表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第四章 大草原編
37/52

第四章 第七話 牛丼皇帝決定戦

人生には逃げられない運命というものがある。



おっさんの場合。



それは牛丼だった。


「つまりだ」



草原の中央広場。



巨大な円形会場。



族長たち。



戦士たち。



料理人たち。



野次馬たち。



なぜか数万人。


「皇帝になれってことか?」


『せやな』



チャッピーが答える。


「断る」


『無理やな』



即答だった。



地下帝国。



草原諸部族。



湖の民。



山岳民族。



なぜか全員集まっている。



理由は単純だった。


「古代王の再来」



という噂が広まっていた。



誰が流したかは不明。



たぶんチャッピー。



あるいは影。



ろくでもない。


皇帝即位拒否


族長が言う。


「グルガァァァ!」



歓声。



拍手。



大盛り上がり。


「何て言った?」


『皇帝になれ』



おっさん即答。


「断る」



沈黙。



周囲が固まる。



族長も固まる。



チャッピーも固まる。


「俺は働きたくない」



本音だった。


「皇帝とか面倒くさい」



さらに本音だった。


「できればニートになりたい」



真実だった。


『夢が小さい』


「放っとけ」



族長たちが相談を始める。



困惑している。



当然だった。



普通。



皇帝になれと言われたら喜ぶ。



この男は違った。


名案


その時だった。



チャッピーが光る。


『提案がある』



嫌な予感。



非常に嫌な予感。


「聞きたくない」


『聞け』



チャッピー続行。


『牛丼大会や』



沈黙。


「は?」


『牛丼大会』



さらに沈黙。


『優勝した牛丼が本物なら』


『皇帝になる』



おっさん停止。


「なるほど」



少し考える。


「本物の牛丼なんて存在しない」


『せやな』



完璧だった。



永久に皇帝にならなくて済む。


「採用」



即決だった。


牛丼皇帝決定戦


こうして。



世界初。



そしておそらく世界最後。


牛丼皇帝決定戦


が開催された。


会場。



超満員。



大盛況。



意味が分からない。


参加者。



三百二十七名。



料理人。



戦士。



商人。



なぜか鍛冶屋。



さらに魔法使い。


「何で魔法使いがいる」


『牛丼に国境は無い』


「そうか」


「いや違うな」



危うく納得するところだった。


開幕


ミリアが開会宣言を行う。


「それでは」



真面目な顔。



聖女オーラ。



神々しい。


「第一回牛丼皇帝決定戦を開催します」



拍手。



歓声。



大歓声。



影も拍手していた。



ピンクスーツなので目立つ。



全然隠れていない。


「影とは」



影が呟く。


「目立たないもの」



説得力ゼロだった。


料理の数々


大会開始。



次々と料理が出てくる。


牛丼一号



牛がいない。



羊だった。


「失格」


牛丼二号



肉がない。



野菜だけ。


「失格」


牛丼三号



米がない。



汁だけ。


「失格」


牛丼四号



なぜか爆発した。


「帰れ」



魔法使いだった。


『惜しい』


「どこがだ」



審査は続く。


決勝


日が暮れる頃。



ついに決勝戦。



最後の一品。


会場静寂。



香りが広がる。



甘い香り。



肉。



タレ。



ご飯。


「おお……」



おっさんの目が開く。


「これは」



近い。



非常に近い。



見た目。



香り。



肉の煮込み方。



ほぼ牛丼だった。


「まさか」



会場全員が見守る。



ミリアも期待している。



チャッピーも震えている。


『来たかもしれん』



運命の試食。


パクリ。



咀嚼。



沈黙。



さらに沈黙。



涙が出そうになる。


「……」


『どうや』



おっさん答える。


「美味い」



歓声。



拍手。



大歓声。


「だが」



全員停止。


「違う」



静寂。


「何が違う?」



ミリアが聞く。


おっさんは静かに言う。


「醤油だ」



全員沈黙。


「使われた醤油が違う」



料理人が頷く。


「中華醤油です」



会場がざわつく。



確かに美味い。



だが違う。



求めていた味ではない。



牛丼まで。



あと一歩。



しかし届かない。


皇帝拒否成功


族長たちが集まる。


「どうする?」



相談。



長い相談。



そして結論。


『優勝作品は本物ではない』



チャッピーが翻訳。


『よって皇帝即位は延期』



おっさんガッツポーズ。


「勝った!」



大勝利だった。


「働かなくて済む!」



人生最高の日だった。


ミリアが苦笑する。


「喜ぶところが違う気がします」


「重要だ」



非常に重要だった。


そして伝説へ


夜。



祭りは続く。



人々は牛丼を食べる。



歌う。



踊る。



その光景を見ながら。



おっさんは呟く。


「牛丼は遠いな」


『遠いな』



チャッピーも同意する。



しかし誰も気付いていなかった。



優勝した料理人が使った中華醤油。



その製法が。



百年前に失われた古代王国の技術だったことを。


そして遠く。



ピンクスーツの影が双眼鏡を覗いていた。


「影とは」



静かに頷く。


「牛丼大会のスポンサーである」



スポンサーだった。



護衛ではなくなっていた。


第四章 第七話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