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火の世界の豪炎  作者: PP
三章-ツリィム-
142/147

141:アリガトウゴザイマス、アリガトウゴザイマス

 再び戻ってきた部屋で土の間、文字の間の二択に迫られていた。


「んー、文字の方が安定しそうだよなぁ。読み書き覚えれたら一石二鳥かも? おお、そうだな、チュートリアルって大切だもんな」


 俺はキーボードを自然に叩き、独り言をして決意を固める。こうでもしなければ、やってられないというのが正直なところである。


「お邪魔しまーす」

「ふふ、やったぞ。良く来た人間、待ってたよ」


 物凄く嬉しそうな顔で俺に近づいて来る神様。声質は女性だが、外見は男性っぽい。服装がシャツ一枚なのでギリギリどちらか判断がつかない。


「いやぁ、私を選んでくれると思っていたよ。それにその喋る前に必ず浮かぶ文字、興味あるなぁ。記号が浮かんだと思えばすぐに他の記号に変わって、それが一定量溜まると消滅。途端、話しだすんだもんなぁ。記号じゃなくてやはりそれは文字だよね、うん。そうだ、この書物にある文字はね」


 ずいずいと話しながら近づいて来る神様、俺の目の前まで来るとやんわりと良い匂いがする。視線を少し下にずらすとシャツの隙間から……。


「キャッ、どこみてるのよ? ふふ、こういうのやってみたかったのよねぇ。ああ、私がこんな格好をしているのが悪かったわね。でも人間も良いかもしれないわね」


 うん、何も見えなかったです大丈夫です。


「あの、ここへ来た目的は知ってるかと思うのですが」


 俺が一度発言して、再び文字を入力してる最中に床が揺れる。ちなみに、部屋の中は無知の神様と同じくらいの広さがあり、こちらはデザイナーズマンションの一室のように色とりどりの物が置かれていた。で、そんな色鮮やかな部屋が揺れたかと思うと床が盛り上がり、パァンと音をたて炸裂する。


「わっ、何しにきたのよ勝手に」

「君ぃ!? なんで私の部屋が二回も選択にあったのに選ばないの? ねぇ、なんで? もしかして私の事嫌い? いつも私を踏んでくれてるのに、いざ選べって言われたら捨てちゃうの?」

「あんたねぇ、彼は私を選んだの? わ・た・し を。勝手に割り込まないでくれるかしら?」

「キィィ、こんなペッタンコより私の方がいいよね? ほら、君は見た目で選ぶんだよね? 見たことなかったから選べなかっただけなんだよね、私知ってるよ」


 知らねぇよ……てか見た目で選ぶとか、そんな偉くありません俺。突然現れた二人目の女性。きっと神様なんだろうけど、二回も選択出来たのに選ばなかった神様。うん、土の神様ですねあなた。


「ふふ、土の神? 胸の大きさなんて私達には関係ないじゃない?」

「文字の神のくせに知らないの? 人間の間では胸が大きい方が」

「それ以上言ったら貴女、取り込むわよ」

「上等、私から彼を無理やり奪った貴女こそ私の栄養になればいいわ」

「あー俺戻りますわ」


 俺はそっと後ずさりをするも、二神はズィと近づき俺に尋ねて来る。


「人間、私が良いだろう?」

「本当は私に会いたかったんでしょ?」


 知らねぇよ! と言えず、俺は顔を引き攣らせる。


「と、とにかく落ち着きましょう? ふ、二人とも可愛いのだからそんな顔しないで、ね?」


 作戦その一、褒めて落ち着かせる。


「そ、そうだよね。私は可愛い、のよね。ふふ」

「やっぱり君は分かってるわ、本当に好きな物は最後までとっとく習性があるんだったかしら、しょうがないわね全く」


 効果は抜群だ。


「あー、それでですね? 神話のページをいただけたらなぁ、と」

「ちょっと待った、俺の出番はいつ来るんだ? なぁ、なぁ!?」


 今度は何ですか? 振り返ると、俺の肩を掴んだ男の人が視界に入る。て、また何かの神様なんでしょうか。


「落ち着けって、戦神。力みすぎると人の身は脆いんだ、消滅しちゃうぞ」

「お、おう。すまなかった少年」


 て、更に隣になんかいる―!?


