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「できた……!」
あかりが歓声を上げ、茂と顔を見合わせて笑った。
「あかり、お前はすごいな。じいじには、そんな『誰かとつながる』なんて発想はなかったよ」
「ううん、じいじが写真をずっと大事に持ってたからだよ。私はただ、それをみんなに見せたら楽しいかなって思っただけ」
あかりはモニターを見つめながら、ふと呟いた。
「じいじ、私さ、今までAIってちょっと怖いと思ってたんだ。学校の先生も『宿題で使うな』とか言うし。でも、今日じいじと一緒にやってみて、なんだかAIが、じいじの心を通訳してくれてるみたいに見えたよ」
茂は、その言葉を噛み締めるように頷いた。
「ああ。じいじも、最初は怖かった。でもね、AIは魔法の杖じゃない。自分の想いを形にするための、一番聞き分けのいい『部下』なんだな。大切なのは、何をしたいか、どう伝えたいか。それさえあれば、じいじみたいな年寄りでも、新しい扉を開けられるんだ」
茂は立ち上がり、机の片隅に置かれた一冊の本――『部下はAIに任せなさい』をそっと撫でた。この本がなければ、今夜、孫とこんなふうに肩を並べて笑い合う時間は訪れなかっただろう。
翌朝。
茂は、昨夜完成したサイトのリンクを、町の老人会のグループLINEに送ってみた。
一分もしないうちに、次々と既読がつく。
『茂さん、これはすごい! 昭和35年の祭りの写真、俺が映ってるよ!』
『涙が出ました。亡くなった母の若い頃の姿を見られるなんて。思い出ポストにメッセージを書いたから読んでね』
パソコンを開くと、クロードが「新しいメッセージが届いていますよ、茂さん」と通知を出していた。
そこには、自分と同じように、町の記憶を大切に想う人たちの温かい言葉が溢れていた。
茂は窓を開け、夏の爽やかな朝の空気を吸い込んだ。
昨日の蝉時雨は今日も賑やかだが、茂の耳にはそれが、新しい時代の始まりを祝う音楽のように聞こえた。
「さて、クロード。次は、この写真の記憶をAIに語らせて、動画にしてみようか」
『いいですね、茂さん。どんな構成にしましょうか? 計画を立てますので、またじっくりお話ししましょう』
茂は、軽やかな足取りでパソコンの前に座った。
62歳。定年後の静かな暮らしは終わった。
AIという頼もしい部下、そしてあかりという最高のクリエイティブ・ディレクターと共に、茂の「二度目の現役生活」は、今、鮮やかに幕を開けたのだ。
(完)




