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螺旋の世界ー終焉に至る者ー  作者: 姫御護来兎
三章『異次元世界』
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アリーシア奪還戦(11―7)

 リュード達が遅れている理由、それは彩とアーヴェルの意見の食い違いが起きたからだった…。


「お兄ちゃんを待たないの?」


「………瑛さんも来ます。 だから行こう、彩。 こんな少人数でいるのは危険だ、そうだろリオン」


 リオンに意見を求めるリュード。


「俺に聞かなくてもいいだろリュード。 だいたいな、お嬢ちゃん……こんな時にわがまま言わないでくれ、わかっているんだろ?」


 彩の目線に合わせるように屈むリオン。


「皆を困らせるのは良くないよ、わかるだろ?今がどういう状況なのかって言うことは」


 彩を説得しようと留香がそう諭すが、


「私はお兄ちゃんと一緒に行きます」


 彩は強情に意見を曲げないでいる。


「彩………何故そこまで強情なんですか?」


「リュード、置いていけばいいだろ。この状況が…」  


 アーヴェルの言葉が遮られる。


「わかってます。でも、お兄ちゃん達が来ないと危ないんでじゃないですか?違いますか?」


 彩の意見に息を飲むアーヴェル。


「でも、ここでぼけーっとしているわけにもいかないだろ?先に行った龍閃の兄ちゃんを追ったほうがいいんじゃないか?」


 彩を諭そうとするリオン。


「それはそうだけど…でも、お兄ちゃんは絶対来ます!」


「何の根拠があって言っているんだ、チーム全体が危なくなってもいいって言うのか?」


 声を荒げるアーヴェル。だが、


「やめろ、アーヴェル。嬢ちゃんが意地になる理由がわからない訳じゃないんだろ?嬢ちゃんも、どうしてそんなに燕条の兄ちゃんを待とうって思うんだ?」


 アーヴェルと彩の間に割って入るリオン。


「たしかにリオンの言うとおりだ。何故だか言ってくれるね、彩」


「この戦いの鍵がお兄ちゃんとリュードともう一人………だから……」


「ふざけるなよ。 俺たちNO'Sでは勝てないというのか!?」


 彩の言に納得がいかないアーヴェルは彩に詰め寄る。


「アーヴェル…やめろ」


「リオンだっておもしろくないだろ!? 俺達NO'Sがのけ者にされ、新しく出て来た奴に敵をやられるんだぞ。 おまえはそれでも…」


 悔しそうな顔のアーヴェルの肩を叩くリオン。


「俺達は戦えない訳じゃない。それぞれにやるべきことがあるだけで、そのやるべきことを成せばいいんじゃないのか、違うか?」


 今は自分達が戦うときではないと、アーヴェルはリオンに諭される。


「リュード!!」


 リオンが迎えに来た方向から白哉が走ってくる。


「白哉さん……どうしたのですか?」


「遅いから…心配して来たんだ。 ……別に、なにもないみたいだな、安心した」


「いや、そうでもないぞ白哉。 …リュード、もうわがままを聞いてやってる余裕はない」


