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火の世界の豪炎  作者: PP
二章-精霊降臨-
123/147

123:降臨

「では、結果を発表いたします!」


 俺は祈る、この勝敗でモロを助け出せるかが決まるのだから。


「では、この中央の巨大な箱へ皆様注目をお願いします!」


 アナウンスが続く、どうやらボールはこの巨大な箱の中に集まっているようである。その箱の下に被さっていた布にスタッフが数名集まる。


「この箱の下には秤があり、重量が重い方が勝者です! では、皆様カウントダウンをお願いします!」


 テンカウントが始まり、会場の皆はノリノリである。俺の気も知らないで。


「10・9・8……」


 俺はタマコのように目をギュッと瞑る。そこへサーモが近づき肩に手を乗っける。


「遊多さん、ちゃんと見とかなきゃ」

「お、応」


 俺はカウントダウンの中、瞳を開くとモロの笑みが視界に入る。きっと大丈夫だよ、と俺の為に無理して笑ってくれている。だから、俺も笑顔で返しておく、必ず助けてやるという意志と共に。


「3・2・1、どーだ!」


 ドンと爆音が会場に響き渡り、同時にスタッフが隠されていた部分の布を解放する。


「青組、1205ボール。赤組、3795ボール! 勝者、赤組です」


 おめでとうございます、美味かったぞ、よくやったぞ等の声が会場に溢れかえる。蓋を開けてみると、前半に俺達の料理を食べずに投票した数が千強くらいにとどまったのである。モロが、皆が来てからの流れは圧倒的な味の差に皆が赤色のボールを投票してくれたのだった。


「あ、ありがとうございます! ありがとうございます」


 俺はぐるりと会場内の皆へ頭を下げる、そして駆け出す。俺の向かう先に居るのはただ一人。


「モロ、今助けてやるからな!」

「おかえり、そしてありがとゆーた」


 俺は精霊降臨の方法を思い出す、今の俺とモロが接吻を交わすだけでそれが出来るのである。


「そ、そのだな……精霊降臨をするから目を瞑ってくれないかな」

「うんー?」


 何の疑いも無く、モロは瞳を閉じる。

 俺はガシリとモロの肩を両手でつかむと、ビクリと体が震えるたのがわかった。でも、モロは震えながらも目を瞑ったまま待ってくれているのである。


「その、俺がモロにこんな事して良いのかって思うんだけど……」

「うん……ゆーた、ちょっと痛い」

「す、すまない。その、精霊降臨をしたらモロの精霊界とのリンクが戻せるのは伝えてたよな」

「うん、その為に北の大陸まで行ってくれたんでしょ?」

「ああ、そしてその方法は……」

「もぅ」


 俺が躊躇していると、モロは瞳をクワッと開き一言。


「ゆーた、遅いっ」


 カチリと歯と歯が当たる音が直接頭に響く。俺は咄嗟の事に何が起きたのかわからずパニックに陥ってしまう。


「ん、ん!?」

「あはは、ゆーたの顔にタマゴついてるよ」


 少しずつ状況を理解していく、先ほどまで少し離れた位置に顔があったのに今は瞳が覗き込めるほどの至近距離にモロの顔があるのである。


「お、おま、お前のほっぺについてたやつだろコレは」

「そうなの? それじゃ」


 俺の顔から離れたかと思うと顔についてた米粒を取り、そのままモロは自分の口に運んでしまう。


「ご馳走様、美味しかったよゆーた。そして……」


 モロは笑顔で、木の実を指で弾いて見せる。


「うわっ、危ないな……て、木の実が出せるって事は」

「うんっ」


 モロは樹の操作をしてみせたのである、精霊降臨によりもう大丈夫だよ。そう俺に伝えるために。


「ゆーたっ、だ」

「遊多さん、行きますよっ!」


 俺に何か言おうとするモロとの間に割って入ったサーモに、俺は会場の方へと体を押される。


「表彰がまだですよ、後皆にクゥの事改めて説明もしなきゃなんですから」

「お、応。ありがとなサーモ」

「えへ、早く行きますよ」


 こうして俺はモロを無事に助け出す事が出来たのであった。Ⅷ騎士の皆も、勝とうが負けようがこのイベントを開催する事に意味があったそうで、モロは返すつもりだったと俺は後から知る事となる。




「皆、本当にありがとう」

「ありがとう」


 俺に続き、モロも皆に頭を下げる。


「いやいや、これくらいはな。困ってそうならまた少しなら力を貸してやろう、ではな」


 そう言うとトップ、火の神様は俺達の目の前から姿を消す。


「ふふ、それじゃ私も本来居る場所に戻るかな。私ならいつでも呼んでくれて構わんよ、ずっと君たちの事をみているしな」


 そう言うとトレント族のジュは姿を消す、このトレントの枝がある限り共に居てくれるという事だろう。


「それじゃ、私も戻るわよ。でも本当にいいのかしら?」

「ああ、センチが居てくれなかったら今頃どうなってたか。全部貰ってくれ」

「ええ、じゃぁ遠慮なく報奨金は全部貰うわ」


 俺がイベントで得たお金を全てセンチに託す、サーモもそれで良いと言ってくれたのである。センチはお金を受け取ると、挨拶も無しにセンチは部屋から去ろうとする。


「はぁ、良い奴なのに愛想が薄いよな……」

「聞こえてるわよっ」


 俺の呟きは扉を出ようとしていたセンチに聞こえていたようで、キッと睨むだけ睨んで今度こそ部屋から出ていく。


「それで、モロとサーモ、ミューズは一緒に次の町へ行くって事で良いんだよな」


 俺が確認をすると、皆がそれぞれ頷く。


「そっか、ありがとな。そしてタマコもありがとう」


 今だに興奮が収まらないのか、部屋の端っこで体の一部を光らせながらコクリと頷くのであった。


「ゆーた、皆、本当にありがとっ」


 そしてモロが、今日一番の笑みを見せてくれるのであった。

これにて二章、精霊降臨は終了です。

随時、各話の手直しを行っています。

荒い文章なのにここまで追いかけていただいた皆様、本当にありがとうございます。

2015/3/31

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