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火の世界の豪炎  作者: PP
三章-ツリィム-
146/147

145:豪炎フレイザー

 魔物が居るという場所は、想像以上に町から近場であり今もギルド員達が攻防を繰り広げているのが見て取れる。魔物から少し離れた位置に降り立つと、俺はセット装備2を纏い、牽制の一打の準備を整える。


「本当に、俺の豪炎が魔物に効くのかねぇ?」

「遊多さん、クゥが遊多さんなら大丈夫って言ってたんです。だから、きっと大丈夫なんだと思います」


 サーモに言われるがまま、俺はロケットランチャーを構える。


「あっ、その前に私も試し打ちしてみます。私の矢が有効打になるとは思えませんが、その、少しでも遊多さんの為になるなら」


 なるほど。サーモはこう言いたいのだ、もし俺の豪炎が効果なくても付与矢でもダメージは無い、だから気にしないでくださいと。


「それじゃ、ちょっとお手並み拝見」


 内心、全く期待されてない事に傷つきながらもサーモが矢を放つ。しかし予想通りというか、矢は魔物に届く前に燃え尽きて消失してしまう。付与矢に至っては、火の耐性が強く、燃やされるという事は考えにくい事なのだが現実にそれは起こった。


「あぁ、やっぱり今暴れてる魔物はランクが違いすぎます」

「それじゃ、今度は俺な。いきますか、ファイオー!」


 遠目に見える魔物は、巨大な狼の見た目をしている。だがほとんど動く事無く、ギルド員からの攻撃を物ともせず周囲を警戒している感じである。そして俺のロケットランチャーの弾を、確かにその魔物は視界にとらえた。


「えっ」


 思わず声が出た。魔物は俺のロケットランチャーに警戒したのか、初めてその場から跳躍して躱して見せたのだ。そして魔物は駆け出す、俺の居る場所に向かい。


「ちょ、こっち来てるよ!?」


 声を出し振り向くと、既にサーモはタマコに乗って空の上へ。


「遊多さん、私信じてますよ!」

「おま、俺も乗せてーーー」


 俺の声は届く事無く、どんどん高度を上げていくタマコ。やばい、やばいと焦る俺は一つの声に正気を取り戻す。


「お兄ちゃん、私の背に捕まって」

「みゅ、ミューズ。お前もこっちに来てたのか……」

「馬鹿にぃ、アレは一人で戦っていいものじゃない。ヒヒ、それに何か戦神の加護が調子いいのよ。早く背に捕まって」

「そ、そんな負ぶってもらうなんて」

「早く、時間無い」


 ミューズの言葉に偽りはない。身体能力の高いミューズにおぶってもらう方が生存確率は上がるのだろう。悩む時間も命とりである、俺は意を決してミューズにおぶさる。


「ヒヒ、これであの時とはおあいこね。しっかり捕まっててよ」

「お、おう。これで良いか?」

「ダメ、それじゃ振り落としちゃう。良いよ、摘まんでて」


 摘まんでて良い、とはどこの事かねミューズ君? 取り敢えず肩をガシリと力強く摘まんで見せる。


「ヒヒ、お兄ちゃんそれじゃ落ちるからね? 私の胸をギュッとしたらいい、時間ない、早く」


 はい? 今なんと。と悩んでいる暇はなさそうなので、俺は首に腕を回しクロスさせ、更に胸を鷲掴みにしてガッチリとホールドしてみせる。


「バカっ、ローブの上からじゃ弱いから! 早く、回避間に合わなくなる!」

「えっ、ええいママヨ」


 俺は一瞬でミューズの言葉を理解し、首元のローブの隙間から両腕を中に潜り込ませると、直接ソレを掴む。


「振り落とされないでね」

「わかった」


 俺の言葉と共に、いつの間にか跳躍してきた魔物の爪が先ほどまでいた場所を切り裂いていた。ミューズの回避性能がなければ今頃俺の体はまっぷたつに切り裂かれていただろう。


「お兄ちゃん、今の私と二人ならあの魔物をきっと倒せる。でも、私には有効な攻撃方法が無いの、だから攻撃は任せたからね?」

「お、おう。頑張ってみる」


 両腕が塞がっているこの状況で使える攻撃方法、それに一つだけ心当たりがある。俺は書物でコピーした内容を必死に思い出す。思い出すは、フレイザーⅤ。


 頭上にリングが一つ、二つ、三つと生成されてゆく。


「くそっ、取り敢えずくらいやがれ!」


 四つ目の生成に失敗した俺は、取り急ぎで三つのリングに火を集中させる。甲高い音と共にそれぞれ回転を始めるリングは、中央に豪炎の火を圧縮させ、じわり、じわりと順に小さいリングに配列された中央へと移動を開始する。


 そして、一番小さいリングの中央へ豪炎が辿り着いた瞬間、ヒュンッと空を切り裂く音と共に豪炎の火が伸びる。


「グガアアアアアアア」


 フレイザーは魔物の前脚に当たると、そのまま貫通して後ろ足まで一気に貫いて見せる。


「えっ、マジで……?」


 思わず声が出る。俺の豪炎は木を燃やす事すら出来ない火だったはずなのに、今、間違いなく豪炎で魔物の体を貫いたのである。


「お兄ちゃん、早くとどめ!」

「お、応!」


 再び俺は豪炎をチャージさせると、今度はしっかりと頭部を豪炎フレイザーが貫通し、グタリと魔物はその場に崩れ落ちる。その瞬間、その場に居たギルド員や空高く見守っていたサーモから歓喜の声が沸き上がる。


「や、やったのか……?」


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