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【コミカライズ】ナイナイ尽くしの異世界転生◆翌日から始めるDIY生活◆  作者: ナユタ
◆第十三章◆

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*14* 一人と一匹、小さな加護に照らされて。

 残念なことに魔法のセンスが皆無なので、せっかくもらった加護の気配がさっぱり分からない。申し訳なさを感じつつ、素直に「ごめん、加護をもらった感覚がなくて……」と言えば、忠太がぽんと手を打つ。


 そして完成したばかりの大水槽前に置いたスマホへ向き直ると、フリック入力を開始した。一旦打ち込み終わって動きを止めた忠太の手許を覗き込む。


【ああ そうですよね せいきの かごで ないから すまほで つうち ない ですもんね】


「正規の加護じゃない?」


【ちいさい かみさまたち ためた ちから たんとうの じょうきゅうせいれい からと かごのけいろ ちがう】


 こちらの質問を予め予想していた賢い相棒は、スイッと画面をスクロールしてそう教えてくれる。でも言われてみれば、加護をもらえたはずなのに、あの神経を逆撫でするファンファーレが鳴っていない。どうやらお役所仕事みたいに、同じ加護は加護でも別部署担当の扱いになるっぽいな。


「――ってことは、小さい神様達の貯金みたいなものってことで合ってる?」


 今度はまだ予想入力されていなかったので、再び忠太がフリック入力をしてくれるのを待つ。その間、大水槽に鼻先をくっつけてご機嫌に喉を鳴らす柘榴と、余った紙粘土で美幼女の胸像(着衣)を作る金太郎を眺める。


 時々じっと大水槽の中を見つめる金太郎には、もしかしたら中に住んでいる小さい神様達が見えているのかもしれない――と。袖口を引っ張られて視線を忠太とスマホに戻す。


【はい かきゅうせいれいの かご へやのすみ つもった ほこり みたいなもの どのぞくせい でるかは たまっていた かごのりょうです】


「成程。加護をくれる方も分からないってことは、ロシアンルーレット的なものってことか」


【ですです でも】


 そこで一旦途切れている文面に首を傾げると、忠太はピンク色の鼻をひくひくさせながら、私の周りをくるくると回って。少しだけ不満気に「ヂュッ」と鳴くなり【たぶん ひのかご だと おもいます】とスマホに打ち込んだ。


「――火の加護?」


【わたしの ぞくせいと まぎゃく ちいさい かみさまの きづかい】


 言われても全然ピンとこない。でもそう言われて忠太がやや不満気な理由が分かった。氷属性の忠太からしてみると、正反対の火の加護ではなくて同じ加護の方が嬉しかったのだろう。


 ただそれだと属性被りになるので、忠太に頼りっぱなしの現状と変わらない。だから忠太には悪いけど、大水槽の中に貯まっていた加護が火属性だったのは良いことだ――ってことで。


「なぁ忠太。この加護の使い方、教えてくれるか?」


 苦笑混じりにむすくれるハツカネズミの頬をつつくと、そんな私の指先を小さな手できゅっと握ってから、スマホの上に屈み込んで【みぎて ひとさしゆび まりのと ちがうまりょく かんじます】と打ち込み、続けて【ねんのため だんろで ひがつけ ねんじて】と促された。


 あまりに簡単すぎる説明に拍子抜けしつつ、教えられた通りに暖炉の前に移動して〝火よ点け〟と念じる。すると指先だけぬるま湯に浸けたように、じんわりとした熱が広がって、ぽ、ぽっと。薄暗かった暖炉の中にマッチくらいの明かりが点る。


 ものすごくか細い灯火は、間違いなく私の爪の先でゆらゆらと揺らめく。火の点っている範囲は爪の先の白い部分だけ。まさに〝爪の先に火を灯す〟だ。それでなければ、マッチ売りの少女。どちらにしても、昔の私だったら貧乏な自分への皮肉だと笑い飛ばしていたかもしれない。


 でも今は爪の先の丸みに沿って点る火は、自分に向けられた誰かの優しさだと分かっているから、照れくさいけどとにかく嬉しい。念じるのを止めると、スッと暖炉の中から灯りが消えた。つまり私が消えないでいてほしいと念じ続ける限り、この火は消えないのだ。


 アイテムを使わない初めての魔法が嬉しくて、何度も点けたり消したりしていると、急に足許でカシャンと金属質な音がした。音の発生源を見下ろすと、そこにはオイルランタンをドヤ顔で差し出す忠太と金太郎の姿。


「もしかして、これに点けろってこと?」


【はい まりの はじめての まほう きねん】


「そうだけど、大袈裟すぎないか?」


【あかちゃんの ふぁーすと しゅーず みたいなもの です】


「えぇ? よく知ってるなぁ、そんなの」


【まりの せかいの きねんびや しきたり たくさん べんきょう しました そんなことより さ どうぞ】


 そう言ってズイッと押し出された、クラシックなブロンズ色のオイルランタン。確かに初めての魔法の特別感を演出するにはもってこいだ。


 ランタンを持ち上げて揺らせばいつの間に充填されたのか、もたりと中でオイルが回る気配。蓋を開けて芯に触れると、新品なのにすでに湿気っている。たぶん忠太の魔法で吸水性を上げたのだろう。ツンと鼻をつくオイルの匂いに口元がニヤける。


 爪に点った火を芯に近づけると、真新しい真っ白な芯の先が弱々しい火に触れて、チリリと微かに焦げた。そのあとはゆっくりと溶け出すみたいに火が移っていく。やってもらったことはないけど、誕生日のロウソクに火を点けさせてもらうのって、こんな感じなんだろうか。


 ほんの少しの風で消えそうなか細い火が、懸命にオイルランタンの芯にしがみつく。それを見届けてから消えないようにそっと蓋を閉じて、加護をくれた小さな神様達にも見えるように大水槽の隣に置いた。


 するとそれまで橙色だった火は青くなり、線香花火のようにいくつも白い火花を散らせ始めた。


「ちょっ、どうしたんだこれ? まさかこれ爆発したりしないよな――って、柘榴、今忙しいからまとわりつくな。あ、コラ、頭突きも止めろってば! 石が地味に痛いから!」


「ウルル、キューゥ!」 


「だあっもぉぉぉ、珍しく大人しくしていると安心してたらこれだ! 金太郎、忠太、助けっ……いや、今スマホいらな――い?」


 条件反射で受け取ったスマホには、何故か鑑定画面が出ていて。しかも何やら結構凄いことが書かれている。


【種類・無数の下級精霊達からの加護(小)】

【名称・退魔の灯火】

【効果・弱い魔と病を祓う】

【レア度・☆5】

【市場価値・未知数(非売品)】


 瞬きする私の視界の中で、出来たてのステンドグラスがキラキラと。青い火と火花に照らされて、無数の笑い声が弾けるように輝いていた。

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― 新着の感想 ―
小さな神さまたちからの加護、最高ですね!! 正反対で不満げな忠太がかわいいです(^^) オイルランプの火が消えないように、頑張って!!
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