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火の世界の豪炎  作者: PP
三章-ツリィム-
126/147

126:ョゥㇱ゛ョ

「で、こちらの手違いがあったようなんだ。一方的に迎撃を行ってすまなかった」


 頭を深々下げる男性は、名をモヒと言う。ギルド本部の部隊長という彼は、伝達ミスにより俺達の情報がアラートに入力されてなかったという。


「お前達、解散だヒャッハー!」


 俺達に謝罪をした時とうって変わって、テンションが一気に上がりぞろぞろ居た迎撃部隊はヒーハーと大声をあげながら各々持ち場へと戻っていく。


「待たせたね。君たちの事は聞いてるよ、暴食の神を従えたってね? 冗談みたいな話しだが、あのライラ様が噓をいうわけないしなハハハハッヒャー」


 語尾というか、なかなか愉快そうな人である。取り敢えず、呼ばれてるギルド本部まで案内してもらう事にする。


「あの、それでギルド本部まで行きたいんですけど……」


 恐る恐るモヒさんに尋ねると、ああとテンションがあがって崩れた顔を元に戻してついてこい、とトンカンの街の中へと案内してくれた。


 トンカンの街の中を歩くと、これまでと違った風景が視界に飛び込んでくる。タナダタの街や、太陽の都と違って木造で作られた建物ばかりである。地面も、木製の道で舗装されている。


「この街って木材が多いんですね?」

「ん、ああ君は北から北から知らないのか。この街を更に南下すると密林地帯があるんだよ」

「南の方って砂漠地帯が永遠と続いてるかと思いました」

「ハハハハッヒャー、面白い事言うね? 砂漠だけなわけないじゃないか」

「ゆーた、森があるんだって!」


 モヒさんに馬鹿にされた感があったが、モロも知らなかったようだしスルーしよう。そして森が近くにある事を知り、無駄にテンションをあげるモロさん、その笑みに癒されるとしよう。


 そうこう会話をしていると、街の中央部分に辿り着いた頃にモヒさんが指を指す。そこには木造住宅二階建てといわんばかりの一軒の建物がそびえたっていた。


「おう、ここがギルド本部だ! 後は中にいるパトラに聞いてくれ」

「ありがとうございます」


 お礼をすると、ギルド本部へ入る俺達。そこには一人の女性が退屈そうに椅子に座り、樹の枝っぽい物を口に咥えながら頬杖をついていた。しかし、その女性はどこからどうみても子供な訳で。


「すいません、ギルド本部ってここであってます、よね?」


 と恐る恐る幼女へと尋ねてみる。そこでやっと俺達に気が付いたのか、視線を俺達に向けるとニカリと笑い立ち上がる。今度こそ確信する、この子は本当に子供だ。俺の身長の半分くらいの位置、丁度お腹辺りに頭の天辺があるのだ。真っ黒なセミロングの髪の毛をいじりながら、テクテクと小さな歩幅で近づいて来て、俺の顔を見上げながら答えてくれる。


「ええ、ここがギルド本部よ。マスターをしているパトラです、遠いところよく来て頂きました、歓迎致します」


 そういうと、着いて来てと言われ幼女パトラの後についてゆく。部屋の奥にある扉があり、そこをあけ放ち更に奥へと進む。すると俺達の目の前には広い空間が広がる。


「ちょっと待っててね」


 俺達の視界には、見下ろす限り広大な空間が広がっており、そこには人、人、人。つまり、依頼を受けたり情報交換をする場所、ギルド内部という事だろう。そして、俺達が現れた事に気が付いたのか、視線が集中する。幼女パトラはというと、柵の部分で顔が隠れ下のギルド内部を覗けないようである。よいしょ、よいしょと大きめの箱を真ん中あたりまで運ぶと、その上によじ登り、やっと下の空間を見る事が出来るようになった。


「皆の者、深浦一行が到着した。先ほどの騒ぎで感づいてる者も多いだろうが、彼等が神とも対峙できる存在だ。今日は宴だ、予算は気にするな、私が全て持つ!」


 ヒーハー! という歓声と共に、ありがとう深浦! やモロちゃん可愛い! やら色んな声が上がる。俺は一体何事だ、とパトラに聞こうとするも、小声ですまん、少しだけ付き合ってくれ、と言われた様な気がしたので大人しくしておくことにした。



 数分間の盛り上がりから、皆食事や酒の注文に忙しくなったのか視線はすっかりと無くなっていた。


「ふむ、では戻ろう」


 幼女パトラはよいしょ、よいしょと箱を隅っこへ戻すと元居た部屋へと戻っていった。視線が集まっていた最中、ミューズは王族という事もあってかやけに落ち着いていた。タマコはいう間でもなく、がたがたと目を瞑って震えていただけであった。


「急に呼び出し、演説に付き合わせて悪かった。改めて私からも礼を言おう、君たちがいなければこのトンカンの街も存続出来たかわからなかったからな」

「いえ、たまたまですよ……」

「たまたま、か。アハハハハ、面白い。たまたまで神と対峙できるのか、まぁいい。ライラやシゼルから君たちの事は聞いていた通りの人物だ。要件は至極簡単、まだ暴食の神は暴れているんじゃないか、という不安を持つ人がまだ残っていたので君たちのお披露目という訳だよ。Ⅷ貴族が一つライラ、そして伝説とも言われてるシゼルのお墨付きの存在がこうしてやってきてくれたのだ、これで不安から我が街は解放されるって訳だ」


 なるほど、と俺は思う。遠距離に渡る情報伝達が誰でも出来る世界では無いのだ、北の街が滅んだ事、そしてそれが神の仕業と来れば、次は自分たちではないかと絶望に、不安にかられても仕方がないというものだ。


「俺達が呼ばれた理由は、そういう事だったんですね」

「ああ、わざわざすまなかったね? でも入った時から子供をみるような失礼な目でみる君とはこれでチャラって事にしてもらうよ? これでもギルド本部の長なんだからね、私は」

「あっ、その、すいません」


 幼女パトラさんなんて心の中で言っててすいませんでした。



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