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転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

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ヴェイザー 前編

 執務室を出たアーシャとフィリアは、通りすがる他のスタッフの目も気にしつつ艦内を歩いていた。


「はぁ、こうなった以上やるしか無いか」

「……」


 あからさまに肩を落とすアーシャの様子には、フィリアも少し心を痛めた。

 アーシャは前マスターからの命令で従わなければならない存在であり、身を挺して守らなければならない存在でもある。

 もちろん、性格の良し悪しでその任務を曲げる気はない。


「あの、やはり私は、邪魔物でしょうか?」

「……そう思われたくないなら、私の役に立て、なんだかんだ、お前の使っている粒子兵器には魅力がある」

「……魅力?」

「ああ、気に入らない奴らをぶちのめしやすくなる」


 アーシャもアーマードナイト程度であれば簡単に破壊できるが、遠距離から一撃で破壊できるような武器はこのご時世簡単に手に入らない。

 彼女の協力が無ければ、今の所粒子兵器は使えない。


「崩壊戦のせいで、全盛期の技術、とりわけ粒子兵器の類は艦砲位大きな物が関の山だ、お前のように手持ち式を作る技術は失われているんでね」

「……まさか、フィルターですか?」

「ああ」


 フィリアの言うフィルターは、粒子兵器を制作する上で必須の物。

 パーティクル粒子は科学的に圧縮した際、人体には害しかない毒性を持つ。

 フィルターはその毒性を取り除く為の物であるが、現在は小さくする技術は失われている。


「……成程、どうりで敵の機体は旧式ばかりだったんですね」

「お前から見るとそうだろうが、私達からすれば一般的な機体なんだよ」

「……そ、そこまで衰退していたんですね」


 予想こそしていたものの、改めて突きつけられた現実にフィリアは息を飲む。

 しかし、何故アーシャが粒子兵器に固執するのかは察した。


「(確かに、あんな普通のライフルでも、対抗手段が無ければ大きなアドバンテージだな)」


 フィリアの脳裏を過ぎったのは、対抗手段も確立していた当時の戦場。

 その当時では、フィリアのライフルは豆鉄砲同然だった。


「……以前にも言ったが、力の無い奴は人として扱われない位にはモラルも死んでいる」

「(その辺は割と私が活動していた時期と変わりない気が)」


 現状説明を続けるアーシャは、表情を強張らせながら右腕の火傷部分を強く握った。


「(……右前腕部に火傷痕……古いな)」


 アーシャの仕草が気になったフィリアは、スーツで覆われている右腕をスキャンした。


「(怒りを孕んだ恐れ……コマンダーが言っていたのはこれか?)」


 詳細まではわからなくとも、アーシャの口ぶりから事情を読み取った。


「人として扱われる為に、この部隊に入った、のですね?」

「ああ、それもある」

「それも?」


 フィリアの言葉に頷いたアーシャは軽く腹部をさすり、ジャケットのポケットから携帯食を取りだして、包みを破いてすぐに食べ始める。


「ハグッ」

「……それは、今も変わらないんですね」

「……まぁな」


 アーシャが食べ始めたのは、フィリアも良く知っている携帯食。

 ブロック状の見た目をしており、保存性や携行性も高く、更には栄養価も非常に高い。

 味はとにかく空腹感を満たす為の物で、フィリアもよく食べていた。


「さて、さっさと案内するか」


 あっさりと携帯食を食べ終えたアーシャは、案内を開始する。


「任務は任務だ、案内はちゃんとしてやるから、しっかり聞けよ」

「は、はい」

「先ず、この部隊の事だ、実態としては母体のヴェイザーコーポレーションの実働部隊って所だ」


 この艦の説明の前に、先ずは自分達の所属している部隊がどのような存在なのか、それを簡潔に説明するとフィリアは軽く頷く。

 そして、アーシャが詳細な説明をしようとした時。


「ヴェイザーコーポレーション、基本的には農産業に重きを置き、得られた資源を加工し販売を行う機関、この実働部隊以外にも、孤児院や修理工場なども経営している、ただし、基本的には第一次産業へ力を注いでいる中堅の企業であると」


 と、アーシャが言うはずだったセリフを全て述べた。

 地味に複雑な心境になりながらも、フィリアの方へ視線を落とす。


「……何で知ってんだ?」

「あ、えっと」


 出鼻をくじかれ、案内は要らないのではないかと思っていると、フィリアは懐から本のような物を取りだした。

 まるで求人用のパンフレットのように、薄く、妙に明るいデザインの本だ。


「そう言った事に関しては、コマンダーさんからパンフレットを頂いていますので、ある程度は(けど、私が居た頃にはそんな事考える奴は居なかったな)」

「……何でそんな物有るんだよ」

「最近大きくなってきたので、求人に力を入れているとかで、試作品を渡されまして」

「初耳だが?」

「そ、そうでしたか……ご、御覧になります?」

「……ああ」


 初めて聞く計画に困惑しながらも、アーシャはフィリアからパンフレットを受け取った。

 パラパラと流し読みしていき内容を確認してみると、傭兵業に関しては軽く触れる程度で、他の産業を主要な物として前面に出されている。

 コマンダー達の性格から考えて、別の業種の方に力を入れようと考えているのだろう。

 全体的に目を通しつつ、フィリアにパンフレットを返す。


「……ありがとうな」

「いえ」

「とりあえず、企業としての説明はそれ見ときゃ十分だな、んじゃ、移動するぞ、とりあえず近い所から適当に回る」

「はい」

「(……最初は気乗りしなかったが、ギャーギャー騒がれるよりはマシか)」


 アーシャの危惧していた面倒ごとに直面する事は無さそう、そんな安心と共に、艦内の説明を行うべく二人は移動を開始。

 その際、アーシャは格納庫の方角へ目を向けた。


「(……とりあえず、最後の方にあれを紹介しておくか)」


 意識を研ぎ澄ませたアーシャに僅かに流れ込んで来る、熱気のような気配。

 それを最後に持っていくように、頭の中でルートを構築した。






本日は後二本投稿します。

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