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いつも一緒  作者: 夏帆
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一緒の未来へ

親元から離れて、K県。俺は今、独り暮らしをしている。色々とあったが、猛勉強の末にK大の理学部への合格を決めた。勿論、夏実も同じだ。そして、もう一つ。俺たちは隣同士の部屋を借りたので、実質的には半同棲生活をしている。お互いの合鍵を持っているものだから、そうなるのは必然だったのだけど。とりあえず今は幸せいっぱいなんだよな。

・・・なんて呆けた事を考えていたら、夏実の声が部屋に響いた。

「愁~早くしてよ!」

「そんなに急がなくたって、大学は逃げていかないけど」

「そんな事言ったって、今日は遅刻したら大変だもの!!」

黒のリクルートスーツを着込み、化粧も髪型も綺麗に仕上がった夏実は俺を急かす。相変わらず美人だな、なんて見慣れた顔に見惚れ。結局、「早く!」と夏実に怒られた。とは言え、上半身裸の状態では行ける訳がない。時計を見れば、まだ七時二十分を過ぎた所を針が指している。全然余裕な時間じゃん。

のそのそとワイシャツを着て、眼鏡を掛けつつ俺は洗面台に向かう。三面鏡に映る自分はカッコ悪い。前髪にはしっかりと寝癖が付き、口元には涎の跡。こんな姿を夏実に見られた事に、俺は内心ショックを受けた。どちらかの部屋で一緒に過ごした時の朝は流石に、夏実より早起きして顔くらい洗っている。不細工な顔を曝す勇気などないから。それにしても、油断していた。今日の朝早くからの訪問は、正直、予定外だった。

「愁~。トーストと目玉焼き、できたから早く食べて!」

台所からは明るい声が聞こえる。

なんか奥さんみたいだな、あいつ。

将来を想像して、顔がにやついてしまう。朝から何考えてんだよ、俺。慌てて髪の毛を整えると、顔を水で洗った。

「愁!!早くって!」

「分かった、今行くから」

相も変わらず、せっかちな夏実は動きの鈍い俺のせいでご立腹らしい。口調がだんだん尖ってきた。

俺は洗面台を後にして、リビングへ向かう。そこには膨れた愛しい彼女がいた。机の上には美味そうな朝食。

「遅いよ。もう七時四十分を過ぎたわよ」

「悪い。飯、さんきゅ」

これで許して。

俺は夏実に軽くキスをした。不意討ちだったので、彼女は頬を真っ赤に染めたが嬉しそうに薄く微笑んだ。そんな表情が眩しくて、堪らなく幸せを感じてしまう。

穏やかで甘い朝はこうして始まる。






K大の正門の前で、俺たちは並んだ。桜が吹雪のように舞う中を、スーツに身を包んだ新入生たちが通っていく。片隅には「入学式」の看板。そう。今日からまた新しい生活が回り出す。嬉しい事も悔しい事も楽しい事も悲しい事も、きっとたくさんあるだろう。けれど、二人でいれば乗り切っていけるに違いない。

「愁、行こう」

「ああ」

夏実が手を差し出す。俺はその手をきつく握り締めた。夏実に嫌われるその日まで、どんな事があってもこの手は離さない。だって俺たちは、いつも一緒なんだから。


お読みくださりありがとうございました。

誰かを好きになるって素敵なことなのに、その想いに振り回されては傷つき・・・。それでもやっぱり恋をせずにはいられない。そんな甘酸っぱい想いが皆様に伝わったらと思います。

また後日談として、本編では良い人で終わってしまった山本先輩の話を書こうと思います。夏実のことが好きなのに、彼女の恋を応援し成就を手助けしてくれた先輩にも、新しい恋が届きますように。


最後までお読みくださりありがとうございました。


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