29:モロ大地に立つ
一方その頃、ってやつですね。モロさんとセンチさんのお話。
2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。
2015/3/3:文章手直し
『遊多大丈夫かなぁ……』
そんな事を考えながら川沿いに沿って既に五時間程歩き続けている。チャ川の近くに沿っての移動なので水に困らず、熱さに参る事もない。
「モロ、そろそろ休憩にしましょう」
「えー、まだいけるよー」
しかし、センチから休憩の提案がとんでくる。先ほども休憩したばかりなのだ、こんなペースでは遊多を探し出せるのかわからない、不安である。
「もうちょっといこー?」
「こらっ、もう五時間は歩いてるわ。水が近くにあるからって急いではダメ」
「うー、わかったよ」
遊多が流されてから既に七時間は経過している。センチと二人で歩きだして二時間程した頃に一度休憩をはさみ、それからずっと歩いているが既に陽がくれだしている。へたをしたら遊多はもう……。
「うう、大丈夫だよね、大丈夫だよね」
不安でつい自身に言い聞かせる、遊多は大丈夫だと。
「あなた、よっぽど深浦さんの事が大切なのね。でも急いじゃダメ。私達まで倒れちゃ会えるものも会えなくなるわよ」
「うん」
「それにしても、北側からやってきたわりには順応力高いわね。他の地方から来る人は皆、この大地の熱さに参っちゃうものなのに」
「んーまだ平気かな、遊多は大丈夫じゃないかもだけど」
「まぁいいわ、水分補給もしましょうか」
そういうとセンチはチャ川の水をくんだ筒を取り出した。水操作を行い、センチという女性は水を汲んでいたのだ。
「水操作って、難しいー?」
何気なく聞いてみる。
「ええ、とっても難しいわよ。でも、これができなきゃ砂漠での水運びは出来ないわね」
そういい、水と火の複合操作をしてみせる。
「凍ってもダメ、蒸発してもダメ、水を汲むにもチャ川のような場所から汲むには水操作がなきゃ、命がいくつあってもたりないわ」
「こう、かなー?」
私はセンチの真似をしてみる。火操作と樹操作、そして水操作をあわせてイメージする。と、チャ川から水が入った筒が出てくる。
「なっ」
「んー、難しいね。いつか遊多にも教えてあげよっと」
「貴女、化け物ね」
「んー、モロは精霊だってばー」
センチは何度いっても精霊という言葉を信じてくれない。自分の領域から精霊が出ることは絶対ないと言い張るのだ。
「んー、センチって頑固さんだよねぇ」
「ええ、私は頑固よ。知識は大切なのよ。北側の住民については詳しくは知らないけどもね」
「そうだ、センチはお腹すいてない?」
「ええ、休憩が終わって後少し進んだらキャンプにしましょう。勿論腹ペコよ」
「うんー」
「で、貴女は食糧はもって、ないわよね手ぶらだし……」
「美味しい物食べたいっ!」
「えっと、私は干し肉が往復分だけ。自身の分しか持ち合わせてないわ」
「……うんー?」
「貴女にわけれる余裕がないのよ。魚でも釣れればいいのだけども、道具がないから無理だわ」
「釣りー?」
「貴女、ここの事は本当に何も知らないのね。釣りってのは」
センチが難しい事を言い始めるが、簡単にまとめてみる。
「川の中にいる魚ってのをとって、焼いて食べるんだね!」
「はぁ、まぁそうなんだけど、簡単には釣れないわよ」
「えいっ!」
私は樹操作により川の底よりウッドニードルを数本突き上げる。
バササァァン、と海底より発生したソレは海上に姿を現す。ソレは、私の樹操作によるウッドニードルであり、そこには魚が3匹程刺さっていた。
「これが魚かぁ。美味しいといいなぁ」
「もう驚かないわよ、貴女が常識では測れないのはよくわかったわ」
手元に魚を三匹持ってくる。大きさはそれぞれ三十㎝程の厚みのある魚である。
「魚を貸して、焼いてあげるわ」
「お願いー!」
そういい、センチはウッドニードルに刺さった魚をそのまま地面にさし、火にかけるのだった。
「今夜はここでこのままキャンプにしましょう。大丈夫、深浦って人はきっと大丈夫よ。この川を下れば後三日もすればタナダタの町なんだから」
私はセンチの言葉を聞きながら遊多の心配をしつつ、だけど、早く魚が焼けるのを心待ちにしていたのだった。
『おいしそ』




