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火の世界の豪炎  作者: PP
三章-ツリィム-
134/147

134:トンカンの町攻防戦(夜)-1-

「ゆーた、帰って来ないねぇ」

「遊多さん、遅いですね」

「ヒヒヒ、何処に行くか聞いておけば良かったんじゃないか」

「タマコ、何となく場所わかるよー?」

「さすたまっ、ゆーた迎えにいこー」

「そうですね、夜ご飯が干し肉になるのは味気ないですしね」

「ヒヒヒヒヒ、炒飯しか作れないのにその材料も無いと、何も私達は出来ないのだなヒヒヒヒヒ」

「私は食べ専だから良いの、私はね!」

「モロさん、私は別に料理が出来ない訳じゃないですからね? ただ、遊多さんのが美味しすぎるだけであって……」


 外食、ショッピングを終え用事があるとゆーたと別れて、かれこれ数時間。夜も更け流石に遅いと感じ出した私達はゆーたを探しに出かける事にする。


「あっちの方だよー」


 タマコがしっかりと場所を把握しているのか、タマコ先導の元に皆ついて来る。何だかんだで、ゆーたは皆に愛されているのだ。私は何だか誇らしくなる、深浦 遊多と出会ってもうどれくらいの時が経ったか。最初は不思議な人だったけど、今では火も大分成長し、ゆーたを育てたお姉さんとして胸を張れる程である。そして、必ず彼の周りではトラブルが起きるのである。ほら、今回も。


『ピリリリリリリリ』


 聞いたことのある音が聞こえてきます。この音が鳴る時は、大抵大きな戦闘があるのです、そんなときに限ってゆーたは現場に居ない事が多いのです。


「この音、私聞いたことあります……」


 サーモがついに口に出して言ってしまいました、そう。皆この音の正体は知っているのです。


「ヒヒ、今度は何さね」

「うー、何か空から来るよー」


 タマコが上を向いたので、それにつられて皆一斉に空を見上げます。真っ暗だった空には、光り輝く塊が一つゆっくりと落下してきているのが見て取れます。ゆーたがこの場に居ないので、久々にお姉さんらしく振舞おうと思います。


「皆、あれは危険。いったん距離を取りましょう」

「モロ、さん?」

「サーモはバックアップ、ミューズは私と前線へ。タマコはどこかに隠れてて」

「うー、わかったー」

「ヒヒ、取り敢えずこの場所から離れよう」


 そんなやり取りをしていると、ギルド本部から炎の柱が舞い上がり空高くにあった光の塊を貫いて見せる。しかし、それはトンカンの町の北部へ落下して、しばらくするとむくりと動き出す。私達は待ちの北側に急いで移動すると、ソレは正体を現す。


「魔物、ですか……」

「ヒヒヒ、何さねあれは」

「始めてみました」


 ただの魔物ならばまだよかった、しかし目の前に映る魔物の姿は明らかに常識を逸していた。見た目だけならば狼と言えば伝わるだろう、しかしその体からはバチバチと雷と身に纏い、体の大きさも以前みた水鉄並なのである。ざっと全長十メートルはあるだろう巨体を暗闇の中、バチバチと周辺を照らしその存在感を伝える。


「私は相性が良いみたい、ちょっと行ってくるよ」

「私だって、こんな異物は放っておけないわ。行くわ」

「私は……大人しくタマコと隠れておきます」

「うー、皆がんばってぇ」


 そんなやり取りを済ませると、ギルドの人達がかけつけるよりも先に私とミューズによる魔物との戦闘が始まります。


 巨大な四肢にウッドランスを何度か当てるも、強固な皮膚に阻まれ貫く事が出来ません。ミューズに至っては、近づくだけで雷が襲い掛かり回避するので精いっぱいのようです。


「ふむ、流石は神を従えし者達といったところか」

「パトラさん?」

「ああ、深浦は居ないのか。それにしても、あれほどの樹操作が出来るとはすさまじいな。それに耐えるあの魔物も異常だが」

「あの魔物は一体?」

「さぁな、私の火柱をまともにくらって平然としてるんじゃ、異常だな」


 そんなやり取りをしている間も、ミューズはひたすら魔物の攻撃を避け続けている。


「それにしても、あのミューズという娘も相当だな。何かの加護を受けているようだが、何だろうな? ん、そんな悠長に話している場合でもなさそうだな」

「そうですね」


 私達の居た場所に落雷する。稲妻が降り注いだ後に激しい空気を切り裂くような音が続く。が、私はウッドハウスを展開して稲妻を拡散して防いでみせる。パトラはそれにあわせ、ウッドハウスをより強固な物へと火操作により強化してくれている。


「凄いです」

「ははは、精霊様に褒めていただけるなんて、嬉しいねぇ。でも、これからだからな」

「はい」


 パトラと一緒にウッドハウスを出ると、今度はドリルバンカーの準備を始める。パトラは面白い、と言い私と同じ操作を始める。


「行きます!」

「ふむ、行こうか」


 距離を三メートル程まで詰めると、私は必殺のドリルバンカーを叩き込みます。それと同時に、パトラの火も螺旋を描いて爆発音と共に魔物の体へと向け発射されます。樹と火の二つの螺旋の先端は、魔物の体に突き刺さり、そして……。


「参ったね」

「そんな……」


 水鉄すら一撃で粉砕した私のドリルバンカーは、ほんの少しの傷をつける程度で勢いを失い霧散してしまいました。パトラさんの方は少し体を抉っていたようですが、それでも大きなダメージを与えられていないようでした。


「ヒヒ、こりゃきつい」


 私達のもとまで距離をとったミューズも、流石に焦っているようである。


「私の力で倒せなければ、誰にも倒せないかもしれないなこりゃぁ」


 そんな言葉を発するパトラさん。確かに、私ですら畏怖してしまう程の火の操作が出来るのに、それを受けても動じない魔物を倒す手段なんてあるのだろうか?


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