「オレってマジモンスター(8)」
『兄者……今、助ける。待っていろ――――』
起伏の少ない男性の音声が草原に響き渡る。何らかの仕組みによって増幅されているらしく、それは叫び声でもないのに周囲一帯に聞こえるものだ。
それと同時に大地は揺らぐ。一歩、一歩……“それ”が脚を踏み下ろす度に地鳴りが生じる。
「・・・・・んぉ??/・・・・・はぁ??」
「お~、わざわざ持ってきてくれたんか? 気が利くじゃねぇか、弟くんよぉ……」
見上げている4人。
快晴、晴れ渡る空に煌々とした太陽。その陽光を塞ぎ、影を落とす『巨体』。
『……お前ら、兄者から離れろ……いや、潰す。そこを動くな……』
黒鉄の巨魁。四つ足歩行で「ズンズン」と、踏み込む度に大地を抉って草原に出でる。
それは『巨大な機械』。4本足のそれは外観として前足は細く、後ろ足が太い。口元はワニのように大きく、少し盛り上がった頭部には搭乗席がある。
4本足の機械が軋む金属音と共に立ち上がれば、その体躯は10mを悠々と越えてさらに広い範囲を影に包んだ。
何をせずとも、近くにあれば轟々とした何かが駆動する音が聞こえてくる。機械仕掛けの心臓音は人間1人の鼓動と比べるまでもない。膨大な熱量を髣髴とさせるように、背部に備えられた突起や各部の隙間から煙があふれ出ている。
とんでもない代物である。こんなもの、パウロどころかアルフィースだって見たこともないし、存在を予期することすらないだろう。『機械仕掛けの獣』を見上げると、それはあまりにも絶望的な威圧感を放っている。
「……なんね、こりぇ???」
パウロは意味の解らない物体を問うた。とりあえず、この場で一番知識に信頼を置ける男に質問してみた。
「おぉ、こいつが依頼の……できれば回収してくれって頼まれてんだ。すっげぇだろ? 複合熱魔導式の“機械獣”よ。割とカッケェっしょ??」
ジェットは笑って応える。彼としては見慣れたもの……というか開発に携わったものなので驚きもない。むしろちょっと、整備不良の音が気になるくらいであろうか。
「お、おう。す、すげぇ! すんげぇ、けど……こいつ、敵なんか???」
「んぁ……そりゃぁ……敵だろうよ? だって、さっきのアレ……アレの弟が乗ってるからな。“潰す”とか言ってるし……ははは、マジヤベ~」
「て、敵……そうか、んだか…………んでも、こりぇはどうしろってんだ???」
パウロはすっかり解らない。敵なのは解ったが、だからと言って“コレ”をどうすればいいのだろう、と。
当たり前である。10mもある鉄の塊だ。先日にヤットコ村を襲った騎士も大概だったが、あれよりデカくて生命感が無い。というか、先日の奴も何がどうして解決したのかパウロは解ってはいない。
数秒の間、パウロ及びその背後で声を失っている少女は呆然としていた。しかし、この巨大な機械獣から『どけ、潰れろ』と抑揚のない音声が響き、その巨体が迫ってきたことで正気を取り戻す。
「ひっ……う、うわぁぁあぁん!!!!」
「う、うわっ……あ、アルフィースつぁぁん!!!」
あまりの圧力に少女アルフィースは怯えて座り込んでしまった。パウロ少年はその身体を抱えて駆け始めたが……身体の節々が痛く、力むと出血するので本来の速度が出ない。
それでもかなり距離は離した。鼻水も垂れ下がる苦戦顔でふと後方を見れば、そこには背後を気にしながら走るミリストリアの姿がある。彼女は抜け目なく、例の狂人を引きずって連れているようだ。
そのミリストリアが急に止まったので、つられてパウロも停止した。抱きかかえられて屈強な男の胸元で泣いていた少女は……チラリと目に入った鼻水に塗れた顔面を理解して暴れ始める。
「ぎぃぃぃんにゃにゃぁぁあああ!!!! 汚いッ、離れろッ、無礼者ッッッ!!!!」
「あちちちち!? や、やめちィ!! アルフィースつぁん、やめちくりぃぃぃ!!!」
