少年期 1
ああ、よく寝たな。
気疲れと言うのか、何と言うのか……ふうっ……腹減ったな。
ボックスから小さな魔石を取り出して食らう。
舐めるより、噛んでゴクリと……はぁぁ、これはやっぱり良い。
何個か食って、後は舐めていれば気分最高になる。
ああ、小さな魔石の数がとんでもない事になっているな。
数百入りのバラ袋とは別に、万単位袋で3枠が埋まっている。
中型の魔石も1枠ちょっとあるし、大型の魔石も相当数はある。
外を探査すると、妙に騒がしいと言うか……あれっ、何かの争いか。
久しぶりに狩り人ギルドに赴いて、何の騒ぎかを聞いてみた。
「貴方、どんな田舎に居たの? 魔王が攻めてきたのよ」
うえっ、親父が戦争?
おっかしいな、あいつ、そんなに好戦的な感じじゃなかったのに。
気配殺してかつての幽閉場所に転移すると、何故か居るのは親父だ。
何してんの、こんなところで。
どうにも弱々しい足取りなんだけど、オレってどれぐらい寝たんだろう。
「ちーす」
いきなり気配出したら驚く親父。
まあそうだろうな、あん時も気付かなかった親父だ。
まあそんな事はどうでも良いとして、今の暦を聞いてみた。
同じ魔族と分かったのか、警戒はしてたけど質問に答えてくれた。
オレ、35年も寝てたの?
見かけが変わらないのは寝ていたせい?
少年の見た目で50才って……どうなってんのかな。
親父は弟が成人した時に代替わりの儀式をして、それからは補佐としてやっていたらしい。
それが2年前にいきなりここに送り込まれ、それからここで暮らしているとか。
何か盛られたのか、身動きが出来なくなってとの事だけど。
【身探】身体探査の結果、毒の検出で【解毒】治療した。
「若いのに中々の研鑽よの。おぬし、何処の家の者じゃ」
ううむ、まさか死んだはずの貴方の息子とも言えないし……なのでそれは言えないと。
追求は無かったので世間話に突入した。
どうにも幽閉対象の調査員か何かに思われたようだけど、基本的に暇なようで色々と話してくれた。
思えばこれが初のまともな親子の対話だったと気付いた。
いきなり豹変した言われるが、あいつは最初からそうだったぞ。
オレの眼前に炎の魔法をいきなり撃ち込んでの対話とか、オレの火に対しての軽蔑したような気配とか。
オレにはすぐ分かったぞ。あいつの感情が読めたからさ。
あの野望のような邪な感情とかさ、だからまともに相手をする気にもなれずに、とっとと会話を終わらせたんだ。
アンタはただそれに気付かなかっただけだろ。
産まれたばかりだというのに、あんなどす黒い感情とか、あり得ないと思ったさ。
だからどのみちオレが交代を断っても、色々策謀を巡らせると分かったのさ。
やりたくないんだからとっとと譲ったほうがましだと思ったのさ。
あれが本当の魔王の資質と言うなら、オレには到底無理だろう。
まさにマイナス感情の権化、あれこそが魔王たる存在に相応しい。
忌み嫌われる世界の敵……そんな感じだろう。
それに比べると宰相も大臣も、そしてアンタも穏やか過ぎるよ。
「魔王とは世界の敵、そして勇者の敵」
「既に召喚されたのかの」
「恐らく」
「なれば討伐されようの」
「弱いのか」
「歴代の魔王の強さは、初代とは比べ物にならぬ」
やっぱり赤い液体の摂取量が足りないんだろう。
つまり、初代はその情報を後世に伝えなかったんだな。
下克上でも恐れたのか、その真意は分からないけどさ。
伝わらなかったから今の現状があるって事だよな。
「勇者が来れば、この国も遂に滅びようの」
「いや、それは無いと思うぞ」
「なしてじゃ」
「この国に入ったら侵略だろ。そうしたら勇者の大義名分は無くなる」
「そのような事は関係あるまい」
「さすがに侵略するようなら、オレも本気になるしさ」
「ほお、おぬし、どれ程のものかの」
「今さ、ドラックルを軽く倒せるぐらい」
「ううむ、あれを軽くじゃと」
「うん、群れに囲まれても殲滅するぐらい」
「とんでもないのぅ。それ程の強さなれば、勇者に勝てるやも知れぬの。どうじゃ、魔王の手として」
「侵略するような魔王は嫌いだ」
「それでこのような職務に就いておるのか、成程のぅ」
やっぱり幽閉対象の調査員だと思ってんな。
ならそれはそれで良いけどさ。
「なれば国の護りは任せられるの」
「そうだねぇ。うん、ソアロやベルゼビットの居る国だしさ、護るよ」
「おぬし……2人を知っておるのか」
「引退したみたいだけど、元気してる? 」
「あやつらも幽閉されておると聞く」
「やれやれ、ニールにも困ったもんだ」
「おぬし……よもや……」
「オレは死んだんだよ、35年前に」
「あれは……何の……まさか、身代わり」
「今さ、南の国を攻めているようだけど、勇者が近いからもうじき戦闘になりそうだね」
「なしてそれが分かるのじゃ」
「探査魔法を開発してね、この大陸の出来事なら大抵分かるよ」
「とんでもない才覚……やはりおぬしは」
「まあ、オレの事は内緒にしてね。魔王とかやる気無いから」
「そうか……なれば致し方あるまいの」
そうガックリされても困るんだけど、そういうのは35年前に見せてくれないと。
あんなに平然と遺体を崖下投棄を命令しといて、今更それは無いだろって話さ。
あそこで泣きでも入れば、もしかしたらほだされていたかも知れないんだよ。
それにしても、今の王宮のあの黒い影は何だ。
どうにも元凶を思わせる気配なんだけどよ。
まさかあれで増幅になったとか、あれが弟に影響を与えたとか……
さて、研鑽の結果が通用するかな、クククッ……




