序文
この作品は基本的に「一話完結」の「短編」を不定期に「連載」する形の作品となります。ご了承下さい。
魔力の存在が明らかになってから長い年月が流れた。その魔力の対極に位置していたはずの科学は、やがて一つの道へと重なった。
先端技術の最高峰、魔工学。
魔力を科学の力で制御し、その力を引き出す技術。
元来、素質が無ければ操れなかった魔力を、誰もが科学を媒介として扱えるようになって行った。
人間の性なのか、やはりその魔工学は兵器へも転用されて行く。
上手く扱えば強力な武器となって来た魔力を、誰でも簡単に扱える魔工学は、武器に転用するには最適だったとも言える。そうして絶対的な武力を得た人間達は、魔力の存在によって生まれる魔物をも退け、繁栄を極めていた。
だが、魔工学の存在はただ繁栄を与えただけではなかった。
魔工学を手に、人間同士の紛争は激化し、表面的には平和なものの、水面下では争いが絶えなかった。
政府が手に終えぬ者も多数現れ、その数は増加の一途を辿る。だが、その者達を標的に政府から報酬を得る者達も現れた。
賞金稼ぎと、それだけではなく様々な仕事を受ける便利屋である。
魔工学の結晶と言われながらも失敗作の烙印を押された武具を携え、どんな依頼でもたった一人で完璧にこなす。
ロウン・ウルフ。
彼は、そう呼ばれていた。