抵抗を受けて即座に、ゆっくりと少女を降ろす少年。降ろされた少女はさっそく感化されたのか、見よう見まねのハイキック(ローキック)っぽいものを少年の太ももに当てた。そして鋼の筋肉に負けた華奢な脚に痛みを覚えてうずくまる。そしてそれを気遣う少年にまた、喚き散らしている。
彼ら少年少女は内輪もめで気が付いていないようだが……。
その周囲一帯は今、現在。
深紅に染まっている。
「――――耐久テストだ、受けてみろ」
そこに咲くは紅蓮の車輪。明滅の魔術師【ジェット=ロイダー】が魔銃の取っ手を空に向け、大きく円の動きを重ねて描くことにより、彼の頭上には高速回転しながら電流を迸らせる“巨大な火炎の輪”が出現している。
隻腕の魔術師は機械的な杖を振り下ろした。
回転する熱波の奔流は雷鳴をまとい、空を焼き、地を焼き――そして機械獣の巨体を包み込む。
余波で飛び散った火の粉が草原に火を残す。扇状に燃え盛る草原。テントの1つも巻き添えを食らって焼け始めた。
轟々とした燃焼の音。盛る火炎の中、黒鉄の怪物はゆっくりと……変わらず、歩みを止めない。
『……効かない。そんなもの、効かないし……驚かない』
まるで無傷。邪魔そうに火の粉を振り払い、巨魁は問題ない様子である。
魔術師は赤茶の前髪をすいて「だろうね」と皮肉に笑う。彼が手にする杖の取っ手を「コツン」と草地に落とすと、それまで燃え盛っていた草原の炎が一斉に消えた。何事もなかったかのように……とはいかない。テントや草原が燃えた事実は変わらない。
『逃げられない……これは速い、もっと速くできる……だから潰されろ、全員……だ』
機械獣から響く音声は一定の音調であり、それを操るものが人間であるのか不安にさせる。おそらく搭乗者もまた、兄と同じく異常な精神にあるのであろう。
機械獣は屈んで歩みながら再び四足歩行の構えをとろうとしている。速度を得るためらしい。
「・・・・・ハァ~ァ、やれやれ……」
大技だったはずだ。火炎の大輪を放ち、それがまるで通用しなかった魔術師、ジェット=ロイダー。
ジェットは「ふぅ」と一息吐くと……何か、気恥ずかしそうに右側を向いた。
「……なにしてるのよ。効かないって、それはあなたが一番解っているでしょ?」
左側から声が聞こえてくる。その声はこれまでの彼の人生において、最もよく聞いた声である。聞きなれすぎて、たまに抵抗したくなるくらいだ。
「いや、なんか……整備不全っぽいし? まぁ、そりゃオレがいないからなぁ……だからもしかしたら……ってさ」
「ふぅぅぅん……本音は??」
「や、本音だって! マジマジ、ちょっと試したくって……!」
「ジェット……無駄な抵抗はよしなさい」
【ミリストリア】という女性はどうにもジェット=ロイダーにとって色々な意味で弱点らしい。だいたい、男の抵抗はいつも無駄に終わるのである。顔をそむけたまま、ジェットは表情を苦くする。
「・・・だってよ? できれば避けたいっていうか……なんつーか、こんな奴の前で見せたくねぇっつーかよ。だからさ、本当は隠密に動いてコイツを先に起動させてだな――」
「…………何、イヤなの? そんなに私とは“したくない?”」
「そんでオレが乗って・・・・・え゛ッ??」
「はぁ~~~ァ…………悪かったわね。もう私なんて、あなたにとっての適正年齢ではないんだものね? いいわ、知らないから。勝手にしてよ」
「い、いや……あの、ミリスさん?? なんか勘違いってか、深読みしすぎてません??」
ミリストリアはすっかりご機嫌を崩した様子を見せつけ、顔を逸らして腕を組んだ。その気配にようやくジェットが顔を向ける。彼女の方を向いて、誤解を解こうと必死になる。
「お、オレは……な、なんかよ! お前、昨日っからそんなん言うけどな? あるわけねぇだろ、このオレが……オレがっ!! お前以外を……なぁ!?」
