導きのままに
900才になったけど、相変わらず少年の姿は変わらない。
だけど人族の様相はかなり変わったようで、文明が育っているのを感じるな。
今のボックスは、魂ページが12ページに……違うんだ、戦争なんだ。
オレがそんなに集めていた訳じゃなくて、戦争で魂が出るからそれをイタダキまして。
そういや、隣の大陸にも人が訪れるようになっている。
でももう魔物は居ないからな。
オレが全部素材にしてボックスに入れちまったから。
それはそうと、子孫みたいなのを発見した。
オレに良く似た銀髪で赤い瞳の奴。
でもさ、どうにも魔族の気配じゃないんだ。
だから面会とかしないよ。
少し前にも見かけたけど、その時は魔族っぽい気配だったのに。
だからまた別の奴なんだろう。
ともかく、そいつが世界から時々消えるんだ。
だから消えた時に変装無しで街を歩いてみた。
妙な注目を浴びて懲りたけど、あいつ、何してるんだろう。
それにしても、串肉作りの場所も人族に取られたし、これからどうしようか。
そんな訳で暗示全開で串肉作りを発注する事にした。
肉を預けて調理を頼む。
でもさ、人族の調理ってまどろっこしいのな。
1本1本、串に肉の塊を挿していくのな。
オレなら空中に肉を放出し、空中調理でブロック化して、
串を投げて串肉にして、大量の串肉に調味料を投げて、
まとめて焼いてボックスに入れるだけの簡単なお仕事だけどさ。
それでも王都中の料理屋に発注すれば、全員で何とかオレの仕事量に追い付くようで、金と肉で頼んでおいた。
まあ、オレは小島で作るから良いけどさ。
隣の大陸は人族に取られたけど、小島はまだいくつかあるんだよな。
そこで大量一気調理をやれば良いだけだ。
そして串肉のページが30ページを越えて、他の料理もそれぞれ10ページになった頃。
どうにも世界の様子が変な事になっている。
皆の元気が無いと言えば良いのか、どうにもよく分からない。
素材はまだまだあるんだけど、あんまり売れないと言うか……
どれぐらい過ぎたのか……あれ、何時の間に1500才越えたんだろう。
どうにも時間の経過が分からないようになったな。
もうじき2000才になると言われても、どうにも実感が無いんだよ。
だって身体はまだ少年のままなんだしさ。
ああ、眠いな。
あそこはまだあるようだし、少し寝ようかね。
☆
「おい、こら、起きろ」
「うーん、うーん」
「さっさと起きろ」
「うえっ、あれっ」
隠れ家が、壊れている。
てか、地面に露出していると言うか。
あれ、人族の気配が無いぞ。
「どうなったんだ、この世界」
「お前、魂持っているだろう」
「うん、あるよ」
「全部出せ」
「うん」
外に出て全解放……うわぁぁぁ。
周囲が見えなくなる程の大量の魂が一斉に昇っていく。
「呆れたな、こんなに持っていたとは」
「落ちてたのを拾っただけだぞ」
「勝手に拾うな」
「そうなのか、よく分からん」
「やれやれ、末期を迎えて最後の存在かと思えば、これでこの世界が復活しそうじゃないかよ」
「もしかして、オレのせいで世界が終わったのか」
「お前だけのせいではないが、一因ではあったろう」
「それで?死刑にするのか?」
「ふっふっふっ、そんな事はしないが、希望があるなら他の世界に送ってやるぞ」
「そうだね、この世界も飽きたと言えば飽きたかな」
「そのボックスの中身を寄こせとは言わんが、余りにも多くはないか」
「串肉作りは趣味だったから」
「いやいや、魔石の話だ」
ゴロゴロゴロゴロ……
「なんだ、欲しくて集めていた訳ではないのか」
「おやつになるかと思ってて」
「なる程な、それで良いのか」
「大きいのは砕くの面倒だし、小さいのだけで良いよ」
「ならばいただくぞ」
魂全部と中と大の魔石を全部。
別の世界に行くなら、串肉と料理と嗜好品。
後は金銀が少しだけあれば良いと、金貨や銀貨と一緒にあらかた置いておく。
大量の素材も特に要らないけど、ドラゴン素材以外も全部出しておく。
ドラゴン素材はあんまり出すのも良くない予感がしたから。
大魔石は全部出したけど、その中のドラゴン魔石は別枠にしてある。
だって古代竜の魔石は特大サイズ、5つしかないから良いよね。
古代竜の素材も記念品にしたいから、それも出さなくて良いよね。
「何とも大量の資源だな」
「要らないけど貯めていたから」
「そこまで供出するならば、かなりの優遇をしてやろう」
「優遇ね、まあ、適当に頼むよ」
「ふっふっふっ」
こうしてオレはこの世界を離れる事になった。
身を委ねよと言われて素直に従い……何かさ、逆らえないんだ、どうしても。
妙に厳かな感じがしてさ、どうしても逆らえないんだよ。
だから全てを委ねてオレは、その意識を閉ざしたんだ。
お し ま い
ひとまずこれで終わりです。結局、一気に投稿したけど、誤字脱字が多分、わんさかあると思います。でも、もう眠くて……最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




