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落ちこぼれ魔皇子  作者: 黒田明人
少年期
10/17

少年期 1

 

ああ、よく寝たな。


気疲れと言うのか、何と言うのか……ふうっ……腹減ったな。

ボックスから小さな魔石を取り出して食らう。

舐めるより、噛んでゴクリと……はぁぁ、これはやっぱり良い。

何個か食って、後は舐めていれば気分最高になる。

ああ、小さな魔石の数がとんでもない事になっているな。


数百入りのバラ袋とは別に、万単位袋で3枠が埋まっている。

中型の魔石も1枠ちょっとあるし、大型の魔石も相当数はある。

外を探査すると、妙に騒がしいと言うか……あれっ、何かの争いか。

久しぶりに狩り人ギルドに赴いて、何の騒ぎかを聞いてみた。


「貴方、どんな田舎に居たの? 魔王が攻めてきたのよ」


うえっ、親父が戦争? 


おっかしいな、あいつ、そんなに好戦的な感じじゃなかったのに。

気配殺してかつての幽閉場所に転移すると、何故か居るのは親父だ。

何してんの、こんなところで。

どうにも弱々しい足取りなんだけど、オレってどれぐらい寝たんだろう。


「ちーす」


いきなり気配出したら驚く親父。

まあそうだろうな、あん時も気付かなかった親父だ。

まあそんな事はどうでも良いとして、今の暦を聞いてみた。

同じ魔族と分かったのか、警戒はしてたけど質問に答えてくれた。


オレ、35年も寝てたの?


見かけが変わらないのは寝ていたせい?

少年の見た目で50才って……どうなってんのかな。

親父は弟が成人した時に代替わりの儀式をして、それからは補佐としてやっていたらしい。

それが2年前にいきなりここに送り込まれ、それからここで暮らしているとか。

何か盛られたのか、身動きが出来なくなってとの事だけど。

身探ボディソナー】身体探査の結果、毒の検出で【解毒キュア】治療した。


「若いのに中々の研鑽よの。おぬし、何処の家の者じゃ」


ううむ、まさか死んだはずの貴方の息子とも言えないし……なのでそれは言えないと。

追求は無かったので世間話に突入した。

どうにも幽閉対象の調査員か何かに思われたようだけど、基本的に暇なようで色々と話してくれた。

思えばこれが初のまともな親子の対話だったと気付いた。

いきなり豹変した言われるが、あいつは最初からそうだったぞ。


オレの眼前に炎の魔法をいきなり撃ち込んでの対話とか、オレの火に対しての軽蔑したような気配とか。

オレにはすぐ分かったぞ。あいつの感情が読めたからさ。

あの野望のような邪な感情とかさ、だからまともに相手をする気にもなれずに、とっとと会話を終わらせたんだ。

アンタはただそれに気付かなかっただけだろ。


産まれたばかりだというのに、あんなどす黒い感情とか、あり得ないと思ったさ。

だからどのみちオレが交代を断っても、色々策謀を巡らせると分かったのさ。

やりたくないんだからとっとと譲ったほうがましだと思ったのさ。

あれが本当の魔王の資質と言うなら、オレには到底無理だろう。

まさにマイナス感情の権化、あれこそが魔王たる存在に相応しい。

忌み嫌われる世界の敵……そんな感じだろう。

それに比べると宰相も大臣も、そしてアンタも穏やか過ぎるよ。


「魔王とは世界の敵、そして勇者の敵」

「既に召喚されたのかの」

「恐らく」

「なれば討伐されようの」

「弱いのか」

「歴代の魔王の強さは、初代とは比べ物にならぬ」


やっぱり赤い液体の摂取量が足りないんだろう。

つまり、初代はその情報を後世に伝えなかったんだな。

下克上でも恐れたのか、その真意は分からないけどさ。

伝わらなかったから今の現状があるって事だよな。


「勇者が来れば、この国も遂に滅びようの」

「いや、それは無いと思うぞ」

「なしてじゃ」

「この国に入ったら侵略だろ。そうしたら勇者の大義名分は無くなる」

「そのような事は関係あるまい」

「さすがに侵略するようなら、オレも本気になるしさ」

「ほお、おぬし、どれ程のものかの」

「今さ、ドラックルを軽く倒せるぐらい」

「ううむ、あれを軽くじゃと」

「うん、群れに囲まれても殲滅するぐらい」

「とんでもないのぅ。それ程の強さなれば、勇者に勝てるやも知れぬの。どうじゃ、魔王の手として」

「侵略するような魔王は嫌いだ」

「それでこのような職務に就いておるのか、成程のぅ」


やっぱり幽閉対象の調査員だと思ってんな。

ならそれはそれで良いけどさ。


「なれば国の護りは任せられるの」

「そうだねぇ。うん、ソアロやベルゼビットの居る国だしさ、護るよ」

「おぬし……2人を知っておるのか」

「引退したみたいだけど、元気してる? 」

「あやつらも幽閉されておると聞く」

「やれやれ、ニールにも困ったもんだ」

「おぬし……よもや……」

「オレは死んだんだよ、35年前に」

「あれは……何の……まさか、身代わり」

「今さ、南の国を攻めているようだけど、勇者が近いからもうじき戦闘になりそうだね」

「なしてそれが分かるのじゃ」

「探査魔法を開発してね、この大陸の出来事なら大抵分かるよ」

「とんでもない才覚……やはりおぬしは」

「まあ、オレの事は内緒にしてね。魔王とかやる気無いから」

「そうか……なれば致し方あるまいの」


そうガックリされても困るんだけど、そういうのは35年前に見せてくれないと。

あんなに平然と遺体を崖下投棄を命令しといて、今更それは無いだろって話さ。

あそこで泣きでも入れば、もしかしたらほだされていたかも知れないんだよ。


それにしても、今の王宮のあの黒い影は何だ。

どうにも元凶を思わせる気配なんだけどよ。

まさかあれで増幅になったとか、あれが弟に影響を与えたとか……


さて、研鑽の結果が通用するかな、クククッ……



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