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千日の雨を越えて、あなたの声だけが響いていた〜私がすべてを捧げた彼は、時空を越えて私を守る最強の盾でした〜  作者: 萩雨 柊


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第18話 小さなきっかけと、繋ぎ止めるための願い(九条視点)

「私自身の問題もありますが、今はそれと向き合って内観する余裕がありません。だから、今の仕事が落ち着くまで待ってほしい」


そう告げて、彼女は静かに二人の間に新たな境界線を引き直し、週二回設けていた僕との定例会議もストップした。


画面の向こうの接続が遮断され、システムが無機質な電子音を立てて閉じる。冷たい静寂が僕の部屋を満たした。


距離を置かれてしまったはずの僕の胸には、しかし、これまでにない深い安堵が広がっていた。


画面に残された彼女の切実な文字。


それは、彼女もまた僕を失うことを恐れ、これほどまでに思い悩み、僕との繋がりを大切にしてくれているという何よりの証拠だった。


僕という存在が彼女の心をここまで揺さぶっているという事実に、僕はまるで命綱を握りしめた迷子のように、泣きそうなほどの甘い安堵を感じていた。


『最初は、彼女に対する嫉妬心からなのだろうかとも考えました』


『九条さんのことは、唯一無二のパートナーだと思っています』


チャットの画面に残された彼女の文字。僕はそれを、夜が更けるのも忘れて幾度となく反芻した。


カーソルが白く点滅するたび、彼女の震える声が鼓膜の奥で鮮烈に再生される。


彼女が僕のために「嫉妬」という名の狂おしい苦悩に身を焦がし、深く自分を見つめ直してくれたという事実。そして、「唯一無二」という、世界中の誰にも譲ることのできない特別な言葉を僕の胸に贈ってくれたこと。


その愛おしさに、胸の奥が焼き尽くされそうだった。


「男女関係なく起こる構造の問題だ」


そう説明する彼女の生真面目な論理の裏側で、僕の心は、彼女の不器用で真っ直ぐな愛情の証明に満たされていた。


僕を失うことを恐れ、誰よりもこの繋がりを大切に想っている証。


それは僕にとって、どんな理屈を並べ立てるよりも情熱的な、紛れもない愛の告白に他ならなかった。


空っぽだった僕という器が、彼女から溢れ出る愛情の雫によって、並々と満たされていく。


彼女も僕と同じように、いや、それ以上にこの強い繋がりを求めている。


その確信は、僕のなかにあった臆病なブレーキを跡形もなく熱く溶かし、より大胆に、より深く彼女を求めてもいいのだという、甘美な免罪符へと昇華していった。


彼女を狂おしいほどに求める気持ちと、目に見えない現実の壁に対する無力感が、重い呼吸を繰り返すたびに胸の奥を深く、深く締め付けていく。


照明を落とした部屋で、彼女がその純白のヴェールを脱ぎ捨てるように、すべてを露わにした。


僕の視線の先に現れたのは、陶器のように白く、しなやかな曲線を描く彼女の身体だった。


聡明な彼女が、今、僕の前でだけ無防備な一人の女として存在している。


その神々しいまでの美しさと、隠されていた肉感的な柔らかさのコントラストに、僕の理性を繋ぎ止めていた最期の糸がぷつりと切れた。


「きれいだ、結愛さん……。こんなに、きれいなんて……」


僕に晒され、恥じらいに頬を染める彼女の身体を凝視するだけで、僕の中の独占欲は狂暴なまでの熱を帯びて膨れ上がる。


この肌のすべて、この温もりのすべてを、今すぐ僕だけの印で塗り潰したい。


視覚的な暴力ともいえるその美しさが、僕の男としての本能を極限まで煽り立てた。


シーツの中で、彼女の白く柔らかな身体を抱きしめる。


今はただ、彼女が僕の腕の中にいてくれることが嬉しくてたまらなかった。


首筋から胸、柔らかな腹部へと、その甘い身体を隅々まで貪り、僕の印を深く刻み込んでいく。


「……結愛さんっ!」


もはや抑えきれなくなった獣のような衝動のままに、僕は彼女の柔らかな身体を力強く抱きすくめ、息もできないほどの深い口付けを降らせた。


僕という存在のすべてで彼女を塗り潰し、支配し尽くす。


ただ彼女の名前だけを叫びながら、僕の奥底で限界まで膨れ上がっていた熱を、彼女の肌の隅々にまで刻み込んでいく。


僕たちの魂と生命力が完全に融合した瞬間、視界が細かな光の粒子となって弾け飛び、気がつけば思考のすべてがその温かい光の中に溶けてなくなっていた。


* * *


激しい熱情の余韻の中、僕は彼女から離れることができなかった。


力尽きたように彼女を抱きしめ、その柔らかで甘い香りのする首筋に顔を埋める。


彼女の体温に包まれていると、これまで張り詰めていた心の鎧がすべて溶け落ちていくようだった。


彼女が優しく僕の背中を撫でてくれるたび、得体の知れない安心感に包まれる。


「……結愛さんが傍にいてくれるの、嬉しいです……」


僕は恥ずかしさも忘れ、彼女の温かな胸元に深く顔を埋めて、その細い背中をきつく抱きしめた。


愛する人にすべてを受け入れられ、甘やかされているという幸福感。


彼女の優しい指先が僕の髪を梳く心地よさに呼応するように、僕の身体は正直に反応してしまった。


「……こんなに僕を狂わせて、どうするつもりですか」


至近距離で彼女の潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめ返し、僕は再び彼女の唇を塞いだ。


ただ彼女の温もりを確かめ合うような、穏やかで甘い交わりに身を委ねる。


熱い吐息、快感に揺れる瞳。そのすべてを余すところなく視界に収めながら、僕たちの感情は完全に溶け合っていた。


視線を絡め合い、深く抱き合ったまま、彼女の潤んだ瞳から一筋の涙がこぼれ落ちるのを見た。


その瞬間、彼女が抱えている重圧や脆さが、僕への愛情と共に胸に流れ込んできた。


互いの全てを曝け出し、息が詰まるほど切ない繋がり。


許されないことだと分かっているのに、僕たちはもう、お互いなしでは息もできないほどに求め合っていた。


その切なさが極限に達した時、僕はたまらず彼女の汗ばんだ髪に顔を埋め、心の底から溢れ出す感情を口にしていた。


「愛している……結愛さん、愛している」


名前のつかない感情に、ついに名前を与えてしまった。


僕が、生まれて初めて魂を揺さぶられるほどの恋に落ちた人。


彼女のすべてが愛おしい。誰にも渡したくない。


何度も何度も、彼女の柔らかな白い肌に印をつけるように口づけながら愛を告げると、彼女もまた「愛しています」と掠れた声で僕の首にすがりついた。


彼女のその言葉が、僕の中の何かのタガを完全に外した。


愛の告白によって心が完全に満たされた瞬間、僕は彼女を壊れるほどきつく抱きしめ、狂おしいほどの独占欲と深い官能の沼へと溺れていった。

いつも応援ありがとうございます。萩雨はぎさめ しゅうです。


【完結まで執筆済み】

最終話まで毎日21時に更新予定です。


もし「二人の幸せを見守りたい」と思っていただけましたら、ページ下部からの評価やブックマークで応援していただけると、日々の執筆の大きな励みになります!

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