第1-19話 アップグレードって、何だ!?
数日後、ロクスケのスクロールショップ…
ギィ… 入口のドアが軋む音を立てると、
「よく来たなアゲハ、待ってたぞ!!」
ロクスケが明るく出迎えた。今日は何故か興奮している様だ。
「どうしたのよ唐突に…」
その態度にアゲハは困惑した。だが、ここ数日、ロクスケは何故か愛想が良い。
「これを見てくれ!!」
そう言ってロクスケは巻物を開いて見せようとする。
「ちょ…ちょっと!!」
アゲハは慌てて目を背ける。ロクスケのスクロールを開いた時にどんな効果があるか、アゲハは身に覚えがありすぎる。
「安心しろ、これはまだ『処理』してないから、見てもお前に設営されない。」
「あ、ああ、そうなの…」何とか納得してアゲハは巻物を見る。何だかんだでロクスケの呪文書には興味がある。
※ ※ ※
spell fireball(position,rmax,rho,nmax,joule,ft,phit,thetat)
:
materialarray=array(phlogiston,oxygen)
molearray=array(2,1)
:
form ball(a,position,rmax,rho,nmax,materialarray(),molearray())
:
end spell
:
subroutine ball(a,position,rmax,rho,nmax,materialarray(),molearray())
ncount=ubound(molearray)
n(0)=0
for j=1 to ncount
n(j)=n(j-1)+molearray(j)
next i
for i=1 to imax
call randomball(a,position,rmax,imax,i,r,theta,phi)
if mod(i,n(ncount))>=n(i-1) and mod(i,n(count))<n(i) then
call createcluster(a,material(i),mole*nmax,position,r,theta,phi)
endif
:
next i
:
end subroutine
※ ※ ※
「…よく分からない物が増えてるわね。”materialarray”とか、”molearray”とか…”array”って、隊列!?…でも何で、括弧がついてるのかしら!?」
「それは配列だ。材料とモル数を1まとまりにして、サブルーチンに送る様にしたんだ。」
「そう言えば、”materialarray”はフロギストンとオキシジェン、”molearray”は2と1って書かれてるわね。でも何でわざわざこんな風にしたの!?」
「混合する元素の種類を不定に出来る様にしたんだ。これまでのやり方だと、元素の種類数ごとにサブルーチンを使い分ける必要があったから。でも、その制限が無くなったんだ。どうだすごいだろう!?」
興奮するロクスケだったが、アゲハの反応は冷淡だった。
「今の”ball2”で十分なんじゃない!?物が燃えるのに必要なのは、熱の他は可燃物とオキシジェンだって言ってたじゃない。2種類しか使わないでしょう!?」
「将来的に他に応用も効くだろう!?」
「ああはいすごいすごい…」言いながらアゲハは陳列棚からスクロールを取ってカウンターに置く。「これ、いただくわ。」
『ストーンバレット』の呪文書だった。
「お…おう、毎度あり…」唐突に商品が売れた事に戸惑いつつロクスケは例によって金貨5枚を受け取る。「お前、最近大活躍みたいだな…」
「ようやく男共と肩を並べた程度よ。あたし達はもっともっと強くならないと…」
スクロールを受け取りながらアゲハは言った。
そう。彼女はもっともっと強くならなければならない。そしてそれには、ロクスケの術式が大きな武器になる。術式へのより深い理解と、応用が必要だ。
以前、アゲハは『ファイヤーボール』の術式の、周囲の球殻を厚くするという、本来想定していなかったであろう使い方をしてみせた。そして今回、ロクスケは『ファイヤーボール』の術式の混合球の構成元素の種類数を変更出来る様にしてみせた。
ロクスケは以前言っていた。『昔々の誰かが魔法の呪文を作ったんだ。なら俺にも出来るはずだ』と。なら…
アゲハは思った。『昔々の誰かや、ロクスケに出来た事が、あたしにも出来るはずだ、』と…