 リュードの前に立つアーヴェル。


「敵が来やがったか…リュード、行け!」


 リュードに行けと急かすリオン。


 その顔はいつにもなく真剣だ。


「すまない……さぁ、彩も来るんだ!」


 有無を言わさずに彩を抱え上げるリュード。


「思った以上だな、さすがにNO'Sだな。 やつには逃げられたが…獲物はまだ残っている」


「お前は…何者だ」


 白哉が閃覇を抜き、構えながら問う。


「俺か? 俺は………『神薙』カルバス・レイムダイ。 神を殺し、世界を手にした男だ」


 男はそう名乗った。 レイムダイの力を感じ取ったそのとき、白哉は自分が死地にいるのだと実感した。

………

……


「これは………サミュエル。 僕達も急がないと」


 シセを先頭にアリーシア内を走る。


「これじゃ何が起こっているかわからないままに手遅れになる………なにか、なにか手はないのか!?」


 打開策が浮かばずに焦りの色を浮かばせるサミュエル。


「サミュエル落ち着いて、貴方らしくもない」


「それも仕方ない。 このアリーシア全体に広がるようなこのまがまがしい力を感じない者などいないはずはない」


 シセやサミュエルすらも恐れる。この空間を捩曲げるような邪悪は中途半端な悪ではない。これは………自分本位な正義だ。


「この際、壁なんて壊しちゃえばいいじゃないの。 そう思わない? 光」


 光に問う飛燕だが…。


「僕だって考えたさ、この邪魔な壁をぶち破れたらどれだけ楽だろうかって、だが……どう考えても無理だ。この壁は分厚過ぎる」


「いや、できるはずだ。 やろう!」


 そう言い剣を抜くシセ。


「やるって言ったけど、具体的にどうするんだ?」  


 天翔地裂爪牙・蒼龍を構える英だが、壁を貫くというシセに方法を問う。


「魔力防御はまったく施されていない。つまり………簡単に砕ける! スティウ・レイヴァノン、真名解放『星天を射抜く彗星』」


「貫け、カルディア!真名開放『天翔地裂爪牙・蒼龍』」


 シセと同時に瑛も壁に対して攻撃する。だが、壁には傷が少しついた程度だった。


「嘘だろ………まだ足りないっていうのか………」


「ヒビですら入らないとは…この壁はどれだけ硬いんだ………」


 シセと瑛の攻撃ですら傷をつけることしかできない。


「僕がやってみよう。 燕条、手出しは無用だ」


 壁に向かい立つ光その右手には弓が握られている。その弓はずっと前に瑛は見たことがあった。


「NO.6の武器………光、お前がどうしてそれを!」


「僕は継承という形でNO'Sの力を得たのさ。燕条は開花。 宗は同調。 飛燕は吸収。 龍閃は天性と、僕たち四人はNO'Sと同等かそれ以上に強くなっている………余談は後だ。さっさと撃ち抜く………」


 ヴェルノ・ローラノスに矢を装填する。矢を射出する系統の武器だが、それはボウガンに分類される物だ。威力は短弓よりも強く、飛距離は長弓よりも遠くを狙うことができる。だが今、飛距離は関係ない今求めるものは………。