「・・・・・ぷふっ、うふふふふ! やっと、こっち見たわね♪」
「アっ――――なっ、なんっ!?!?」
「バカね。こうして顔を合わせなきゃ……“できないでしょぅ?”」
「・・・・・お前なぁ。どーしてこうも女ってやつは――」
「あら。あなた今、女性を――」
「だわぁぁぁぁ!!! こんな時に上げ足取りやめろってぇ、もぉっ!!」
「ふふふ。ほんと……いつまでも変わらないわね、あなたって」
せっかく向けた顔を背ける。というか、身体ごと背いた。イラついて杖の取っ手で頭を掻いている彼の姿を彼女が愛おしそうに見つめる。
機械獣が迫る。巨体が鋼に陽光を反射し、迫りくる。
間近になる人工の怪物、その影の中。
顔を背けた“男”がため息と同時に振り返る。
少し怒り顔だった男は虚ろな表情の“女”を見て、微笑んだ。
大事な得物である機械的な杖――マスケット銃を落とす。
左腕しかない彼は同時にできないからである。
銃を抱えていては……彼女を強く、抱き寄せられない。
陽光を塞ぐ怪物。鳴り響く駆動音は2人の世界に聞こえない。
失神状態で引きずりまわされた狂人は未だ意識を取り戻すことなく。
正座して何故か謝罪の姿勢にある少年。呆然と、魔術師の奇跡を思い起こしている。
正座する男を背にして胡坐をかく少女。ふと見た艶ある光景に引き込まれる。
「大事なものは決まっている。オレが本当に護れるのは1つだけさ……」
隻腕の|男|が強く、彼女の身体を抱き寄せた。
「嬉しいけどね。護られるだけなんてイヤよ。私だって、あなたを――」
恍惚の|女|はやさしく、彼の肩に手を回した。
ツバの広い帽子が草地に落ちる。
「愛してるぜ、ミリストリア。それだけは疑わせない。オレはあの頃から……ずっとお前だけを見ている。・・・それだけはマジ、言っとくからよ!!」
――斬光の怪物―
ピラース ―PILLERTH――
「ハァ・・・あのね、本気で疑うわけないでしょ? ただ、こっちを……私を見てほしかっただけなんだから。ああ、物理的にもね??」
長髪が露わとなった魔術師の身体がひび割れて、膨れ上がる。全身が砕け散る予兆かのように入った亀裂に光が筋となって迸る。
同時に……太陽がその姿を“消した”。それまで快晴であった草原は一瞬にして真っ暗闇となり、誰も何も見えないほどに――夜ですらない、真の暗がりに包まれる。
『??? なんだ……見えない、映らない……どうなっている、兄者?』
機械から反響する音声が聴こえてくる。暗闇の中で機械の獣を駆る者は縋っている。彼は困った時、いつも指示を仰ぐ癖があるからだ。
ただし、その指示をくれる人物は今、暗闇のどこかで昏倒している最中である。返事は無い。
「えっ、なになになに!? ……あっ!? こ、これって……もしかして!?」
「あんれまぁ!? なにさ、目が見えなくなっちった!? 目、目は開いてっか?? おおい、アルフィースつぁん、無事だか!?」
困惑する少年。少女にも困惑はあるが……彼女は“同類”として察するものがある。
心の怪物――真に怪なる物が今生に現ずる時。必ず、それには兆候が存在すると実体験から知っているからだ。
それぞれが混乱する暗闇の中。「パリパリ」と、何かが弾ける音が聞こえてくる。
『……??? な、なんだ……なんっ――――なんだ、これ?? おい、兄者……兄者教えてくれ、答えてくれ! ラザはどうしたらいい??』
機械獣の中。起伏のない声の主はついに感情を露呈させた。
恐怖によってである。彼はまるで予測できず、想定もできていない“存在”が……それだけが唯一暗闇の中に確認できたことに怯えている。
操縦席から映し出される存在……それは一面の漆黒にあって、唯一青白く輝く、異物。
『マッズイ……久しぶりすぎて制御しきれるか解んねぇや。まぁ、“やっちまったら”……ドンマイ、勘弁な?』
