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LOVE OF BLOOD  作者: hisa
19/56

<19>舞い降りる疑惑

 朝から寒い寒いと思っていたら、案の定乾いた街に白雪が舞った。白い粉を分厚い雲が惜しみなく舞い散らす。

 風はあんまり強くはなかったから吹き付ける雪ではなく、それはほんとに深々と降り積もる雪で心温まる柔らかい雪。

 こんなに深々と降り積もる雪は久し振りで、手足は凍える様に冷たくなっているのにも関わらず、心が躍ってなんだか妙にそわそわしているのはカイト。


「な、マユ! 雪だるま作りたい!!」


 親友の年甲斐もない発言にマユは奇異の目を向けた。

 そんな視線を物ともせずに、カイトは窓にべったりと張り付いてはしゃいでいる。まるで大きな子供の様で。


「マユ! あたしも作りたい!!」


 しかも、意気投合なんかしちゃって、この双子。こんなとこで意思疎通しなくてもとマユは肩を落す。こんな寒い中、わざわざ校庭まで出る気にはなれず雪だるまとはしゃぐ双子の背中を見送った。

 それが、ほんの少し前の話。



「あの? ユウ先輩いらっしゃいますか?」


 教室の入り口の、珍しい来客に思わずマユは首を傾げた。

 一年生が上級生のクラスに訪ねて来るのは以外に珍しい上に、確かこの子はカイトの事が気に入っていると噂の、可愛い子だとマユは気付き更に疑問を深める。カイトに用ならまだしも、何故ユウ?

 疑問符が頭上に飛び交ったまま首を傾げたマユは、


「ユウは校庭に行ったけど。何か用なら伝えようか?」


 自席に掛けたまま問う。

 それににっこりと笑み返し、マリは緩く頭を振った。


「大丈夫です。校庭ですね? 行ってみます」


 ふわふわの髪が揺れる。小さくお辞儀をして踵を返す様子は、女のマユから見ても十分に愛らしかった。突然の珍客の訪問と、ユウ宛てに来た理由が検討もつかずマユは秀麗な顔をぽかんとさせたまま教室の入り口を見ていた。

 雪の降る放課後。

 なんでみんな帰らないんだろうとマユは教室内を軽く見渡す。教室の彼方此方に数人クラスメイトが残っていて、帰り支度をしながら談笑しているようだ。そんな様子をぼんやり眺めてから、窓の外へ視線を移動。

 眼下に広がる銀世界に、ユウとカイトの後姿を見つけた。背のバランスが釣り合わない二人の並んだ姿は逆にしっくりくる程に見慣れているから、簡単に見つけられる。掌に救った雪をお互いの背中に入れようとしてじゃれてる姿も小さい頃のままの様で微笑ましくって。思わず吹き出した処で視界が真っ暗に。


「どっち、見てるのかな?」


 突然闇に覆い隠された視界は、確かに暖かい温もりを保っていたからそれは直ぐに掌だと分かる。ただ、質問の意味が理解出来ない。


「どういう意味ですか? サク先輩」


 今日はお客さんが多いな。小さく息を吐いてマユは視界を覆っていた掌に手を当て光を取り込んだ。振り向きざまに見上げた、サクの表情はおどけた様にも意味深にも取れて。ますます何だろう。


「マユちゃんが見ていたのはユウちゃんか、それともカイトかと。そーゆう事」


 サクから返って来た返答は更に意味が分からない。マユの机に片手で体重を預けて、サクはマユから外の二人に視線を移した。

 何だろう。今日は珍客が多い上に、訳が分からない事ばかりだ。


「あたしが見ていたのは幼馴染ですよ?」

「マユちゃん上手いね。俺はてっきりカイトかなと思ったんだけど?」

「どういう意味ですか?」


 本日二度目の質問。意味が分からない上に、誘導尋問に掛けられている様で、何だかあんまりいい気がしない。それに、マユがユウを見ていようがカイトを見ていようがそれはサクにはどうでもいい事だと思うから。

 それでも、サクの表情は意味深で少し挑戦的でもある様に感じられる。不敵な笑みの中で漆黒の瞳だけが笑ってなくて、言い様のない雰囲気だ。


「あの二人ってさ、自覚してるの?」

「何を?」


 間がじれったい。



「惹かれてる事。だって、異常でしょ。依存で片付けてしまうにはさ」



 そんな天変地異みたいな事、あっさり言わないで。


 



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