「撃ち破る! ヴェルノ・ローラノス、真名解放『荒ぶ射手の煌光』」


 矢を装填し、ヴェルノ・ローラノスの真名解放をし、光は壁に対してありったけの矢を撃ち込む。


「頼む………いっけぇええーー!!!」


 最大限の力まで出し尽くした。 後は祈り、願を届けさせる以外他にはない。


「お願い………砕けて」


「光、もっと踏ん張りなさいよ」


「光、やっちまえ! お前の力を見せてくれ」


 光を励ます瑛と飛燕だが、


「あぁ、うるさいぞ二人とも!もういい加減に砕けろ、この壁があぁぁぁぁぁ!!」


 気合いと共に吠える光。光の叫びに共鳴したのか壁に亀裂が走り、明かりが差し込み壁が砕けた。


「やった………のか?」


「そんな感想を言っていないで、さっさと行くぞ光」


 光をその場に残し、壁の穴から飛び出すシセ。


「本当に勝手な奴だ。 本当に誰かにそっくりだよ」  


 と言ってシセの後に飛び出す光。


「………なんだよ。さっきは似てないって言ったじゃないか、光のやつ………ってあれ?」


「瑛、早く来ないと置いていくわよ」


「せめて、少しは待てよ!」


 気がついたらこの場に残っているのが自分だけだということに気がつく瑛。一刻も早く、白哉達の元へ行かなくては…手遅れになる前に………。


瑛は急ぐ。 大切な友の元へと………。

………

……


 強大な重圧に気圧されながら、白哉達はカルバスと戦っていた。敵は本当に強い。 三対一で戦っている白哉達は一人で戦っているカルバスに圧されている。


「こんな物なのか貴様らの力は! 弱い………弱すぎるぞ! 最初の威勢はどうした。 全力で戦え!」


 咆哮するカルバス。奴が力を奮うと空間が軋む。 奴が、奴の行動がこの世界で生きる命に危害を与える。


「無茶苦茶言ってくれるやがる。 こっちは最初ッから全力全開だってのによ」


「リオン、大丈夫か!」


「ああ、大丈夫だ。と、言いたいところだが…こんな戦闘は初めてだ。………もうそろそろ力を制御できなくなる」


 それはそうだろう。 白哉の身体だって数箇所ほど悲鳴を上げ始めている。


「NO'Sの名が泣くな………それでもお前達は本気で世界を救う気があるのか!?」


「そんな気がないのならば、童は最初からここにはおらぬ! 喰らえ! アヴォルグ・ラ・ヌマ、真名解放『反逆する神の遊戯』」


 いつの間にかこの大部屋に潜伏していたヴィーラはカルバスの背後に現れ、攻撃を試みるが。


「無駄だとわからないのか? NO'S!」


「うわあぁぁぁぁ!!」


 奇襲攻撃を躱され、反撃の回し蹴りを喰らったヴィーラは壁に衝突し、意識を失った。


「ヴィーラ! お前……よくも!」


「ダメだ、桐吾さん!下がってください!」


 カルバスに立ち向かっていく桐吾だが、


「威勢はいいが………遅い、遅すぎる!人間風情の雑魚が調子に乗るな!」


「くッ、あぁぁぁぁ!」


 殴り飛ばされる桐吾。だが、桐吾を殴った隙をアーヴェルがすかさず攻撃する。


「この俺の最速の槍を躱せるものか」ギルバフォーレ、真名解放『飛散する稲妻の咆哮』」


「なに………この俺に攻撃を当てたというのか、あの男………」


「まだだ! よそ見をするな! お前の敵はまだいるぞ! 閃覇、敵を斬り裂け!」


「無駄だと言っているだろうが!」


 カルバスの武器と白哉の閃覇が火花を散らせる。


「無駄じゃない………この世界に、いらないものなんて一つもない!お前はこれ以上この世界から何を奪うんだ!カルバス・レイムダイ」


「俺の神が望むかぎり、俺はこの世界からあらゆる物を略奪する。それが、神に対する俺の信仰だ!」


「間違っている。そんな考えは、俺は認めない!」  


 カルバスの行動理念を否定する白哉だが、


「貴様程度に理解できる理想を掲げている訳はない! 俺は神の命にのみ、従う」


「それが本当にお前の意志なのか? カルバスよぉ! 違うだろ、それはお前の意志じゃない。 それは自分をいいように使われていると気がついていない、お前の罪だ!」


「罪だと………世界を変えた俺が罪人だというのか!貴様達は!神は俺の信じる者。その神は俺を裏切ることはない!」


 リオンは言い放つ。ただ自分の意志を神に押し付け、それを正当化しているだけだと、そこに自分の意志はないと。だが、カルバスはそれに反する。自分の意志こそが神を信じる意志だと、そして神は自分を裏切らないと。


「裏切るもなにも、お前が一方的に信じるのなら神は裏切りようがないだろ、お前の中で神は絶対なのだからな。だが、そのこと自体が誤りだ。間違いを犯さない命はない。そして今、お前が信じようとしている神は間違いを犯している。それでもお前は信じるのか? そんな神を、間違いにすら気がつくことができない者を…」


「黙れ………俺の神を冒涜するなよ、この雑魚の分際で!」


 放たれる闘気がひしひしと全身に伝わってくる。 だが、臆するわけにはいかない。


「犠牲になったとしても、俺は世界を…大切な仲間を守るんだ!」


「ならば散れ! ディメンセンシス、真名開放『激昂する神々の聖戦』」


「ここで、終わってしまうのか…俺の命も、散ってしまうのか? こんなところで…俺は力尽きるのか…」  迫りくる絶望にただ言葉を紡ぐ。


 この世界を守るためなら、この身を犠牲にすることも厭わないと思っていたのに…。白哉は今、自分の置かれた状況に恐怖している。


「嫌だね、あー嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ! まだ終わりたくない! 俺にはまだ未練がある!」


