36/123
-36-
よくよく考えれば、多くのクローンがいる中で、なぜ自分だけが地球に残されたかが、城水には分からなかった。それに城水の体内で数十年も眠り続ける必要があったのか? という疑問も沸々(ふつふつ)と沸き起こるのだった。城水の両親が諸事情により地球へ我が子を置いて飛び去らねばならなくなったという詳細を、クローン化したとはいえ、まだ城水は指令から伝えられていなかった。
翌朝、いつものように雄静はひと足早く家を出た。一本しかない通学バスが定刻に出るからだ。乗り遅れれば遅刻するのは目に見えていたから、さすがに雄静は目覚ましが鳴れば起きた。そのあと、いつもなら時差で城水が起きるのだが、この朝は雄静より早かった。城水の内心は完全に別人だったからである。別人が気も漫ろで早起きするのは当然だった。
「パパ、なにかあるの? 今朝は早いね?」
歯を磨き終えて着がえも済まし、キッチン椅子へ悠然と座る城水を見て、雄静は訝しげに訊ねた。
[ああ、まあな…]
城水はひと言、暈し、テーブルに置かれた新聞を手にした。1時間ばかり前に起きた里子は、台所に立って朝食準備に余念がなかった。
「また、奥様会!」
突然、里子が振り返って城水を見た。城水には何のことだか分からない。城水が黙っていたから、里子の追撃が始まった。




