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火の世界の豪炎  作者: PP
三章-ツリィム-
133/147

133:一晩中

 俺は悩んだ末、土の神の部屋に入るのは避ける事にした。理由は至って簡単、火属性は土属性とあまりにも相性が悪いと考えたためだ。勿論、ゲームで良く知る属性相対図のイメージを参考にしただけなのだが、結果的には無知の神の間を選んで正解だったと思う。


「何だここ、真っ暗だな……ん、あそこに居る人が神様かな」

「ん、誰……?」


 俺の独り言をしっかりキャッチしてくれるあたり、やはり神様で間違いないだろう。


「あ、すぐいきますんで」

「待って!」

「えっ、あっ、はい?」

「貴方、大丈夫、なの?」

「んー大丈夫だと思いますよ? しっかり動けますし、神様の声も聞こえますよ」

「わぁ!」


 俺が受け答えすると、喜びに似た声を上げパタパタパタと駆け寄って来る。クゥと似て小さく、どうやら黒色のドレスを纏っているようである。暗くて、どんなドレスかよく見て取れない。


「ねぇ、貴方は何故大丈夫なの? まだ考えれる? 良ければずっといてもいいのよ!」

「ま、待って待って」


 今度は俺が待ってと言う番だった。何故か無知の神様はとても暇をしているらしい。


「すいません、私は無知の神です。ようこそ、私の部屋へ。貴方は何者なの? 私と添い遂げていただいても良いのですよ!」

「落ち着いてって神様! えと、俺は深浦 遊多と言います、人間ですよ? そして、火の神様より神話のページを集めて来いって言われまして……」

「人間、なのですか。でも、良いです。貴方は私を忘れないようですし、ああ、何て良い日が訪れたのでしょうか」


 何なんだこの神様は、また変なテンションなのが現れたな。神話の話しは完全にスルーされてしまった、がここで諦める訳にもいかない。


「あの、それで神話おぉ……」

「んぅ、なんで私の神話なんかを? でも、こうやってしっかり会話をしたのはいつぶりなのかしら。ああ、私自身が忘れちゃうくらい本当に久々だわ」

「他の神様との交流ってないんですか?」

「それがねぇ、度胸試しとかでは来てくれるのだけど、皆忘れちゃうのよねぇ。私、無知の神でしょ? 通称忘却の神とも呼ばれてるのよねぇ、失礼しちゃうわ。皆、考える力を私の空間、私を視た瞬間から失っちゃうのよ? でも、人間は知らない方が幸せな事、忘れて前に進む力を持ってるわ。そんな助けをするのが私なの。本当、早く後継者作って隠居したいわ」

「はぁ、そうですか……?」

「何よ、深浦遊多、もっと楽しそうに相槌打ちなさいよね? そうそう、この前来た魔の神がね……」


 長い、長すぎる。よっぽどおしゃべりが好きなのに、話し相手に恵まれなかったのだろう。くそう、火の神様、もっと普段から相手してやれよ! と思いつつ無知の神様の長話を聞いてやることにする。


「それで、何でここに来たのか忘れちゃって棒立ちになっちゃったのよ。何も考えずに部屋の中に居られても邪魔なだけだから、すぐに放り出したの。何か、部屋の外で『ああ、一匹俺の支配下から外れてやがる』とか叫んでたっけか。でね、気になったから魔の神に話しかけたら、再び棒立ちになっちゃうわけ。あまりに会話相手にならないから腹パンして戻ったの。こう、レバー! みたいな感じで、えぐってやったの、私の期待に応えれないのに無駄にわくわくさせた代償ね。うん」


 何だこの子は、他の神様を腹パンしたって。もう少し丁寧に扱ったほうが良いかもしれないな。


「無知の神様って凄いんですね。それに、その服も似合ってますよ」


 実はよく見えてはいないのだが、服装を褒める。これ基本やな!


「ふふ、ふふふ。そうでしょ? 私、この漆黒のドレスがお気に入りなの、他にもあるの、みていきなさいよ!」

「はい、喜んで!」

「良いわ、さぁこっちにいらっしゃい!」


 取り敢えずノリノリに対応してみる俺。そして、部屋の中央に辿り着くと突然ドレスを脱ぎだす神様。が、暗くて神様の裸体はよくみえないのでセーフとしておく事にする。


「どう、これも良いでしょう? そうだわ、今日は泊まっていきなさいよ、貴方の話しを聞きたいわ」

「わかりました、何から話しましょうか?」


 そうして、いつの間にかあった椅子に座り、俺は現実で遊んでいたオンラインゲームの話しをしてみせる。ああ、思い出すなぁ、アイツ元気にしてるかなぁ……。そうして、俺は無知の神様と本当に一晩中会話をつづけたのである。


 そう、一晩中、俺はツリィムの世界に居続けたのである。

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