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火の世界の豪炎  作者: PP
三章-ツリィム-
137/147

136:ぐおおおおおおおお

 全く、何故こんな事になっているか問いたださないと。


「それで、なんで貴方達は魔の神の使い魔なんかと?」

「ヒヒ、突然空から降ってきたんだよ」

「そっか。それで、主様は?」

「ヒヒヒ、ギルド図書館に居るっぽいよ? タマコが目指してたからね? でも、実は私達もお兄ちゃんの居場所はまだ掴めてないのさ」


 ふうむ、もうちょっとご飯を食べたいのに、こういう時に限って主様は行方不明か。しかし、それを知った上で私は来ているのだけども。


「そっか、それじゃそこへ行きましょ」

「のびてる二人を抱えていけとおっしゃいますか?」

「タマコちゃんにでも運んでもらいましょ。だからそんなパトラとモロは置いときましょう」

「ヒヒ、暴食の神様はパトラを知っているのかい?」

「んー、ちょっとだけね。顔みた程度だから知り合いとは言わないかもね? ああ、行くわよ!」


 喋ってるだけでお腹が空いて来る、早く主様を探し出さないと。時間が惜しいので、私は主様の匂いを辿ってすぐさまギルド図書館まで辿り着く。そこには懐かしい顔が二つあった。


「あれ、クゥちゃん!」

「おお、サーモじゃない。それにタマコちゃん! 今日はまだタマゴ出る? ねぇ、出る? 出る?」

「うー、今は出ないー」


 何と愛くるしい生き物なんだ、このまま食べちゃいたくなりそうペロリ。


「なんでここにクゥちゃんがいるの? あれ、モロは一緒じゃないの?」

「ああ、そうだった。タマコちゃん、モロとパトラがあっちで倒れてるから回収してきてね? わはっ、食べちゃダメだからね?」

「食べないよー」


 目をギュッと瞑りながら否定するタマコは、そのままパタパタと走ってモロとパトラを探しに行く。


「それで、主様はこの中に?」

「あっ、そうなの……受付の人に聞いたら、どうやら没入室に入ったまま出てこないらしいの」

「没入、やっぱりあっち側に居るのか」

「あっち側? あ、そうなのっ、ツリィムの中に居るみたいなの。それもずっと……」

「ふふ、主様はやっぱ面白いな。人の身でありながら私達の世界に入り浸るなんて。それで、何処に主様は?」

「えっ、と、とりあえずこっちです」


 サーモの案内の元、没入室前に辿り着く。没入中は身の安全を守る為に、没入室という頑固な個室に入って行うのだ。受付嬢も困り顔である。


「あら、また来たの? ん、また新しい女の子ときたか……」

「わはっ、ちょっとお邪魔しますねー」

「えっ、今は内鍵がかかっていてギルド長の鍵がないと解錠出来ないのよ」


 受付嬢の制止も聞かず、私は壁に手を当てるとそのままパクリと一面を食べてしまう。すると、中には没入中の主様の姿があった。


「わはっ、主様ー? 主様―? ああ、脱水症状でてるじゃん、だらしないなー。そこの女、水を持ってきて。サーモは主様を守ってて上げて、絶対よ? マモレナカッタ、とか小声でいうのは無しよ? タマコちゃんの卵料理を久々に食べるんだからっ」


 私は言いたい事を言いきると、その場でスッと姿を消して見せる。勿論、自分の居るべき世界に戻っただけなのだが、サーモからすれば何処に消えたのだろうと思うだろう。まぁ、そんな細かい事は今は良い。


「さて、主様が居る場所は……げぇ」


 私は主様の今いる場所を把握すると、同時に不快な気持ちになってしまう。


「なんでこんな場所に主様が居るのよ、うー出待ちにするかぁ」

「げぇ……」


 そんな私の言葉に気づいてか、更に一つのグンニョリ声が聞こえて来る。


「帰ってきたのかよお前さん」

「あら、魔の神じゃない。そういえば貴方の使い魔を一匹いただいたわ、ご馳走様」

「なっ、お前また神喰らいしやがって……ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」


 私が睨んでみせると、物凄い勢いで謝って来る神。


「それにしても、俺の使い魔どこに居たんだよ?」

「人の世に降り立ってたわよ? 私はついに人の世界を滅ぼしにかかったかと思ったわ。わはっ、そんな事絶対させないけどね?」

「何がそんな事させない、だよ。一つ街を滅ぼした張本人がよぉ」

「ふふ、あの時とは違うのよ、あの時とは。それにしても、貴方また無知娘にアプローチしてるの?」

「しょうがねぇだろ、愛の力は偉大なんだよ。そう思うだろ?」

「愛ねぇ、私はそんなものより食べれる物の方が良いわ」

「けっ、見た目は良いのに残念な奴だ」

「わはっ、褒めてくれてるのかな? それとも殺されたいのかな?」

「笑えねぇ冗談は止めよう、うん、今すぐ止めよう。それで、お前も無知の神に用事でもあんのか?」

「んー、私はそこに居る主様に用事があって。名を深浦 遊多といってな、泣く程美味い料理という物を作るんだよ。私は感動しちゃってさ、貴方の言うところのラブだよラブ、あれを食べる為に今は生きていると言っても過言じゃないわ」

「……なぁ、そいつって男か?」

「ん、健全な男だな。面白いぞ、私にも普通に接してくれるから居心地は抜群に良いのだ」

「……なぁ、その男が今、この部屋の中で無知の神と二人っきりだというのか?」

「そうじゃな、少なくとも数時間前から主様の存在はこっちに来ていたから、きっと部屋の中で考える力を失って突っ立っているのだろう。いつもならすぐに放り出されるのに、変だねー?」

「……男と二人きり、だと……」

「わはっ、そういう考え方も出来るねー」

「絶対に……許さない」


 何か小声で聞こえたが、いつもの事なので放っておこう。


「まぁ、気長に待ちましょう」

「ふん、出待ちしてやる」


 そうして夜が更け、朝ちゅんと言えるだろう時刻になりようやく扉が開いた。


「主様、遅かったじゃん」

「おっ、クゥじゃん? あれ、そっちの御方は……?」

「ああ、主様に嫉妬してる魔の神だね。少しだけ覚悟した方がいいもねー?」

「絶対に、許さない……貴様ぁぁぁ」

「ま、待って待って待って!? な、なんですかいきなり」


 魔の神が主様を消し炭にしそうだったので、私が片手でそれを御してみせる。


「まぁ落ち着きなさいって、主様、その手に持っている物はなんだい?」

「えっ、これは神話のページでして……」


 ピクリと、魔の神の表情が動く。釣れたね、簡単だね。


「神話のページ、だ、と……無知の神の、か……?」

「え、ええ、そうですけども……」

「貴様ぁ、ぐおおおおおおおおおおお」


 爆発的に魔の神の力が集束し、両腕に高密度な力を感じ取る。でも、まぁあれを持ってる限りは大丈夫か。


「お願いします、全力でお願いします。それを譲ってくださぁぁぁぁぁあああい」


 突然、全力を込めた土下座を始める魔の神。うん、バカだこいつ。早く主様を連れ帰りたいと思いながら、私はそんな茶番を見学する事に決めたのだった。



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