機械を通した音声とはまた異なる。それは確かに人間の声ではあろうが……聞くものの耳に強い違和感を与える。まるで、人間ではない何かが話しているかのような……。
具体的には“化け物”であろう。それは青白く輝く存在で、二足歩行の生物かのように立っている。光り輝いていて判別難しいが……タテガミのようなものが生えた頭部から常時稲妻が迸っており、“無いはずの右腕”も歪な形状ではあるものの、禍々しく再生されているようだ。
動物に見立てれば直立したライオンといった具合であろうか。それも巨体だ。
機械獣ほどではなくとも、5~6mはあるだろう。その大きさと外見も安定しておらず、まるで『電流を集めて留めている』かのように揺らいで落ち着きがない。
亡霊にしたってあまりに荒々しい。そんな未知の存在が何かをしようと、その身を屈めた。
『あ、兄者――――兄さん……兄ちゃん!? なんかいる、目の前になにかがいるんだよ!! 兄ちゃん、どうすればいい!? 助けてくれ、教えてくれぇ!!』
機械獣は錯乱し、闇雲に突進した。
暗がりを泣き叫びながら突進する巨魁。そこから放たれる声は、刹那。
絶叫へと変わる。
『ギャッ――!? ―――ぉ―??!! ――――ぁ――!?!!? ―――――ッ!!!!』
そして、その絶叫は誰にも聞こえない。何故ならば、精いっぱいの絶叫など軽くかき消すほどの“連続した雷鳴”が周囲一帯に轟き鳴り響いているからである。
それは連発する爆発音と言ってもいい。ともかく、あらゆる音を粉砕するほどの音波が続く。
同時に発光。眩いばかりの閃光が雷鳴の数だけ明滅する。暗闇と閃光が交互に視界を襲うので割とたまったものではない。
「ひぎゃぁあぁあああぁ!!? こわいこわいこわいこわいっ、こわいよぉぉぉお!!!! 誰か助けてぇぇぇぇぇ!!!!!」
「なんしたぁあああ!?!?? わがんね、わがんねけどぉっ……アルフィースつぁんここさね!? うぉぉぉぉぉぉ、ヨォォォォシヨシヨシヨシヨシ!!!! オラが護っぺやぁぁあああ!!!!」
破滅的な状況に怯えた少女が泣きわめくが、それも誰にも聞こえない。聞こえないが……少年は手探りで少女の身体を掴み、やわらかく抱き寄せた。
怒られたって構わないと、覆いかぶさるように彼女を護っている。
そうして……10秒程度であろうか。そんな状況は続いた。
ピタリと、雷鳴と爆発が鎮まる。雷鳴の終わりと同じくして、辺り一帯は太陽の光を取り戻した。
異常な状況が終わってみれば……そこにはうずくまる少女とそれに覆いかぶさる少年。あと、サングラスを掛けて腕を組んで立つ女性に、杖と帽子を拾っている青年。それと、見る影もなくボロボロになった巨大なガラクタと……変わらず大地に伏せ泡をふいている狂人の姿がある。
「ふぅ……あっ!? やっちまったかコレ?? おぉ~~いっ、そこの弟くん、無事かぁ!?」
すっかり元の姿であるジェット=ロイダー。彼は気まずそうにボロボロの機械獣へと近づく。四肢がもげ、抗魔鋼の外殻は内外から弾けて穴が開いている。駆動のものとは異なる煙がプスプスと立ち昇っており、滅茶苦茶な有様だ。
操縦席にあった男は……幸いというべきか。そこそこ焼け焦げてはいるものの、息はあるらしい。ジェットは「よかった、生きてた・・・んじゃ、捕縛すんべ!」と安堵した様子でそれを縛り上げた。
その光景を眺めていたミリストリアはサングラスを外して「ホっ」と息を吐く。そして振り返って「あっ」と零した。
「うぉぉぉっぉお!!! め、目がチッカチカして……んでも、オラが護るんだ!! 今度こそ、オラがアルフィースつぁんさ、護るんさぁぁぁあ!!!!」
「ぎゃぁぁぁぁんん!! め、目がチカチカするよぉ!! こわいよ、ミリスの怪物こわいよぉ!!! なんでこんなこわがらせるのぉぉぉぉ!!??」
