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火の世界の豪炎  作者: PP
第一章-太陽の都編-
27/147

27:また修行がはじまりました-3-

2015/3/2:各タイトルにナンバリング記載。

2015/3/3:文章手直し

 あいだだだ、と胸中で叫び体の節々が痛みを必死に堪える。ネトゲ三昧をしていた頃の体が鍛える場所はまだ残っているよ? と訴えかけているような錯覚に襲われる。俺はぎこちなくパクリと昼食にかぶりつく。相変わらず謎の巨大卵である。シゼルには薪割りと素振り、水運び兼巡回という名目で朝から六時間程みっちりと付きっきりで居てくれたのだ。


「うま、いた」


 モロとの修行でこの世界でも生きていける体作りが出来たと思っていたが、どうやら慢心だったようだった。まだまだ体の使っていなかった筋肉が多くあるようで、今も体中が悲鳴をあげている。


 そういや、メイさんの部屋はモコン様の部屋の逆側にあるという事で、俺は最後の一口をちゅるんっと食べ終えるとそのままメイさんの部屋へと直行する事にした。


「いだだ、豪炎:湿布が役だったなぁ」


 これはモロが俺を癒してくれている時、教えてくれた火の回復術の応用である。局部的に火の流れを制御して血流をよくするだけの火の操作なのだが、これが実に有効なのである。


 と、豪炎:湿布を操作しながら俺はメイさんの部屋の前まで辿り着いた。


「メイさん、お待たせしました」


 コンコンコン、とノックをして入室すると手に棒? を持っているメイさんが待ち構えていた。


「お待ちしていました、遊多様。さっそくですがこの本を読んでくださいまし」


「はい」


 本を受け取り、ページを開き確認する。


「これ、何て書いてあるんですか?」


 そこには全く読めない文字と思われる物がつらつらと記載されていた。


「あ・な・た・は……(ビクンビクン)」


 何故、メイさんは身をよじっているんですか? ちょっと怖いです。


「文字、も読めないのですね。文字の習得につきましては教材を用意するので後回しにしましょう」


「なんだかすいません」


「いいえ、お気になさらず。では火の操作の実力を見極めさせていただきます」


 そういうと、メイさんは躊躇せず俺の手を握ってきた。それはもうガッシリと。


「では、私が流す火の操作を常に感じ取り、抵抗を続けてください」


「わかりました」


 これはラッキーだ、モロとの特訓でこれは得意だぞと、心の中で俺はドヤ顔を決めてみる。


「では、いきます!」


「はい!」


 途端、メイさんの両手から火の流れが伝わって来る。それを難なく俺も火を操作して抵抗していく。


「流石、シゼルの火をまともに受けても平気だっただけありますね。しかしまだまだ荒いですね」


「えっ?」


 俺はメイさんの言葉が終わったと同時に、抵抗の難度があがったのを感じ取る。


「え、えっ、あち、あちち、ちょ、ちょたんま、あつあつあつづづづ」


「いいえ、遊多様はやればできます! 頑張ってください」


 メイさんは俺の手をギュッと固く握ったままである。俺は手を振りほどく事も出来ないので、必死に抵抗をする事だけに専念する事にする。


『なんだなんだなんだ、右手と左手とランダムに火の流れが変わって抵抗どころじゃない、落ち着け落ち着け落ち着け』


 メイさんは両手で別々に火の操作をしているのだ。俺はまっすぐな単一の火の操作しかモロから教わってなかったので、今の状況に処理が全く追いつかないのである。


『あづづ、思い出せ、思い出せ』


 モロとの修行を思い出せ、あの頃はもっと熱かった。何もわからないまま灼熱地獄に苦しんでたあの頃を、思い出せ。俺はどうした?


「め、メイさんっ!」


「遊多様、早く抵抗してくださいまし」


「あづ、い、いえ、メイさん!」


「何ですか、さっきから。集中して下さい」


「きょ、今日も可愛いですね!」


「っっ!」


 メイさんの火の操作が一瞬乱れる、そこを俺は見逃さず一気に抵抗を仕切る。そう、あの頃の俺は相手の集中を乱して凌いでいたのだ。勿論、次はないという覚悟の元、当初は隠れて必死に特訓したとも。


「ま、また、遊多様、当然の事を言っても嬉しくなんて、嬉しくなんて。ちょっと失礼」


 パタンと、メイさんは俺をほって部屋を出ていったのを確認した。そして、とりあえず助かったぁ、とほっと一息ついたのだった。

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