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【 虹獣 】 6章:タウォ 8話:漂雲(ヒョウウン)

 タウォが吸収していた死骸や廃棄物が崩れ掛かり、リルトは全身を複雑骨折し鋭利な鉄の棒が肺へと突き刺さっていた。ヒューヒューと弱々しく息をしながら朦朧とするリルト。走馬燈のように過去の出逢いと別れ、大切なもの達の死に際を思い出していた。四八、母犬、ルナ、エティ、パラ…。自分もこれから死を迎えるのだと感じ取って。

「わらわはどうなるのじゃ…?孤独は嫌じゃ…。リルト…リルト……」

蒸気と化したタウォの弱々しく泣く声が、意識が薄れゆくリルトの耳に届く。

「誰かが…呼んでいる……。タウォか……?まるで幼子のように……」

自身の死の訪れ。タウォとの確執。タウォの中に見た幼き日の自分。複雑な心境ながらも同じ死ぬのであればと善意へと傾くリルト。

「タウォ…、私はここにいる…。何も怖れる事はない…、皆は天に還るのだ…」

同じく蒸気と化したリルトがタウォへと優しく語り掛ける。

「リルト!!リルトか!?わらわは怖かったのじゃ、人間に穢され孤独を味わわされる境遇に……」

「リルトに似た想いを感じ、わらわは、わらわは……」

タウォが思いの丈を素直に吐き出す。

「……最初から素直に話してくれていればな……」

リルトは自分達獣以外にも人間に理不尽さを感じるものがいるのだと知り、もっと早くに解り合えていたら協力出来ていたのに、犠牲を出さずに済んだのにと思いつつも、人間にも良いものがいる事を認識していた。

「人間は…人類は…。他のもの達を穢し犠牲を強いて…、それだけに飽き足らず同族すら物理的にも精神的にも虐殺する……。人間は!人類は!……」

タウォは気持ちを昂らせ泣きながらリルトへと訴え掛けるのであった。

「…解っている。でも、人間にも優しく思い遣りの深い人は居たのだ」

リルトは四八や七三一を思い浮かべながら、自分自身も生きるのに必死だった頃の悪行を思い出し、嫌悪感を抱いた人間達も生きる為に悪行をしていたのかも知れない?と推測するのであった。

「…何かが違っていたら…。何かが変わっていけたら…。獣同士も…人間同士も…、生物達…全ての…幸せな……可能性……」

リルトが薄れゆく意識の中で呟く。

「タウォ…、悲しい獣や…悲しい水が…再び生まれないように……。人間に期待しよう……。人間も……」

「…人間に…期待……?リルト……」

リルトとタウォは意識を失い天へと昇るのであった。


 一夜明け様々な死骸や廃棄物が残る森の池付近には、ヘドロまみれとなった死骸や廃棄物を発見した人達、逍遥町役所職員、警官、近所の人達が集まって騒いでいた。少し遅れて到着した地元の報道陣がリポートを開始する、

「本日はこちら逍遥町の泉窪にあります大きな池の周辺に来ております。こちらでは大量のヘドロにまみれた死骸や廃棄物が見つかった事で、地域の皆さんが不法投棄だ祟りだと騒がれており、また昨今話題になっている熊本県水俣市の猫や鴉や魚の不審死との関連性はあるのかどうかを探っていきたいと思います。それではインタビューを……」

報道陣が地域の人々へとインタビューをする中、それとは反対側からヘドロの固まりへと静かに近付く七三一の姿があった。七三一はヘドロの中にルノアであったリルトの亡骸を見付け、

「この猫…、私の家の猫です。引き取らせて頂いてよろしいでしょうか?」

七三一は悲しさを抑えるようにしながら周囲に居た警官と町役所職員に問い掛ける。

「現場検証は済んでいるからどうぞ。邪魔にならないように」

警官は慌ただしさから事務的に応じた。

「ありがとうございます」

そう言いながら七三一は亡骸となったリルトを抱え上げ胸へと寄せる。リルトを抱き様々な事を想いながら空を見上げると、澄んだ雲に虹が掛かっていたのであった。



spiral never ends.


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