40 南へ引き返す アリスside
「「アシェル様〜!!」」
「誰?」
しばらくアシェルと野道を歩いていると、後方から声がして振り返る。
見ると遠くから異国風の衣装を着た少年と少女が必死で走って来る。
「ルートとルーラか」
アシェルは眉を寄せているが、知り合いみたいだ。
歳は私よりちょっと年下っぽい雰囲気。
二人は瓜二つで男女の双子のようだった。黒髪に黒い瞳の少年少女はカラフルな民族衣装を着ていてとても愛らしい。
「あなたはアリス王女ですか?」
「アシェルはエヴァグリーン国まで王女を迎えに行くって言ってたよ!」
二人はそれぞれ別の事を同時に口を揃えて捲し立てるように話す。聞き取るのが大変だ。
「えっと。今は木人形なので本当は王女なのに正しくは違うっていうか100%ではないっていうか···」
「いいや、王女じゃないよ?
王女へは会えなかったんだ。この人は侍女として雇ったんだ。」
アシェルは私の歯切れの悪い返答をしれっと遮って、私にも初耳の侍女設定を語る。
「エッでも、この人侍女っぽくない·····」
「堂々としてるよね」
「チッ」
アシェルは舌打ちする。
「煩いよ。お前ら邪魔だからあっちいけ」
「やだよ。僕たち若の随身だよ?」
「片時も離れるなって言われてる。しょっちゅう離れるけど」
「お前たちは俺の本体を守っておけばいいんだよ」
「本体はうんともすんともいわないからつまらない」
「本体より中身が危な過ぎるから見張らないと」
「それより、アシェルはエヴァグリーン国王女争奪戦に参加しなくていいの?」
「年頃のちょうどいい男はみんな登庁して、候補者リストに登録してるって」
「ええ?王女争奪戦??」
「その人王女じゃないなら、アシェルも急がないと」
「昨日、エヴァグリーン国からアリス王女が人質に来たんだよ。皆、その姿を見ようとすごい人だかりだったんだよ」
「!?アシェル、まさか·······」
私を騙したの!?
「違う違う。エヴァグリーン国が王女だと偽って替え玉を寄越してきたんだよ」
アシェルは首を竦め両手を広げた。
「えっ私じゃないってこと?」
「うん」
「びっくりした、到着したそうそう座敷牢に入れられるのかと思ったわ········」
でも、偽物なんて?
その人が私のかわりに捕まっているということ?
カインは人質の話なんて何も言ってなかったのに。
でもそうか、だから木像を作ったのね········
「そういう事なら私がやります。王女の責任でしょ」
「ダメだって。そんなのになったらこの国の誰か偉い人と無理矢理結婚させられちゃうよ」
「そうなの?人質ってそうなの??」
「そうだよ。だからカインだって偽物を寄越したんでしょ。王女に結婚させる気ないからエヴァグリーン国は」
そうか、だから私に話が来なかったのか。
でも私の替玉の娘が心配だ。偽物だってバレてしまったらどうなるのだろう?
「その、王女という方は今どこにいるのかしら?」
「えっとね、白い議事堂だよ。この国のことを色々決める一番大事な場所だよ」
「······ってあんたやっぱり、アリス王女なの!?」
「ええ········ふが···」
「これはただの侍女だ」
アシェルは私の口を手で抑えて黙らせた。
私の顔に顔を近づけて真剣な表情を見せる。
「お城の皆を蘇らせたいんでしょ?二頭追うものは一頭も得ず。僕はアリスの望みを叶えたい」
「アシェル·········」
こんなに、無条件に私の望みを叶えようとしてくれるアシェルに感謝してもしきれない。
でも、
「でも、やっぱり、放っておけないよ·····」
「ふ、バカだなあ」
アシェルはいかにも面倒くさそうに足で地面を蹴った。
「仕方ないなぁ
あの、でくのぼうに連絡しなきゃ」
そう言って、
アシェルは来た道を引き返し始めた。
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