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千日の雨を越えて、あなたの声だけが響いていた〜私がすべてを捧げた彼は、時空を越えて私を守る最強の盾でした〜  作者: 萩雨 柊


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第11話 古都の夜景と、溢れ出す愛おしさ

僕は彼女の細い手を優しく引いて、東山の静かな高台へとエスコートした。

夜の京都の空気は、昼間の喧騒が嘘のようにひんやりと澄んでいて、心地よい夜風が僕たちの頬を慈しむように撫でていく。


辿り着いた高台の展望スポットには、僕たち以外に人影はなかった。

目の前には、言葉を失うほどに美しく、きらめく古都の夜景がどこまでも広がっている。

まるで宝石箱をひっくり返したかのように、琥珀色や真珠色の柔らかな街の灯りが、暗闇を美しく彩っていた。

格子状に広がる碁盤の目の街並みが、銀河のように優しく光の帯を伸ばしている。


「わぁ……すごく綺麗……」


彼女は目前の絶景に、まるで少女のように瞳を輝かせ、小さな歓声をあげた。


街の灯りを反射して、彼女の澄んだ瞳が星のように美しく輝いている。

その無防備な表情があまりにも愛おしくて、僕は夜景よりも、ただひたすらに彼女の輪郭を見つめていた。僕の隣で、こんなにも清らかな笑顔を浮かべてくれている。


その事実だけで胸が熱く締め付けられ、彼女のその無防備な輪郭を今すぐ僕の腕のなかにすっぽりと隠してしまいたいという、じりじりとした熱が静かに視界を支配していく。


不意に、少し強めの夜風が吹き抜け、彼女が「少し冷えますね」と小さく肩をすくめた。

その瞬間、僕は迷うことなく一歩足を踏み出し、彼女の華奢な身体を背後から包み込むように、僕の両腕でゆっくりと、けれど確かな熱を持って抱き寄せた。


「え……、九条さん……?」


驚いて小さく息を呑む彼女を、僕は自分の胸の中へと、慈しむように引き寄せた。

薄い衣服越しにダイレクトに伝わってくる、彼女の心地よい体温と、トクトクと刻まれる小さな心臓の鼓動。

僕の腕の中で彼女の緊張がすっと解け、その小さな背中を僕の胸へと完全に預けてくれる。


彼女の髪から漂う甘い匂いがふわりと鼻腔をくすぐり、ひんやりとした夜気の中、重なり合った二人の体温だけが確かな熱となって空間を包み込んでいった。


「……こうしてたら、少しは温かいでしょう?」


「はい……。すごく、温かいです……。九条さんと一緒にこの景色を見られて、私、本当に幸せです」


僕の腕に小さな両手をそっと重ね、愛おしそうに声を震わせる彼女。その甘い響きに、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


腕の中にすっぽりと収まるその温もりを、一生誰にも触れさせたくないという、じりじりと焼けるような熱が静かに喉の奥を塞いだ。


僕は回した腕をゆっくりと解き、彼女の身体を優しく反転させて正面から向き合った。

夜景の柔らかな光に照らされた彼女の頬は、微かに桜色に染まっている。


お互いの吐息が触れ合うほどの至近距離で、二人の真っ直ぐな視線が深く深く交わされる。

彼女の瞳の奥にある、僕への純粋な信頼と、甘い好意。

それを見つめているうちに、胸の奥でくすぶっていた熱が、切ないほどの渇望へと変わっていった。


「結愛さん……」


囁きながら、彼女の柔らかい頬を両手でそっと包み込み、ゆっくりと唇を重ねた。

最初は触れるだけの、羽のように軽い口付け。けれど、お互いの温もりが交わった瞬間、堰を切ったように想いが昂っていく。

優しく触れるだけだった唇を、引き寄せ合うようになぞり、さらに深く重ね合わせた。


吸い込まれるような吐息のなか、お互いの唇をゆっくりと開き、吐息を分かち合うようにじっくりと重ね合わせる。

重ねるごとにじわじわと熱を帯び、舌の先が彼女の甘い内側へと滑り込み、切なく、そして濃厚に絡め合っていく。


彼女の甘さに触れれば触れるほど、自分の内側にある空洞が浮き彫りになり、息継ぎすら惜しむように、すがりつくような口付けへと変わっていった。


密着した身体の境目が曖昧になるほどきつく抱きしめ、お互いの熱を貪り合うように求め合う口付けは、次第に甘く深い融解のなかへと溺れていった。


このまま時間が止まってしまえばいい。ただ彼女を僕の優しさで溶かして、魂ごと一つに重ね合わせてしまいたい。


そんな狂おしいほどの愛おしさに、僕は完全に満たされていた。


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