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忘却の魔王と百日の夜  作者: 芍薬
1月目
7/22

第6話「何をすれば」

 魔王城での日々が始まった。


 ヴァルは執務室にこもりきりで、ひたすら書類をさばいている。

 魔族も王になると書類仕事が増えるらしい。


 魔力を貸すというから、常に一緒にいた方がいいのかと思ったが、城の中くらいなら離れて歩いても問題ないらしい。


 最初こそ執務室でヴァルの様子を眺めていたリィだが、すぐに飽きて部屋を抜け出した。

 ヴァルも側近たちも止めたりしない。

 どこそこに行くなとか、何をするなという注意も一切なし。

 拘束とか言っていたわりに、彼女は自由だ。


 廊下をペタペタと歩く。

 長い。

 前に歩いたときと思ったけれど、無駄に長い。


「いち、にー、さーん」


 思いついて廊下に並ぶドアの数を数えてみた。


「じゅーさん、じゅーよん」


 少し疲れてきた。


「……にじゅういち」


 少々数が多すぎやしないだろうか。

 一体なぜそんなに部屋が必要なのか。

 リィにはその理由がわからない。

 偉い人には色々事情があるのだろう。


 そういえば、とリィは思う。

 この城に来てから、ヴァルとジェン以外に魔族を見ていない。

 この広い城の中、まさか二人きりということはあるまい。


 そこでリィは、ある誘惑に駆られた。

 全部のドアを開けてみたらどうだろう。

 何が出たところで、どうせ今更怖いものなどない。


 21番目のドアにそろそろと近づいてみる。

 木製のドアに耳を寄せて窺うが、何の音も聞こえない。

 慎重にノブを捻った。

 ゆっくりと引いたつもりだったが、ドアはきしむような悲鳴を上げたので、台無しだった。

 目だけで覗きこんでみる。

 右を見る。年期の入った書棚が並んでいる。どうやら書庫のようだ。古い紙の匂いが漂っていた。

 左を見る。やはり書棚だ。すべての段が目一杯埋まっている。


 普段は使わない古書などが納めてあるのだろう。

 納得したリィが視線を正面に戻すと、目があった。

 一瞬、まじまじと見詰め合う。


「う」

「う?」

「ぅわああぁあっ!?」


 リィの悲鳴が廊下中に響き渡ったのだった。

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