第3-16話 結局、エンチャントウェポンって、何だ!?
女戦士レッカ、ワイバーンを倒す。しかも、魔力の低い戦士でも使える呪文を使って…
それは、今まで戦力外と考えられていた者達でも強力なモンスターと渡り合えるという、一筋の光明を示した。
戦士達は明日から路地裏通りの呪文屋へと走り、借金まみれの呪文屋は新たな顧客を獲得する事となるだろう。
ワイバーン討伐を祝して、『南都』冒険者ギルドでは、例によって祝宴が催された。だが、宴の主役であるレッカが、「明日も朝から稽古があるから」と、程々にしか飲まなかった事と、危険度の高いモンスターの撃退も2度目となると、宴はささやかな物となり、早々にお開きとなった。
終った頃には日も沈んでいたため、『ファングドフラワー』のメンバーも、それぞれギルドを後にしていった。ヒサゴは東新街区の自宅へ、アゲハとキュリアはロクスケのスクロールショップで、遠征の報告書を仕上げに、そしてレッカは、冒険者ギルドの寮の自室へ…
ミスリルプレートを抜いて汚れを取り、丁寧に鎧櫃に仕舞い、ミスリルソードを鞘から抜いて手入れをすると、翌朝に備えてベッドに潜り込んだ。
新しい力も、このパーティーでやって行く自信も手に入れた。だが明日からもまた鍛錬とクエストの日々、しかもミスリル装備のローンを毎月払わなければならない。これからが大変だ…
それに…レッカは思い出していた。
あの武具店は、冒険者はランクC以上でなければ分割払いを許していない。
レッカがミスリル装備を手に入れられたのは、彼女がランクCパーティーの一員故の特例だったのだ。
赤銀色に輝く鎧は彼女自身の力で手に入れた物では無い。彼女はまだまだ下っ端。決して奢る事の無い様、例え誰にも顧みられなくても、これまで通り研鑽に努めなければ。
(まあ、いつか、魔法みたいな奇跡が起きれば、みんなと並ぶ事も出来るかもしれないな…)
そう思いながら、レッカは心地良い疲労感の中、眠りへと落ちて行った…
※ ※ ※
同時刻、『南都』冒険者ギルド…
ギルドの仕事に昼夜は無い。夜でも緊急クエストが舞い込む可能性があるため、職員も交代で従事している。そして、明日のための準備も夜のうちに済ませなければならない。
新たな掲示物2枚の貼り出し。1枚は…『戦士レッカをランクCに昇格させる』という内容である。
「あのレッカさんが…奇跡ですね…」
まだ新人の受付嬢が、その掲示物を見て言うと、レッカをデビューからずっと見ていた先輩受付嬢が言う。
「奇跡なんかじゃありませんよ。後衛に偏ったパーティーで、たった一人で前衛を支え続け、詠唱を伴わない魔法を使う魔法使いとの連携を構築し、そしてこの度の、ワイバーンのほぼ単独での討伐に加え、戦士でも使える魔法を用いた戦法の構築…彼女の長年の努力と研鑽の成果が認められた、当たり前の正当な評価です。」
「そんなもんですかねぇ…明日レッカさんがこの事知ったら、どんな顔するでしょうねぇ…」
「ほら、私達も仕事しましょう。そっちも早く貼って。」「あ、はーい。」
先輩に言われて新人受付嬢は2枚目の掲示物を貼る。そこには双葉…地面から生えて来たばかりの植物が初めてつける2枚の葉をあしらったマークと、『キンダーガーデン出身冒険者の大量入隊への対応』と書かれていた…
※ ※ ※
同時刻、閉店後のロクスケのスクロールショップ…
「…はい、スペルミスもありませんね。」
キュリアが書類から頭を上げると、アゲハも目頭を押さえながら、
「ありがと、助かった…くれぐれも守秘義務は守ってね。」
「分かっていますわ…」
そう答えるキュリアの顔は青ざめていた。
アゲハ達が行っていた遠征ミッション…『奧都』周辺の定点観測結果の報告書。その大まかな内容は、『事前に閲覧していた、前回の観測結果と比較して、奧都周辺はモンスターの種類、数ともに著しく増加しており、活動も活性化傾向にある』…決して誰彼構わず話せる内容ではない。
その報告書の隣には、広げられた手紙。『キンダーガーデン出身冒険者の大量入隊への対応』と書かれている。この店の店主に宛てられた物だ。
当の店主であるロクスケは、スクロールショップの表の看板の下に、件の双葉マークに『加盟店』と書かれた紙を貼り付けていた。入口のドアには、"Closed"の側を向けた掛け看板が、風に吹かれてバタバタと音を立てている。吹く風は暖かいが激しさを増している。次に訪れるは穏やかな季節か、それとも嵐か………
ファイヤーボールって、何だ!? ~呪文屋ロクスケは術式を走らせる~ 第三部
エンチャントウェポンって、何だ!? 完