「全く、私の部屋だからって気軽に入り過ぎだろうお前等?」

「そりゃお前、無知の間には入りたくないしよぅ? 長話好きな女性陣にこれ以上楽しみをとられてたまるかってんだ」

「はぁ、戦神さん? レディの部屋に入る時はせめてノックをしてですね」

「アンタがいうな、アンタが」

「うるさいですわ、文字の神。それにしても、家の神まで来るなんて」

「はは、僕も気になりまして。君が深浦 遊多君ですね? 僕は家の神です、ありがとう、最高の家を活性化させてくれて。僕も鼻が高いよ、ふふん」


 いきなり両腕を掴まれると、ブンブンと上下させ喜びを示す家の神様。何だよ家の神様って。


「いいよなお前は、俺なんて最近めっきり加護持ちが減ったからつまんねぇよ」

「貴方達、いつまで私の部屋で楽しそうにしてるの? この人間は私の部屋に来たんだよ? それを、くぅぅ」

「キィィ、私は無視ですか、ねぇ? ちょっと、聞いているの!?」


 ど、どうしたら良いんだこの状況。神様が一度に四神も集ってしまった、それも収集がついていない。そ、そうだ、一度皆にこの状況を忘れてもらって。


「あ、あの皆さん、落ち着きましょう!」


 喋りながら、無知の神の加護を纏おうとする。しかし。


「その文字はいただけないな、消去だ。無知の加護は色々と厄介だから、この部屋では使えなくしといたよ」

「うぇ」

「変な声でてるよ?」

「変な声だな」

「変声ですね」


 一瞬シンとしずまり、その後一斉に神達に笑われる。チャット会話の時のくせなんだよ、しょうがないだろう!?


「まぁ良いわ、改めまして私は文字の神。珍しく他の神も来てくれてることだしゆっくりしていきなさい」


 そういうと、部屋の中央にある一人掛けソファに案内される。すると、文字の神様が宙に何かを指で描いた瞬間ソファが巨大化する。


「うお、すげぇ」

「褒めてくれてありがと。文字よりも会話が主流だから嬉しいわ、こんなにも文字を使ってくれる人間が居て」

「はん、文字なんていらねぇんだよ。拳と拳で語ればそれでいい」

「私はそれで倒れた存在が大地に還ってくるのならば、別に構いませんが」

「いやいや、僕としてはしっかりと家に帰っていただきたいのだけども」

「貴方達、まずは私が話しするんだから、少し黙ってなさいよ!」


 瞬間、指で何かを描くと三神は黙り込んでしまう。


「最初からこうしちゃえばよかった」

「何かしたんですか?」

「ふふ、それは秘密。それで、貴方のその文字について教えてくれないかしら」


 ロリ巨乳こと土の神様は口元をウーウーと唸りながら抑え、戦の神様も家の神様も動揺に口元を抑えているが、ここは気にしないでおこう。


「はい、喜んで」


 こうして俺はローマ字、平仮名、カタカナを教え、更に漢字の存在を伝えたところで一休憩入れる。


「漢字とは面白いね、ああ私は満足したよ。代わりにコレをあげよう。そういえば縛ったままだったわね、もう喋っても良いわよ」


 そう言いながら指を動かすと、大人しかった三神は息を大きく吸い込み話し出す。


「キィィィ、次は私の番ですわよ!」

「ぷはぁ、やり方がえげつないぞ文字の神。せめて呼吸くらいさせろよ」

「はぁはぁ、それで無事な二神ともやっぱり凄いよ。僕なんて消滅しちゃうかと思ったくらいだし」

「はぁ、軟弱だな相変わらず。それでよく生き残ってるな」

「ハハハ、あの世界に家が多いのが救いですかね」

「君、ほら私をみて! ね、惚れるでしょ? 惚れない訳ないわよね、ふふ」

「あ、えーと、イツモ踏マセテイタダイテアリガトウゴザイマス」

「きゅぅん」


 これ、正解だったのか? 踏んでくれてる、とかキーワードを何とか利用した返答をしてみたが、これただのエムッ娘じゃないですかやーだー。


「そうよね、踏ませてあげてるのよ私わ。だ、だから今日は……」


 そう言いながら俺の膝の上に座って来る神様。うん、変な子認定しておこう。


「私に踏まれておきなさい。それでこれまでの無礼は許してあげる」

「アリガトウゴザイマス、アリガトウゴザイマス」


 ぬいぐるみを抱き抱えるかのように、腰に腕を回して神様をホールドしてみせる。すると、急に大人しくなったので別の神様達と会話を続けることにする。


「あの、戦の神様、家の神様、噂は伝わってると思いますが、俺は神話のページを集めていまして」

「そうだそうだ、俺と戦え少年。魔の神とやりあったのを見ていたぞ? 実に楽しそうじゃないか、加護を纏ったところで所詮は人間なのに、神を殺す勢いだったじゃないか。実に結構。少年、俺はお前を手合せをしたくなった」

「えーと、手合せしたら神話のページをいただける、という事ですか?」

「うむ、ついでにコイツのもくれてやるよ!」

「ちょ、僕のまで勝手に! まぁ最初から僕はあげるつもりで来たんですが」


 なんと、手合せしたら二枚のページがいただけると。文字の神様からもいただけたし、土の神様はこの調子ならきっとくれるだろう、ここは一気に四枚確保してしまうが吉か。


「わかりました、でも弱くてもガッカリしないでくださいよ?」

「はん、そうこなくちゃな少年」

「私の部屋をあまり壊さないでおくれよ? そこの範囲内でよろしくね」


 文字の神様が指を動かすと、今度は部屋の隅にリングが生み出される。ボクシングやプロレスなどでみる、あのリングである。


「せめぇなおい」

「どうせ距離なんて必要ないでしょ? それに相手は人間なんだから、殺さない程度にね?」

「わかってるって。ほらいくぞ少年」

「は、はい」


 俺はここで調子に乗り過ぎたんじゃないかと、じわじわと後悔しはじめるのであった。

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