39 二人は北へ旅に出る アリスside
「で?アリスはどうしたいの?」
「私は······皆が生き返られるように、その『山の塗料』を探しに行きたい」
私は道具を借りてきてアシェルの取れた右腕をつけてあげた。アシェルはきちんとお礼を言って腕を動かして確認する。
「じゃあ、行こう」
「え?」
「ディスィジュエス共和国にあるんだ。行こうよ。僕が案内するよ」
「そんな·········悪いよ」
「僕たちの仲でなんで気にするの?」
「そ、そんなに私達親しくないでしょ!?」
なぜか知り合いっぽいけれど、初対面のはずだった。
でも、正直、詳しい人が着いてきてくれてらとても助かる。それにそんなに結婚結婚言ってるなら·······
「いいわよ········。じゃあ、『山の塗料』見つかったら、お返しに結婚!············なんて、どう?」
「えっ、か、軽っ!!」
何よ?そもそも、自分が言ってたくせに。
「アリス、僕はもちろんありがたいんだけどさ、心配だなぁ。
初対面だと思ってる男と結婚するの?もっと自分を大切にしてね?」
「む、········」
な、なんなのよ~
「でもありがたーく受けるよ。ありがとう!
まだ12歳だし、18歳になったらだけどね。
じゃあ準備しておいてね。また来るよ!」
「·········」
なんで私が求婚したみたいになってんのよ。
それにこの国では16歳で結婚できるはずなんだけど、アシェルはどうしても【森の王女】の設定を踏襲したいようだった。
準備、
旅行カバンとか服とか靴とか食料とか······気が遠くなるわね。
あっ
それに、カインにも了承を得ないと。
私はカインには絶対に反対に合うような気がしてならない。
早まったかな··········
「急に具合が悪くなるなんて、大丈夫?」
カインは部屋に入ってくると心配したように話かけて、私のベッド脇の椅子に腰掛けた。
私はここ数日体調が優れなくてベッドから出られない。
「うん······ちょっと引っ張られる感じがして、気持ちが悪いの」
「へえ?引っ張られるの?」
カインが鋭く探るように見つめてくる。
「う、うん。どこか知らない空間に引っ張られるような、不思議な感じがするの·····」
「ところで、あの大きなカバンはどうしたの?」
カインは部屋の隅に用意してある旅行カバンを訝しむ。
ざわわ·····と空気が動いた気がした。
「アリス!」
突然、カインが大声を出した。
「は、はい!」
「それを俺は知ってる!ダメだ!引っ張られちゃ!」
知ってる?·······カイン、何を言って········
空気はますますざわざわ鳴っている
「行くな!」
私は何処か遠くへ、強く引っ張られた。
「やあ、来たね」
私が気づくと、アシェルが私を見下ろしていた。
私は·····少し小さくなっていた。
ここは、小さな小屋の中だ。
工具や木片が雑然と散らばった、木工の作業用の小屋のようだ。
「さあ、行こうか」
「は?行くって、ここはどこよ?」
「ディスィジュエス共和国だよ。ここまでは手間を省けたけど、ここからがとにかく遠い。
もっともっと北上したところにその森はあるから·····暫く旅だよ」
「ええええ〜!?あれっ?私木像?」
どうやら私は、見れば、違う木像に入ってしまったようだ。しかも、現実に近い12歳のサイズ感のものに。
アシェルってこんなこともできるの!?
聞けば、寿命がまだ長い木人形であれば、高位の木人形に魂を移動させるのはそう難しくないらしい。
「素材も彫刻の技術もこっちが上手ってこと!
あ、呼び方、木像じゃなくて木人形、ね」
アシェルは自慢気に話す。
「妄想は終了かぁ······」
「何言ってるの。そっちの姿の方が何億倍もいいよ。僕が作ったんだからね?」
「これ、アシェルが作ったんだ········」
平然と言ってのけるけど、
男の子に自分の身体をリアルに作られるのは、
かなり恥ずかしく感じる私はおかしいだろうか?
「さっ行くよ!」
「あっ私のカバン無い!せっかく準備したのに〜!」
「準備って、木人形になんの準備がいるのさ。お腹は減らないし、汚れても気にならないし、なかなか死なないから、安心して?僕も木人形で行くからね」
準備をしておけって言ったのに。
どうやら、心の準備という意味だったのか。
それでも、アシェルはきちんと人間らしい旅支度を二人分終えてくれていて。
私たちは程なく、北へと出発した。
明けましておめでとうございます!
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