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火の世界の豪炎  作者: PP
二章-精霊降臨-
111/147

111:サーモ&センチ&ミューズの場合

 私は卵巻を作り上げ、褒めてもらえました。きっとこの中では一番の高評価に違いありません。遊多さんのレシピ通りに作り上げたら、私自身驚く程に美味しいのが出来ました。どこで遊多さんはそんな知識を覚えたのだろうか。


「遊多さん、他にもレシピってあるんですか?」

「ん、そうだなー卵料理だけでも数百はあるよなぁ」


 私は思わず絶句しちゃいます、卵料理が百種類以上? マヨネーズ、でしたっけ。あれだけでも驚きなのにまだまだ手持ちのレシピがあるのだという。私は遊多さんの味をどこまで再現出来るのでしょうか。でも、マヨネーズ売ったらお金沢山儲けれそうだなぁ、とかそんな事を思ってしまいます。


「あはは、それだけレシピがあればお店でも開けちゃいそうですよね。その時は私と二人で……」


 きゃっ、と告白してみるも遊多さんは他の人のところへ移動しちゃってました。私も一度成功しただけで満足しないで、何度も反復練習しなきゃ。


「えへへ、遊多さんとお店かぁ」


 妄想しながら作る卵巻きは、幸せの味で一杯に包まれ私の胃袋を満たしていくのでした。




 さて、私も一発で成功しちゃった訳だけどどうしたものか。


「ねぇ、アナタ。ここで作ったものは持って帰ってもいいのかしら?」


 何気なく私は気になって聞いてみる、すると良いよと返事が返って来る。そこで私のやる気に火が付いた。


「ふふふ、良いのね。そうか、こんなに沢山材料があるし捨てちゃ勿体ないわよね」


 私は大量にタマゴを割り、高価な調味料は少量を取り、準備を整える。そうだ、あのマヨネーズというレシピも聞いておこう。


「ねぇ、さっきのアレ作り方教えてよ」

「おう、いいぞ」


 顔が若干近かった気がするが、この調味料を混ぜてと説明してくれているので私も気にしないように説明を受ける。


「そう、この酢を入れればいいのね」


 ありがとう、と伝え私はマヨネーズも大量生産しておくことにする。そしてひたすらに薄味の卵巻きを作り始める。マヨネーズがあるのだ、もう少し調味料を減らしてもいいだろう。


「一応、これ完成品だけど食べてみてよ」


 深浦に手渡し、マヨタマを食べてもらう。無言で親指を立てて来る、意味が解らないが美味しいという事でいいのだろう。


「そう、余った分は持って帰るけどいいわよね?」

「応、コーヤ達と食べてくれ」


 そういい、私の調理レベルは問題ないという事でミューズの元へと旅立ってしまう深浦。相変わらず、まっすぐに手を抜かない男だ。私は少しだけつまみ食いをして、持ち帰れるようにパックに完成品を詰め込んでいく。




「ぎゃー」


 私は卵巻き作りを試みようとはや五回目、全てが失敗で思わず悲鳴を上げてしまう。最初はタマゴが固まって来たので、急いでかき混ぜたら小さな塊が出来て違う料理だとバッサリ言われてしまった。


 二度目は待ち過ぎて焦がし、三度目は味付けを忘れ、四度目はひっくり返そうとするとあらぬ方向へ卵巻きが飛んでいった。そして今回はパニックのせいか油を入れすぎてドロンドロンになってしまった。


「はぁ、お前は料理下手だな」

「お、お兄ちゃん。下手なんじゃなくてこれから上手くなるんだよ!」

「バカ、それ下手だと認めてるから。落ち着いてやってみ?」


 私は落ち着いて、再度温めた器にタマゴと油をおとす。タイミングをみて返そうとした時、お兄ちゃんは待ったという。


「早くしないと焦げちゃうよ!」

「落ち着けバカたれ、味付けしたか?」

「あっ」


 私は急いで塩と胡椒をふる、がここで瓶の中身が一気に降りかかる。


「あちゃー、ベタなミスだな」

「こ、これは私のせいじゃないもん、瓶が悪いんだよ!」


 焦るな私、笑う余裕すら無いのに気づかず次を作り出そうとする。


「まぁ落ち着けミューズ、そうだな。お前のとっておきで試してみ?」

「とっておき、あっ」


 ここで私には秘策がある事を思いだす。


「戦神の加護を使えばいいのね、ヒヒ」

「そうだよ、お前の本気みせてくれ」


 お兄ちゃんに言われるまで、慌てるあまり忘れていた。戦神の加護を使えば、本人の潜在能力を解放出来るのである、更には身体や知能までもが強化されるのだ、今使わずいつ使えというのか。


「わかったわ、みててねお兄ちゃん」


 私は加護を受け入れる、途端に体が軽くなり一瞬で思考が完了する。この状態を解除した時の負担を考えると、少しだけ憂鬱になるがしょうがない。


「いくわよ!」


 気合いと共に中級油を流し込み、タマゴを投入する。


 ジュワリと音をたて、見事に蒸発してしまうタマゴ。


「あっ」


 誰の声だっただろうか、トップとクゥと同じ道を歩む私である。負けずと、次の卵巻きを作り出す。


「上級油なら丁度いいわよね、そして味付けもちゃんと先にすましたわ」


 声に出して確認をする、再確認をするという行為は戦場でも重要なのである。


「いざ、美食道へ」


 タマゴを投入すると、ジュワジュワと煮え始める。私は聞こえていたのだ、箸を扱えば手を返すという難しい事をせずとも巻けるという事実を。そしてレシピ通り、難しい事をしないでも美味しく出来上がるのだと。


 私のオーラに反して、もの凄く地味な作業が永遠と続く。そして八度目にしてやっとまともな形に仕上がる。


「で、出来たわよ!」

「応、どれどれ」


 お兄ちゃんが食べて、少しだけ固まるがすぐに笑みを浮かべる。


「うん、美味しいよ。ミューズもその調子で料理の腕をあげてくれ、その加護は負担かかるだろ? 一度出来たんだ、次からは素の状態で作れるように頑張ろうな」


 頭を撫でられ私はふにゃ、と声をあげてしまう。王族である私にこんな気安く触るお兄ちゃんは、流石というか何というか。でも、この人が私を閉ざされてた人生から解放してくれたのである。恩人の為に頑張ろうと、パクリと完成した卵巻きを口に放り込む。


「あまぁい」


 どうやら塩と砂糖を間違えて入れていたようだけど、甘くても卵巻きは美味しいらしい。この事は私とお兄ちゃんだけの秘密にしようと、パクパクと全部食べ切る私であった。


ここにきてですが


Q.卵巻き?卵焼き?ダシ巻き卵?

A.卵巻きデイインデス!

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