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ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜  作者: 白洲詠人
第一部 ファイヤーボールって、何だ!?
33/85

第1-33話 結局、ファイヤーボールって、何だ!?

翌朝………


ロクスケは目が覚めた。大勢の人の声で起こされた。


「一体何だ…!?こんな所に人なんて来る訳が…」


眠気まなこをこすりながら奥の部屋から出て来ると、店内には既にアゲハがいた。しかも何故か、エプロンを着けていた。


「あ、ようやく起きたわねネボス…じゃなくてロクスケ。」


「アゲハ…一体どうやって入って来た!?そして今、俺の事をひどい呼び方しようとしなかったか!?」


「大家さんに合鍵で開けてもらったのよ。」


「あのババァ…」

そしてようやくロクスケは、店内に漂っている違和感の正体に気づいた。


「店の中が………整頓されている…!?おまけに掃除まで…」


「大変だったのよ…同じ系統の呪文書をまとめて並べるの…」


今まで種類を問わず乱雑に棚に置かれていた呪文書は、系統ごと種類ごとに整理整頓されて並べられ、しかも店内は塵一つ落ちていないくらいに掃除され、心無しか窓から入る光さえ明るい気がした。


「そう言えば、一体何だ!?外の騒ぎは」


何気なくロクスケが入口のドアを開けて外を覗いてみると…そこには路地裏の細道いっぱいの、大勢の人だかり。ローブ姿の者が多い。全員、魔法使いだ。


「な、何だこりゃぁぁぁぁ!?」


ロクスケの声に人だかりは「お!?店、開くのか!?」と、一斉にこっちを向いた。さらにロクスケが驚いた事には、ドアの表側に、広げたスクロールが貼られており、表面には筆と顔料で、”Rokusuke’s Scroll Shop”と書かれていた。これは、手製の看板か!?おまけに外側のドアノブには板切れの左右上端に短いロープが渡された、小さな掛け看板。裏表に”Open”、”Closed”と書かれていて、今は”Closed”の方が表を向けている。


「い…一体何だこれは…!?」

慌ててドアを閉めたロクスケにアゲハは、


「あーそれ、あたしが買った『ファイヤーボール』。」


「何だと!?」


初めてアゲハがこのスクロールショップに来た時、うっかり開封してしまった『ファイヤーボール』の呪文書。術式そのものはアゲハの脳内に構築されたが、残った白紙を今回再利用したのだ。


「あー、あとねロクスケ、昨日作ってもらった呪文書の代金なんだけど…一部物納でいいかしら!?」


「ぶ…物納だと!?まさかそれが表の看板…!?」


「あー、あれはもっとまともなのを付けましょう。物納の代金の残りは、あたし自身。」

エプロンの上からのぞく大きく開いた胸元に手を当てて、アゲハはそう言った。


「な………っ!?」

その意味を曲解して顔を赤くするロクスケ。


「あのね…昨日のギルドでの祝勝会で、あたし、言っちゃったの。『今回勝てたのはロクスケの呪文のおかげだ』って…その結果が、外の人だかり。」


「おま…勝手な事を…!!」


「…でね、ミッション受注後は成否に問わず1ヶ月の休暇が認められてるでしょ!?。だからヒサゴと相談して、当分食べてくお金は手に入ったんだから、お休みしようって…」


「それがどんな関係が…」


「1ヶ月間、あたし、この店を手伝わせてもらうわ。それが、物納の報酬。」


ロクスケは仰天した。俺が1ヶ月間、アゲハと一緒に、店をやる!?


「だ………だから勝手な事を言うな…」


「この店は当分、お客さんでごった返すわね。あんた1人で捌き切れるの!?あたし以上にあんたの術式を理解してる人はいないはずだから、店員には最適よね!?それにあんた、養育費も家賃も払わなきゃいけないでしょ!?」


「ぐ、ぬ、ぬ………」

口ごもるロクスケ。


「あたしに『北都へ帰る』以外の道を示したのはあんたよ。だからあんたも、『このまま南都で燻ってく』以外の道を進みなさい。」


「俺はそんな偉そうな事言った覚えは無い…燻ってる覚えも…」


「あたしにとってあんたが『南都』の代名詞だからこれでいいの。あと、全ての人が頂に立つ必要は無いけど、今日食べてくごはんを買うお金は必要よねぇ!?」


ふざけるな。今までずっと1人でやって来た。店員も繁盛も要らない。ロクスケはそう言い返すつもりだったが…

「………勝手にしろ。」

何故か、口から出たのはその言葉だった。


アゲハはニッコリと微笑み、入口のドアを開けると、ドアノブの掛け看板を”Open”にひっくり返し、表の人だかりに声をかける。


「お待たせしましたー!!呪文屋ロクスケ、開店でーす!!」


     ※     ※     ※


南中した太陽が、西の海に傾き出した頃…


「ふ〜〜〜〜〜っ………!!」


カウンターにぐったりと伸びたロクスケが妙な声を上げた。今日1日で、この店を始めてこれまでの何年分の来客と稼ぎがあったか分からない。その客も全員商品を手に帰ってしまい、アゲハも『一旦家に戻る』と言って出て行ってしまった。


「ロクスケー、お疲れ様ー!!」


表のドアが開き、再びアゲハが入って来た。しかも何故か、カチャカチャ音を立てている。


「…アゲハか…本当にお疲れだ。」

午後半ばで既に対人折衝力の容量限界だ。


「じゃあ、これ…」

アゲハはカウンターにカチャカチャ音の正体を並べる。ティーポットと2つのカップ。ポットからは温かい香りが漂って来る。


「これは…紅茶か!?」


「何日か前に、バザーで買ったものなの。それから…」


アゲハがバスケットから取り出したのは、焼き菓子。


「これは………お前が焼いたのか!?料理を練習中と言ってたな!?」


アゲハは苦笑し、

「これもお店で買ったの。まだこんなすごい物まで作れないわ。でも…期待してて。」


「お、おう………だが、一体どういう風の吹き回しだ!?」

ロクスケがそう尋ねると、アゲハが、


「話がしたいから、持って来たの。」


「あ、魔法の呪文の話か。今日は何が聞きたい!?」


アゲハはロクスケをじっと見つめ、


「あなたの話を聞かせて。」


「え………!?」


「何でもいい、あなたの事を知りたいの。」


数秒の沈黙の後、ロクスケは、

「お、俺の話は、つまらんぞ………」


だがアゲハは言う。

「それはあたしが判断する。」


ロクスケは観念した様にため息をつくと、入口まで歩いてドアを開け、表の掛け看板を”Closed”にひっくり返すと、


バタンと、ドアを閉めた。



ファイヤーボールって、何だ!? 〜呪文屋ロクスケは術式を走らせる〜 完


ここまでご覧いただき、ありがとうございました。


白洲詠人

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― 新着の感想 ―
完結済みのチェックが入ってないと思いますよ~。 あと、余計なお世話かと思いますが、もし可能ならもう少しだけ書き足して10万文字を超えた方が良いと思います。 私も今、プログラミングやITをネタにした作品…
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