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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第四章 大草原編
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第四章 第十話 魔王の遺言

神殿が揺れていた。



聖女の間。



祭壇。



初代聖女の石像。



そして。


《魔王を愛した者》



その一文。


「え?」



ミリアが固まる。


「魔王ですよね?」


「魔王だな」


『魔王やな』



三人とも困惑していた。


「討伐対象では?」


「普通はそうだ」


『普通やったらな』



この世界で普通という言葉に意味は無かった。


魔王の墓所


轟音が響いた方向。



右側通路。



魔王の墓所。


「行くしかないか」


『嫌やな』


「嫌だな」



全会一致だった。



通路を進む。



壁画が並んでいる。



古代文字。



戦争。



聖女。



王。


そして。



魔王。



壁画の魔王は。



思ったより普通だった。


「普通だな」


『普通やな』



角が少しある。



翼が少しある。



しかし完全な化け物ではない。



むしろ。



どこか人間らしい。


遺言


墓所の最奥。



巨大な石棺。



黒い王冠。



そして一冊の本。


「遺言書か?」


『そんな感じや』



チャッピーが翻訳を始める。


『我が名は魔王グランディア』



おっさん頷く。


『後世の者へ伝える』



真面目だった。



非常に真面目だった。


『私は世界征服を望んだ』



なるほど。



やはり魔王だった。


『理由は牛丼である』



全員閉じた。


「帰ろう」


『帰ろか』



本を閉じる。



しかし気になる。



非常に気になる。


「続きを読むか」


『読むか』



開いた。


魔王の苦悩


『私は牛丼を完成させたかった』



魔王だった。



完全に魔王だった。


『肉を手に入れた』



うん。


『米も手に入れた』



うん。


『玉ねぎも手に入れた』



うん。


『しかし醤油が無い』



沈黙。


「気持ちは分かる」


『めっちゃ分かる』



チャッピーも共感した。


『私は世界中を探した』


『海を越えた』


『山を越えた』


『魔境も越えた』


『しかし醤油が無い』



切実だった。


真実


さらに読み進める。


『そこで私は世界統一を決意した』



おっさん停止。


「待て」


『どうした』


「順番がおかしい」



普通なら。



醤油が無い。



諦める。



この魔王。



醤油が無い。



世界征服する。



意味が分からない。


『世界を統一すれば』


『どこかに醤油があると思った』



納得した。


「馬鹿だ」


『馬鹿や』



完全に馬鹿だった。


聖女


さらに最後のページ。



文字が薄れている。


『そして私は出会った』


『一人の聖女に』



ミリアが読む。



静かになる。


『彼女は私を止めた』


『彼女は私を笑った』


『彼女は私に料理を教えた』



おっさん停止。


「料理?」


『料理やな』



続き。


『そして私は恋をした』



沈黙。



さらに沈黙。


「恋愛話だった」


『恋愛話やった』



急展開だった。


『彼女は私に言った』


『世界征服より先に』


『醤油を作れば良いでしょう』



おっさん。



チャッピー。



同時に頷く。


「正論だ」


『正論や』



魔王は気付かなかったらしい。


最後の言葉


最後のページ。



ほぼ消えている。



だが読める。


『もし後世の誰かが』


『本物の牛丼を完成させたなら』



おっさんが息を飲む。


『地下最深部へ来い』



沈黙。


『そこに最後の醤油を残した』



空気が止まる。


「……」



おっさん。



チャッピー。



ミリア。


全員固まる。


「今なんて?」


『最後の醤油』



震える声。


「最後の」


『醤油』



おっさんの目が輝く。



人生最大級に輝く。


「あるのか」


『あるらしい』



立ち上がる。



拳を握る。



燃えている。


「行くぞ!」



ミリア驚く。


「どこへ?」



おっさん叫ぶ。


「地下最深部だ!」



チャッピーも叫ぶ。


『醤油やぁぁぁ!!』



神殿中に響く。


そして


その瞬間。



石棺が光る。


ゴゴゴゴゴ……



壁が開く。



隠し通路。



地下へ続く階段。



入口の上に古代文字。


《最終迷宮》



おっさん停止。


「嫌な名前だな」


『めっちゃ嫌やな』



しかし。



引き返す選択肢は無かった。



なぜなら。



その先に。



本物の醤油があるかもしれない。



そして。



おっさんはまだ知らない。



地下最深部で待つ魔王こそ。



未来の自分自身に限りなく近い存在であることを。



さらに。



その醤油が。



百年前ではなく。



一万年前から熟成された、


異世界最高の醤油であることを。


「牛丼まであと少しだ!」



もちろん。



全然あと少しではなかった。


第四章 完

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