


「あの鬼の人とか、助手っぽい女性とか、冷静だったように見えましたけど」

「それは相手がそんなに強くなかったから。あと人間種の特異能力系だったからよ」


 あの甲殻アーマーは超能力的な何かだそうだ。そういう特殊能力者も多数この街には居るので、見た目での判断は危険と言わざるを得ない。

 俺、一般人過ぎませんかね? 容姿の件といい、ガッカリレアなキャラになっている気がする。


「ドイルフーラって鬼は相手が強いと周りを気にせず戦いを始めるのよ。

 以前は周囲数百メートルにわたって被害を出した事もあるわ」


 あの固そうな甲羅を素手で割り、あの巨体を瞬間移動じみた速度で動かす鬼が全力で暴れるって、もうそれ災害だよなと。


「他のメンバーも同じで特定の条件に遭遇すると被害を甚大にしてしまうの。

 中にはやり過ぎた結果、賞金を懸けられている人も居るわ」

「特定の条件って……?」

「例えば『嫌いな種族には容赦ない』ね」


 それって単なる人種差別ではなかろうか?


「彼らの中には元々極端な種族差別主義者が少なからず居たのよ。

 分かりやすいところで言うと、『魔に属する種族は問答無用で滅すべし』と憚らずに公言している聖職者が居るわ」


 数多の種族が暮らす事が前提の町で、流石にそれは、と思う。

 しかし、神様の実在が証明されていない地球ですら宗教観念で人種や他宗教を弾圧し、戦争を起こした歴史がある。場所が変わったから主義主張をあっさり覆すのは難しいのかもしれない。


「それから三世界の争乱時に発生した被害に隠れて、人を捕食する種族による被害が発生していたことが要因の一つみたいね。

 その被害者や関係者もまた、あの組織に多く所属しているわ」

「人を捕食する……って」


 ふと先ほどの蜘蛛のお姉さんが脳裏に浮かんだが、違う……よな?


「主には死食鬼や吸血鬼ね。

 負の感情を食らう魔族や邪神なんかもその類ではあるけど」

「邪神ってなんですか、邪神って!?」

「ああ、気にしないでいいわ。神種のほとんどは権能を使えないアバターで生活している事もあって、世界の破滅とか病気の蔓延とかは起こさないから」


 気にしないでいい話なのだろうか。邪神なんて単語、世界の危機とセットで聞くことがほとんどと思うのですけど。


 さりげなくPBに確認すると、神様────神種と呼ばれる存在は俺たちと同じように扉を潜ればこちらに来れるとはいかない。余りにも力が強大なためか、或いは『神種』であることが問題なのかは調査中。

 では絶対に無理かと言うとそうでもない。知られている方法は2つ。

 1つは『アバター』と呼ばれる代わりの肉体を扉が用意するらしく、それに精神を映して扉を潜る方法。もう一つは神殿などの『自分の聖域』を予め用意し、そこに降臨する方法だ。

 前者の場合は殆どの能力は使用不可能になるし、後者の場合はその聖域から出られなくなる。

 賞金制度に協力している神様は後者側らしいが、動けないのにどうしてこっちの世界に来たのだろう?


『様々な理由で信仰を失った神種が、消滅を避ける手段としてこちらに渡ってきたようです』


 神様といえど色々と大変らしい。 

 つまり……ぽつぽつといるお客の中に邪神様がいらっしゃる可能性もあるわけか。

 それにしてもほんと、脱線する話題に事欠かない世界である。


「今でこそ科学世界の恩恵で代替物が販売されているから目立った被害は出ていないけど、色々と思う所はあるでしょうね」


 元々は三世界の暴威から守るために発足したのに、守る側にも敵がいたのならやりきれないだろう。例えそれが生きるためのやむを得ない手段だとしても。


「負の感情で抑えの利かない人たちを まとめて武力制圧チームにしたのが過激派だというのが冷静な見方ね。

 過激派のトップは冷静沈着を絵に書いたような人だし、一線を越えない程度には制御されているもの」


 いずれにせよ、人間種のあなたにとっては害になる組織ではないわと、フィルさんは話に結論付ける。


「……管理組合って、何でそんなに頑ななんですかね。」


 賞金制度の事といい、どうにも不干渉を貫き過ぎている気がする。

 限界まで主義主張を殺し、この街を維持する事だけに特化しようとしているのは間違いないだろう。


 フィルさんはその言葉に苦笑のようなものを見せて、拭き終わった皿を奥へと運んで行ってしまった。


 残された俺は傍らを見る。

 そこにはやたら幸せそうな顔のシノがスプーンを咥えている姿がある。


 彼女、試しに頼んでみたプリンアラモードに夢中で、今の話はほとんど聞いていない模様です。

 ちょっと ほっこりしたよ、うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