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Side勇者 その①

世界は美しく、また脆い。

―――比喩表現ではなく事実として、だ。



例えばここに都市があるとしよう。

沢山の人々が笑顔で行き交う、石とレンガの巨大都市。外周を高い壁で囲い、筋骨隆々な衛兵らが安全を守っている。堅牢、という言葉が何より相応しいと思えるその都市に―――


遥か上空から、爆撃魔法を一つまみ。


はい、滅亡。

石?レンガ?そんな脆い建物など残るはずがない。余すことなく粉々である。衛兵がいくら鍛えた所で、上空からの爆撃魔法に対抗出来なければ何一つだって守れやしない。崩れゆく街並みをただ呆然と眺め、死にゆく人々の悲鳴から逃れようと自らも命を絶つだけだ。


つまるところ、魔法とはあらゆる常識を破壊する兵器であり、またその燃料となる魔力こそが、この世界の全てである。


その事に気づいたモンテスト王国は、だが一手遅かった。


建造物に魔力を込める政策を進めるも、あと一歩のところで魔王の襲来。全壊……は何とか避けられたものの再興に長い年月を要とする大ダメージを負ったのだ。


加えて、王女の拉致。


たった一人の娘を連れ去られた王は絶望し、涙を流し、嗚咽と共に勇者―――僕へと命じた。


「例え何があろうとも……必ずかの魔王から娘を救いだしてみせよッ!!!」


それは、ある者にとっては死刑宣告。

既に人類に対して王手をかけている魔王軍は、無詠唱かつ無尽蔵に魔法を行使すると聞く。魔物と人類とでは魔法を用いるステージがかけ離れてしまっているのだ。そんな敵の本拠地へ赴くなど、自殺せよと命じている様なものである。


(でも!だからって!!簡単に諦められるものか!!!)


そう―――いくら理論を並べた所で、感情はまた別の話。万に一つ、億に一つでも助けられる可能性があるのなら、じっとなんてしていられない!まして……最愛の女性であれば特にだ!!


かくして僕は旅に出る。

辿りつけるか不明の……否、必ず辿りついてみせる長い旅へと。


目を瞑れば未だ鮮明に残る光景、目の前で王女が魔王に連れ去られた瞬間を思い出し、僕はその時叫んだ決意を改めて口にする。


「待っていてください王女様……!!たとえ何年掛かろうとも、必ず貴女を魔王の手から救い出して見せますッ!!!」


と。


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