表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が世界を救った300年後、荒廃した世界で傭兵少女は強化人間少女と出会う  作者: B・T
第一章 子供嫌いの巨人

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/130

巨人の目覚め

 巨漢と対峙するオセロットは、肩で息をしながら刀を構える。


「はぁ、はぁ……いい加減、くたばりやがれ!!」


 何度突いても再生してくる巨漢相手に、オセロットは腰を深く落とす。

 血管が浮き出る程足に力を込め、地面が陥没する程の踏み込みを行う。

 今のオセロットが、ただ一つ習得している技の最強の姿。


「惨刺水明・九刃!」


 九回同時と錯覚できる刺突。

 水の螺旋を纏うオセロットの技は、巨漢の体を完全に粉砕した。

 粉々になった巨漢の肉片は衝撃で吹き飛び、壁のシミとなる。


「はぁ、はぁ、はぁ……グ」


 ガス欠が近づき、オセロットは膝をついた。

 刀で体を支えるも、視界はかすみ、流れる汗が瓦礫だらけの床を濡らす。


「クソ」


 首を横に振り、根性で立ち上がる。

 フラフラと刀を納めようとした時、巨漢の吹き飛んだ場所の壁が破壊された。


「ッ!」


 また刀を引き抜き、虚勢を張りながら睨みつける。

 肉の擦れる音と共に聞こえてくる金属音に、歯を食いしばった。

 ゆらりと煙の中のシルエットが動き、湿った足音を鳴らしながら近づいて来る。


「……あ、アイツは!」


 出て来たのは巨漢の男では無く、サーバールームでケフュレスが倒した筈の大男。


「何でアイツが死んで!テメェが出てくんだ!!」


 彼女の自爆の影響か、身体が僅かに歪になっている。

 両腕に取り込まれている金属も、先ほどと形状が異なる。

 だが、そんな事はどうでも良い。


「……よくも」


 ケフュレスの気配は、今も感じない。

 目の前の大男だけが立っている事実に、刀の柄を軋ませた。


「テメェだけは刺し違えてでも決してやる!」

『ギョオオオオ!』


 先ほどより酷いノイズの雄叫びを上げ、一歩踏み込んだ。

 次の瞬間――


「何だ!?」


 大男は、コードの束に飲み込まれた。

 オセロットが足を止めると、コードの束が蠢く。

 大男から何かを絞りとるように捻じれ、妖しい光が輝いた。


「クソ、アイツ、まだ」


 オセロットは異様な光景から目を離さず、ゆっくり下がる。

 やがてコードの束に肉がまとわりつき、人の形を作り出す。

 取り込んだせいか、巨漢は先ほどよりも大きい。


「……」


 刀を構え直しながら、オセロットは見上げる。

 巨漢は巨大化を続け、やがて天井を背中で押し出す。


「まてまて、どこまで大きくなる気だ!?」


 周囲の瓦礫、金属片を取り込み、肉とコードが繋げて膨張する。


『グヲオオオ!!』

「ッ!?」


 叫ぶだけで衝撃波が発生し、オセロットは吹き飛ばされた。

 壁に叩きつけられ、キーンと鳴り響く頭の耳を抑える。


「勘弁、してくれ」


 壁に腕を付けて立ち上がると、巨人となった巨漢に睨まれる。

 既に、アーマードナイトと同格の大きさだ。

 震える足で体を支え、刀を構えた。


「来るなら、来やがれ!」


 虚勢を張ると共に、巨人の拳が振り下ろされる。

 ――その時だった。


「なッ!?」


 オセロットの背後の壁が砕けた。

 一瞬の静寂の後で、巨人よりも大きな腕が出現した。

 巨人の腕は砕け、本体も拳で吹っ飛ばされる。


「何が起きて、ドワ!」


 また壁が吹き飛び、感じ慣れた気配に気付く。

 煙の中より、巨大な顔が現れる。


「オセロット、無事か?」

「無事に見えるか、これが」


 降り注いだ瓦礫を退かしたオセロットは、頭に血管を浮かべながら立ち上がった。

 そして、巨大なアーシャの顔に硬直する。


「……お、おい、おま、なにが」

「兄貴ぃぃ!」

「オセロットさん!」

「サーバル!フィリア!?」


 アーシャの顔の影からひょっこり飛び出したのは、フィリアとサーバル。

 サーバルは満面の笑みを浮かべながら、オセロットへ抱き着く。


「っと……何が有った」

「うるせぇ!そんな事より、生きててよかった!足手まといとか言うな!!」


 顔を赤くし、涙を流すサーバルはオセロットの腹部に顔を擦り付ける。

 兄妹の再会を横目に、アーシャの顔の近くから強化人間達も出て来た。


「……悪かったよ、落ち着け、そして状況話せ、なんかまたウジャウジャ出て来たし」

「私から説明します」

「頼む、フィリア」


 サーバルの頭を撫でていると、フィリアが事情を口にする。


「先ず、この艦の医療ポッドで、マスターの呪いを解きました。見事成功し、あの通り、そして、システムから解放された強化人間達が味方になってくれました」

「……言いたい事は多々あるが……あの強化人間達は、大丈夫なのか?」

「はい、もう我々がリバティーフリューゲルに加担する理由はございません」


 疑惑の目を向けるオセロットの前に立ったマリーは、優雅に一礼した。

 彼女の姿勢を見て、オセロットは刀を鞘へ納める。


「……妙な事をしたら、子供と言えど斬るぞ」

「……どうぞ、それで貴官の気が済むのであれば」

「名前は?」

「マリーと申します」


 再びマリーは一礼した。

 その様子を見ていたアーシャは、顔を動かす。


「……お前らはソウリュウに戻れ、私はアイツと決着をつける」

「ま、まだ生きているんですか?」

「ああ、そういう訳だから早く逃げろ、私が動けないんだよ、これ以上」


 よく見てみれば、この場所は崩落寸前。

 巨大化したアーシャが動くと、全員瓦礫の下敷きだ。


「……分かった、スコール2、4、俺達は退却するぞ」

『押忍』

「それと、マリーだったか?お前らも来い、仲間を先に向かわせたんだろ?」

「はい」


 オセロットの指揮の元、サーバル達は撤退を開始。

 その途中で立ち止まったフィリアは、アーシャと目を合わせる。


「……フィリア?」

「マスター、先ほど申し上げた通りです、どうか、それまで死なないでください」

「……当然だ」


 頭を下げたフィリアは、オセロット達の後を追う。

 彼女達が遠くに逃げた事を気配で読み取り、アーシャは瓦礫から姿を現す。

 タイタンとしての真の姿が、日の目を浴びる。

 戦車を踏みつぶし、衝突したビルの残骸が崩れ落ちる。

 電線などのライフラインも次々引きちぎられ、足音が轟音として響き渡る。


「どこだ?イムカー!!」


 怒りの咆哮が、大気を震わせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