「やっとわかったか、この馬鹿野郎。これが敗北の一瞬にだけ感じられる恐怖って奴だ」


 当たると思ったその瞬間、白哉を突き飛ばして尚且つカルバスの攻撃を防ぎ、そいつは現れた。


「………宗?」


「よぉ、白哉。なんだよ信じられないものを見るような目で俺を見るな」


 全身から力が抜けきっていたはずのその身体には、今では力が漲っている。


「宗、お前………」


「NO'Sの身体ってのは俺たちが思っていた以上に頑強だったってことだ。今は、瑛が来る前に、あいつを倒そうぜ」


 エストラルニクスを構える宗と閃覇を構える白哉。二人の剣士が挑む敵は………。「倒す? この俺を………か?寝言を言いたいのなら、俺が永遠の眠りにつかせてやるよ人間!」


「寝言じゃない。俺の、俺達の力を見せてやる! リオン、ほうけていないでお前も全力を出せ!」


「だが………、」


「俺には見える限界の向こう側が! それが俺達の力になる!」


「限界の…向こう? ………そうか、何故俺はそんなことにも気がつかないとはな 宗、わかったぜ、俺はもう迷いはしない!イルマリオン、真名解放」


「限界の向こう側か………面白い。フェイトのマスターよ、俺もお前の言葉を信じてみよう。ギルバフォーレ、真名解放」


 二人のNO'Sが宗の言葉に鼓舞され真の限界を目指す。力に果てなどない。あるのは無限という可能性だけだと信じて…。


「俺は………傷つこうが、立っていられるのなら、挑み続ける。わかっている結果でも変えられると信じているだから挑み続けるんだ、俺達は!エストラルニクス、真名解放」


「宗の言う通りだ、俺はお前という存在を破る! 閃覇!」


 四人の武器がそれぞれの力を解放しようと脈打つ。


「面白い、それがお前達の本気か!ならば、それ相応に答えてやろう!」


「「「「いくぜ!」」」」


「『焦がす炎天の紅蓮』!!」

「『飛散する稲妻の咆哮』!!」

「『全て凍てつく永久の眠』!!」

「『閃く覇王の太刀』!!」


 突き抜ける四つの光はカルバスに襲い掛かる。対するカルバスは避ける事なくそれらの攻撃を一つずつ対処していく。やはり神を殺した男というだけある。 その力は量ることすらできはしない。


「誉めてやろう。だが………見えた結果は変わりはしない! お前達はここで力尽きる。自身の自惚れによってな!」


「そんなことはない!リオン、アーヴェル!」


「………」

「………」


呼び掛けても、二人から返事が戻ってくることはなかった。


「リオン! 嘘だろ、起きろよ! リオン!」


 リオンの身体を必死に揺する宗だが、やはり返事は戻ってはこない。


「リオオォーーーン!!」


 叫び声が虚しく響く。


「二人も犠牲を出して俺一人倒せない………」


 油断していたカルバスの左腕を叩き斬る一人の人物。


「倒す必要はない。僕たちの目的は唯一つ。お前をこの世から消し去ることだ!」


「瑛! じゃ………ない。 お前は誰だ!」


 カルバスの左腕を難無く斬り落としたシセの名を問う白哉。


「僕はNO'S、NO.5。シセ・ボルテローンだ」


「もう少しで瑛も来ます。貴方たちは負傷者を運んでください」


 カルバスと白哉の間に割ってはいるNO.11。その身体は黄金色に輝いている。これが、最終決戦の前哨戦になるだろう。


「俺の腕を斬り落とすか…やるな、NO'S!!」


 シセに迫るカルバスに迎え撃つシセ。


「僕がお前を消す!」

………

……

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