第2話 好奇心に負けないぞっ!
―――「ふぅ~、大方必要な素材は集まったかな。」
あれから、陽が落ちて久しくない程度の時間は経っていた。といっても、今時加工や錬金に必要な素材を一人で集めるような輩はほとんどいない。ましてや、彼女は学者である。もう一度言う彼女は学者である…。
そう、学者や加工・錬金を生業とする者であればギルドに依頼してもらうのが世の常である。
「…うん?―――ちょっと寄り道して帰ろうか。なかなか珍しい光景が見れるかもしれない!」
彼女のように好奇心溢れる学者は多くはない。しかし、いないわけではない。
大概そういった者は相棒と呼ばれる、昔馴染みの歯止め役がいるものだ。もちろん彼女も例外ではないのだが…。
「いやぁ、久しく人に会ってないからなぁ…ま、期待しすぎるのもダメだな。といっても長年の癖だから仕方ないんだけど、なぁ……」
彼女も例外ではなく、いたのだ。前までは。
段々と彼女の顔面に苦々しい顔が映り始めたとき、
――パキンッ
「あの音は…ちょっと不味いかもな。」
-------------------------------------------------------------------
「!たぁ…最の悪ッ!ギルドの依頼には初級で達成可能って描いてあったのに!」
彼女は一人、闘っていた。その状況を例えるなら四面楚歌の中、孤軍奮闘しているというのが模範解答だ。
しかし、彼女にはまだ悪態を吐く余裕はあるようだ。それを可能にしたのは彼女の戦闘経験の豊富さが故か、はたまたその逆か。
本人に聞かない限り判らない事だろう。
「なーんて、小言を言う時間はあまり無いみたい…武器も壊されたし。……まっ、私の人生はこんなものか、まぁ特に悔いはないなぁ。」
諦めとも読み取れるその言葉。だが、そこにいる彼女以外の人…いや、そこに来た一人の少女は別の意味に捉えたようだ。
「おいっ!後方に跳べ!」
「えっ?あなたはだr」
「死ぬならよそでしろ!『小竜巻』」
「きゃぁ!? い、いきなり何するの!そもそも、私が一体………え?…嘘…。」
「はぁ…やっと気がついたか……お前はこれだけの量を相手にしていたんだ。ここまでこいつらに好かれる奴は見たことない!
――是非お前の身体を研究してみたいところだ。」
「そんなことを言っている場合ですか!冗談は後にしてください!」
「冗談で言ったつもりはなかったんだがな……しっかし、改めてみると本当にすごい数だな。」
彼女らの眼に映っていたのは、100は有に越えているであろう、黒に近い紫色をしたスライムの軍団であった。