そこでは少年と少女が互いに叫び声をぶつけあっている光景がある。
「・・・しまったわね。事前に言うのと……あとコレを渡すのを、忘れちゃった☆」
ちょっと気分が高まっているミリストリアは手元にあるサングラスを気まずそうに眺めた。
草原には爽やかな風が吹いている。
ひと段落……といった具合で、草原は落ち着いた情緒を取り戻した。かつてここに栄えたシャラーナの採掘場はここにようやく、本来の人たちによって管理されるであろう。
うずくまっていた少女は「ハッ」として我に返り、そして覆いかぶさっている存在に対してしばらく考えた。
考えた末に……彼女は「なんだこの無礼者!?」とばかりに激高し、命じるのである。
「暑苦しいッ!! このっ――――“跳んでいけぇぇぇ”!!!」
命じられて、自らの脚力によって草地から飛び立ち、森の中へと飛んで行った少年。
彼は大空にひるがえりつつ、思う。
(……ああ、えがった。アルフィースつぁんさ、元気いっぱいで……ほんに、えがったっぺよ……)
第12話 「オレってマジモンスター(8)」 END
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:帝都手配手記参照――第二種手配「シュライザー兄弟」について
シュライザー兄弟は帝都生まれの生粋なる犯罪兄弟である。手配の種別としては“逸脱級”であり、領域内外関わらず社会への脅威となりえる存在だ。彼ら兄弟は特に審議不問とし、生死問わずの解決を国家として望まれている。特に兄弟の長兄である【ブリューゲル=シュライザー】は正しくそうあるべき者であろう。
ブリューゲルは一般家庭にて何不自由なく育ったとされるが、最初に殺人を犯した相手は幼馴染の友人であった。当時の年齢は互いに8才。
殺害手段は溺死であり、動機は不明。「やっぱり死んじゃった」との発言から計画性と殺意はあったと思われるが……それを罪とは微塵も思っていなかったらしい。殺人が罪であるということは理解できていたようだが、自分の行いが罪に問われる意味は理解できないという状態であった。
彼はあっさりと拘束され、若年・精神性配慮により施設へと送られた。更生を期待されてのことだったが、一週間も経たずに逃走。その後、ブリューゲルは両親を惨殺してから各地を転々と移り住んだらしい。
この時期の詳細は不明であるものの、帝域北方のエルテンにて聖圏の施設に囚われたという情報もある。
そうして……ある時期から彼は帝域内外問わずに即席の犯罪集団を結集し、集落や町を荒らしては姿をくらます……といった犯罪行為を繰り返し始めた。どうしたことかブリューゲルは社会的に破綻した人格でありながら特定の人間を惹きつける才能があるらしい。また、稼ぎへの嗅覚も鋭いという。
突出した犯罪者である長男に比べて次男である【ラザワック=シュライザー】はあまり特異的ではない。
この気の大人しい男は常に兄と行動を共にしてはいるが、主体的な発想と言うものが著しく欠如しており、兄の指示と兄の危機以外に目立った行動はおこさない。口数も少なく、恐怖と暴力によって他者をコントロールする兄とは異なり、そもそも他者を従えることがない。
あくまで彼は尊敬する兄に従うのみであり、なによりも彼は崇拝する兄の行いを“良いことだ”と信じて疑わない。そして長兄もまた、この愚鈍な弟だけは“仲間”と認識しているようで、特段と贔屓するわけではなくとも同格……友人のように接している節がある。
……とは言え、そうそう兄ブリューゲルが危機に陥ることなどなく、基本的には彼の“仕事”を支える程度に留まっているのがラザワックという男だ。
:参照終了
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