ろにーず いんとろだくしょん その1 『因子編 ~魔導型』
はぁ~。ようやっと一段落。
いやぁ、みんなごめんね。こんなんに付き合わせちゃってね。
イライラしてるんなら後でいくらでも喧嘩売っていいからね、どうぞ好きに殴っていいから。多分殴った方が痛いと思うけど。
さて、これで《騎士型因子》についてのお話はお終い!
今度は、もう1つのタイプの《因子》について説明するよ。
それがこれ、はいババン!
《魔導型》!
これは《騎士型》違って、身体能力の強化はほとんどないの。
その代わり、自由自在に物理的、化学的なエネルギーを生み出すことができる。
自由自在に電気や熱を操るところがさながら魔法みたいだから、《魔導型》って名付けられたんだ。
《騎士型》よりも数がちょっと少なめで、世間的にも地味に扱われてるけど、人間としてはあり得ないヤツら、って意味では《騎士型》以上だね。
ってなわけで、こっちもC~Aまで3つのランクがあるから、それぞれ説明していこうか。
そうそう、こっちの《魔導型》は《騎士型》と違って、“特”の字付きはいないよォん。
まずは《Cランク》。
《魔導型》全体に言えるんだけど、このタイプの《因子》の見分け方は簡単よ。
要は、『人間が自力では絶対に生み出せないエネルギーを生み出すことできる!』 これに尽きるね。
だから、運動もしてないし周りの気温も変わってないのに、自由自在に体温を変えられるとか、微弱でも身体から電流を流せるとか、身体が光るとか、あと珍しい例だと、身体からほんのちょっぴりだけど、X線みたいな電磁放射線が出るとか。そういうことができたら、少なくとも《Cランク魔導型》ってことになる。
でも、《Cランク》にできるのはあくまでもそこまで。
電流を流せても、電化製品もロクに動かせないレベルがほとんどだし、社会的にはほとんど役に立たない。人を傷つけることだってロクにできやしない。
そういうこともあって、《Cランク魔導型》っていうのは非保有者からは差別され、他の《保有者》からは見下され、ってことで、かなり弱い立場に立たされてる。
でも、こういう時に日本は弱者に優しい国さ。少なくとも表向きはね。
《因子法》によって、実は非保有者が《保有者》に対し特別な理由もなく暴力を振るった時にも、厳重に罰せられるんだ。優秀な人材である《保有者》を保護するって意味でね。
冗談半分に軽くはたくぐらいならまだしも、明らかに悪意があって傷つけたりしたら、それだけで実刑判決で刑務所行き、ってこともある。まぁ、勿論例外はあるけど。セートー防衛とかね。
だから、非保有者に対してはドーンと構えてればそれでいい。
けど、同じ《保有者》が相手じゃ、現状はどうしようもないんだけどね。
日本ってのは弱者にゃ優しいけど、一部の強者にはも~っと優しい国なんだねぇ~。ま、わたし達《因子人》には弱者も強者も関係ないけど。
日本での《Cランク魔導型保有者》の数は、大体《保有者》全体の30%ぐらい。36万人ぐらいかな。
《騎士型》と《魔導型》合わせれば、《Cランク》だけで90%を超えてることになるね。
さて、そんじゃお次は《Bランク》。
実は、《Bランク魔導型》には、《保有者》の中で一番単純明快な基準がある。
手で直接触れずに物を動かせる……つまり、“サイコキネシス”が使えるってこと。
これに当てはまってたら、発生させるエネルギーが弱くても、《Bランク》として認められる。
もっとも、そういう例は稀で、ほとんどの《保有者》は一緒に生み出すエネルギーの量も多くなるけどね。
熱は最大で100℃、最低で0℃近くまで。ひとりでお湯を沸かせて氷も作れるってわけだぁ~、超便利!。後は、電気も大体200Vまで流すことができるし、周波数も自由に変えられるってのが多い。
となれば、その気になれば人を殺すことだってできるから、《Cランク》と違って非保有者から大分怖がられてる。
でもその分、社会的にも結構役立ってるみたいだけどね。
一部では、1t近いものをサイコキネシスで自由に運べるようなのもいるから、そういうヤツは同じ《Bランク》の《騎士型》よりも重宝される場合もある。
今の《Bランク魔導型保有者》の数はそれほど多くなくて、12,000人ぐらいって言われてる。
《魔導型》については、ちょっと説明が短めになるけど許してちょうだいねぇ。
そんじゃ次は《Aランク》にいくよ。
《Aランク》ぐらいになると、並の人間じゃ到底管理できないほど強力に、恐ろしくなるっていうところは、《騎士型》と変わんない。でも、ある意味ではこっちの《魔導型》の方が恐ろしいとも言われてる。
なんせ、生み出すエネルギーの量が桁違いに大きくなるからね。
電流は数万A、雷レベル!しかもそれだけの電気を半永久的に出し続けることができる。熱量は1,600℃、鉄も溶ける温度。そして太陽に匹敵する光度を出すとも言われてる。そしてサイコキネシスなら、石油タンカーを紙切れみたいに持ち上げられるときたもんだー! ウッヒャァーッ!
しかも驚くべきは――え~、これは《魔導型》全部に言えるんだけどね――それほどのエネルギーを、特定の場所だけに集めることができるということ。身体の表面だけじゃないの、ある程度離れた空中とかにも出せる上に、そこから1mmでも離れるともうエネルギーは存在しなくなる。
え~っとつまりぃ……周りの場所には一切熱も電気も伝わらないの。物理法則を完全に無視するってわけ。簡単に言えば、球形の中には凄まじいエネルギーがバリバリなんだけど、その球の外にいればなんにもなくてへっちゃら、ってわけ。
思うままの場所に、思うままの形でエネルギーを生み出すことができるから、高熱線のレーザーも大電圧のプラズマボールも撃てるし。周囲数十mのものを全部燃え尽きさせることだってできちゃう。
その上たったひとりで原子力発電機が千台あっても足りないほどの電力を発揮できるんだから。もうこの時点で人間からすりゃ異常だね。異常。
一時は『こいつらは神の使いだ』とか、『大魔王ルシファーの血筋かなんかだ』とか言われてたぐらいだからねぇ。まぁ、あながちそれも間違いじゃないかもしれないけど……
んでもって、これだけの能力を武力行使に使えば? はい、《Aランク騎士型》同様、核兵器なんかよりもよっぽど恐ろしい大量殺戮破壊兵器になりまぁ~す。
身体能力こそ並の人間と同じだけど、こっちもこっちで、サイコキネシスの応用で物理的な防御壁なんてものまで作れちゃうから、やっぱり核ミサイルぐらいへっちゃらだったりする。
とまぁこんな具合に……なんかもう恐ろしくなってきちゃうねぇ~。
でもま、セーイチなら勝てるよ、これぐらいの連中でも。わたしならそれこそ楽勝だねぇ~うへっへへへへ!
言っとくけどねぇ、嘘じゃないよ。
《Aランク騎士型》なら、数万Aの電流でも身体の動きが多少鈍くなるぐらいだし、1,600℃でも強い火傷はするけど即死はしない。
《Aランク魔導型保有者》はかなり数が少なくて、大体50人ぐらいしかいない。で、ほとんどは世界中のエネルギー不足を解決するために飛び回ってる。
なんてったって、燃料もいらない廃棄物も出ない。ちょっとおいしいご飯食べさせるだけで電力を得られるんだから、一番引っ張りだこにされてるのはこの人達だね。
他には、未成年者がしっかり勉強してたり、一部のへそ曲がりが勝手気ままにぐーたらしてたり、ってところかな。




