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チャッピーと共に  作者: 伝説の男前
第二章 第二階層の王者編
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第二章 第六話 逃げてもいいですか

決戦前夜。


眠れなかった。


当然である。



外では戦士たちが準備している。


槍を磨く音。


鎧を直す音。


祈る声。


泣く子供。



完全に最終決戦の空気だった。



俺だけ違った。


「逃げたい」


『知っとる』


「本気で逃げたい」


『知っとる』


「今から第三階層探しに行っちゃ駄目かな」


『たぶん怒られる』


「だよなぁ……」



焚き火の前。


一人で肉を焼く。


最近こればかりだ。



すると。


小さなオークの子供が近付いてきた。



以前肉を食べて泣いていた子だった。



子供は何か言う。


当然分からない。



だが。


笑っていた。



その後ろにはリザードマンの子供たちもいる。



みんな笑顔だった。



俺は少し困った。


こういうのは苦手だった。



前世でもそうだった。


期待されるのは苦手だ。


責任も苦手だ。


離婚した理由の半分くらいはそれだと思う。



子供たちは俺に木の実をくれた。



お礼らしい。



俺は受け取った。


「ありがとな」


言葉は通じない。


だが。


たぶん伝わった。



子供たちは嬉しそうに帰っていった。



俺は木の実を見る。


しばらく見る。



そして。


ため息をついた。


「困るんだよなぁ……」


『何が?』


「こういうの」



チャッピーは少し黙った。



そして。


珍しく真面目な声で言った。


『期待されるのが?』


「そう」


『嫌なん?』


「嫌だ」


『なんで』



俺はしばらく考えた。



そして答える。


「失敗するから」



前世でもそうだった。


期待される。


頑張る。


失敗する。


怒られる。



何度も繰り返した。



だから。


期待されるのは苦手だった。



チャッピーは黙った。


珍しく。


本当に黙った。



そして。


小さく言う。


『でも今んとこ成功しとるで』


「全部運だ」


『運も実力や』


「誰の言葉だそれ」


『知らんけど』


台無しだった。



翌朝。


地鳴りで目が覚めた。



ゴゴゴゴゴゴ……



空気が震える。


地面が震える。



来た。



大地竜だった。



高台へ駆け上がる。


見た。



絶望した。


「でけぇ……」


本当に巨大だった。



山だった。



もう竜とかそういうレベルではない。



歩く自然災害だった。



全長百メートル以上。



茶色い鱗。


巨大な牙。


赤い目。



そして。


一歩進むたびに大地が揺れる。



オークたちが震えている。


リザードマンたちも震えている。



俺も震えている。



チャッピーも震えている。


たぶんバッテリーではない。



大地竜が咆哮した。


GUOOOOOOOO!!


第二階層全体が震えた。



何人か気絶した。



俺も危なかった。



その時だった。


戦士たちが前へ出る。



オーク。


リザードマン。


ゴブリン。


コボルト。



皆。


武器を持っている。



勝てないと分かっている。


それでも前へ出る。



俺は少しだけ驚いた。



怖くないのだろうか。



絶対怖いはずだ。



それでも行く。



その理由は。


後ろに家族がいるからだ。



俺は少しだけ目を逸らした。



そういうのは苦手だった。



酋長がこちらを見る。



将軍も見る。



他の部族長も見る。



みんな見る。



嫌な予感しかしない。


「何だ」


チャッピーが翻訳する。


『最後に何か言え』


「嫌だ」


即答だった。



全員ががっかりした。



俺もがっかりした。


なぜ俺が罪悪感を感じるのか。



しかし。


皆待っている。



仕方ない。



本当に仕方なく。


俺は口を開いた。


「死ぬな」


静まり返る。



全員が聞いている。



俺は続けた。


「勝てなくてもいい」



静寂。



さらに続ける。


「逃げてもいい」



オークたちが驚く。



リザードマンも驚く。



俺は構わず言った。


「生き残れ」



静まり返る。



俺は肩をすくめた。


「飯はまた作ってやる」



数秒後。



オークたちが笑った。



リザードマンたちも笑った。



そして。


武器を掲げた。



大歓声が響く。



チャッピーが呟く。


『王様みたいやな』


「やめろ」



その直後。


大地竜が前進する。



ついに戦いが始まった。



そして。


誰もまだ知らない。



この戦いの結末が、


英雄譚ではなく、


史上最悪の事故になることを。


第二章 第六話 完

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