ヴェイザー 後編
フィリアとアーシャは、最後に格納庫へと足を運んでいた。
顔見知りのメカニックを何人か紹介し、技術班の中でも大穴のレプティルの元へ訪れた。
「……何時までやってんだよ」
遺跡の研究員でもあるレプティルは、フィリアの知る情報を延々と引き出していた。
話しについて行けないアーシャは完全に蚊帳の外となるも、案内と言う任務を放棄する訳にもいかずに眺める事となった。
「ほう、実に興味深いね、じゃあ毛髪以外はほとんど人工物って事かい?」
「は、はい」
「(その青髪地毛かよ)」
マシンガントークレベルの質問攻めは終了するも、今度は品定めが始まる。
全身を舐めまわすように観察されるフィリアも疲れを表面に出してしまっている。
元々フィリアには興味津々だった彼女は、獲物を見つけた蛇のように彼女の小さな体へと巻きつく
フィリアは冷や汗をかきながら耐えるしか無かった。
「うん、詳しい事は後でまた調べさせてもらうが、これだけは聞きたい」
「な、何でしょう?」
「(まだ続くのかよ、アイツも大変だな)」
本の一つでも持って来るべきだったと内心後悔するアーシャを尻目に、レプティルはフィリアの武器をいくつか並べた台車を持って来る。
サンプルとして研究を行っていたようだが、壊すのが怖いせいであまり触れた後がない。
「この、アンタの持っていたライフルや他の武器、それらの設計データか何かが有れば渡して欲しいんだが、大丈夫かい?そうでもしないと、こっちはアンタの武器の整備も何もできない状態だからね」
「あ、そう言う事でしたら構いません、それに、皆さんはマスターのお仲間ですからね、情報で良ければ」
「すまないね、頼むよ」
ウキウキとした表情を崩さないままのレプティルは、フィリアからの情報を受け取る為に端末を操作する。
大きめのタブレットとも言えるような端末を前に、フィリアは目を丸めてしまう。
「……あ、そうでした、普通の人は端末で情報をやり取りするんでしたね」
「……そうか、強化人間は端末を体内に埋め込んでるんだったね、まぁ多分やれると思うから、送信しておくれ」
「はい」
向けられた端末を見つめるフィリアは、早速データの共有を開始する。
「(ほんと、何話してたかほとんどわかんね、つーか早くしろよ、飯時までにはおわらせたいんだからよ)」
二人がデータのやり取りを行う傍らで、腕を組むアーシャは右手の人差し指を上下に動かしていた。
退屈な時間に口元も引きつらせ、時計も小刻みに確認してしまっている。
「はい、これで終了です」
「ああ、ありがとうね、ふふふ~、さぁてどんな物か楽しませてもらおうじゃないかい」
「……」
かけているメガネを直したレプティルは、早速データの閲覧を開始。
かじりつくように目へと焼き付けて行き、フィリアの事は完全に眼中から外れてしまっている。
隙を見たフィリアは、さっさと彼女の元から離れてアーシャの手を掴む。
「……は、早く行きましょう(この部隊変な奴ばっかだ、これなら昔みたいな道具扱いの方がマシだ)」
「やれやれ」
ずっと拘束されていたフィリアは完全に怯えてしまっており、仕方なくアーシャは彼女を保護する。
「……ん?」
レプティルは、早速データを元にしながらライフルをいじりだす。
そして、変なシステムを誤作動させたのか、銃口が光りだす。
「ギャ!?」
「どわ!?」
おかげで、ライフルよりかなり低出力のビームが放出。
格納庫の壁や天井をバウンドし、最終的に物資を釣り上げていたクレーンに命中する。
『誰だぁぁ!?あぶねぇだろうが!!』
「……そうだな、あまり遅くなると私まで巻き込まれかねないしな」
クレーンの操縦士の怒号が響き渡るのを尻目に、アーシャは逃げるように格納庫から移動を開始。
その足はここに入って来た時の出入り口では無く、方角で言えば艦のもっと内側の方だ。
「……折角だ、特別格納庫に案内してやる」
「と、特別、格納庫、ですか?」
「ああ、ほら、また捕まる前に移動だ」
「……は、はい(何か、怒ってる?)」
アーシャの声色が妙に暗くなった事に気付いたフィリアは、彼女の表情をよく観察する。
怒っているような印象の彼女の目は、レプティルやフィリアの方には向いておらず、むしろ今向かっている方を捉えているように見えた。
「(……特別格納庫、一体何がッ!?)」
逃げながら移動していると、フィリアは異常な熱気と、表皮が痺れるような感覚に襲われた。
「(あ、暑い、まるで、焼却炉に向かっているみたいだ)」
一歩一歩、アーシャの言う特別格納庫との距離が縮むにつれて、その痺れと熱気は強くなる。
「(……この先)」
二人の向かう先。
その部屋で待っている巨人の熱波に、アーシャはずっと怒りを募らせていた。
「(私達タイタン族が落ちぶれた原因、か、癪だがコイツにも紹介しないとな)」




