50:タナダタの町攻防戦(夜)-7-
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
2015/7/9:文章手直し
俺は空を駆け、水鉄のユニーク野郎との距離を詰める。
『くそっ、まだどう頑張っても五分はかかるよな』
俺は頭の中で火具部隊の射撃までの時間をザッと見積もる。
『下手すると十分はかかる、か、くそっ、くそっ』
俺はひたすら駆ける。あのデカブツだけは俺を見据えたまま棒立ち状態で動かなくなってしまった。
『早く、もっと早くだ』
再びえげつない一筋の水を放たれたらたまったもんでない。何故か一発目を放ってから両の腕を下したまま、棒立ちになったユニーク野郎をみながらそう思う。
俺はひたすら空を駆け、水鉄のユニークへと接近をする。後一歩、後一歩だ。俺の間合いまであと一歩である、間合いを詰めると同時に火の力を剣先に集束させる。
『きたぁぁぁぁ』
この巨大な水鉄を倒すための手段。この距離からだと、相手の水操作のように力を集束させて線状に貫く力が必要が出てくる。
あの体の表面に流れる水は、あらゆる物が接触すると粉砕してしまうほどの激流だ。俺の火が通るかどうかは、正直自信はない。
『とりあえず喰らいやがれっ!』
ロングソードの先から火球が水鉄の頭上へと飛来する。
「落下斬ッッ」
俺は空を思いっきり火の操作を込め縦斬りにする。
ビュンッと音をたてその切っ先が水面へと向かうと同時に頭上へ放たれた火が真っ直ぐに落下をはじめる。
『切ないぜ……』
火の線が世界を串刺しにする。
「ギギギギッギギギ」
串刺しになる瞬間、水鉄はその巨大な体をズラし直撃をまぬがれる。
ジュワワワワッ、とかすった表面に流れる水の鎧が物凄い勢いで蒸発するも、新たな水の流れが俺の火線と擦れ合い全くの無傷である。
『あんな動きアリかよ……』
俺の特大の火の操作は不発となる、が更に間合いを詰め接近を試みる。
「なっ」
俺が連撃をかまそうと近づいた瞬間、水鉄の鎧の隙間から小さな水鉄が両の腕を突き出すのを目視する。
気が付いた時には極小の一筋の水が俺へと襲い掛かる。
『こなくそぉぉ』
無理やり足への火の操作を解きバランスを崩す、そのまま俺は自然落下に身を任す。
「ぐあぁ」
左の肘から先をバッサリとカットされていたが、間一髪直撃は免れた。
『あんにゃろ』
切断面を自身の火の操作で焦がし、止血をする。そのまま俺の体がチャ川へと落下すると同時に、9つの赤い光が音もなく飛来した。
『第三組、四組が間に合ったか……』
俺の左側には第三組が放つフレイザーが、右側五体には第四組が放つフレイザーがそれぞれ水鉄を貫く。
『おいおい、俺が頑張らなくても良かったんじゃないかコレ』
チャ川に落ちる寸でで火の操作を行い、再び火の膜へと立って見せる。
音もなく飛来したフレイザーは九本中八本が命中しており、水鉄に当たった瞬間にその部位が抉りとられていた。
残りの一本は外れたが奥にある大陸までは届かず赤い光がツーと消えていった。
『あれ、フレイザーのランクいくつなんだよ……』
そんな事を思いながら、俺は再び残り二体の水鉄をにらむ。
『さて、あんなのすぐに二発目の期待はできないよな……』
正直に言って、俺だけではこの先の対策が無いのである。
『それにあのユニーク、中に小さい水鉄を飼ってやがる』
あの厄介なユニークには近づきたくもないが、放置するわけにもいかずモヤモヤする。だが考えていても始まらない。
俺はしばらく打ち合いをするしかないか、と腹をくくりいつ終わるかもわからない戦闘に体力を消耗してゆくのであった。
『早く次のフレイザー頼むぜ皆……』