間章 3分クッキング 〜 回復ポーション 編〜
錬金する際に不純物や埃が入らないように、毎日の掃除を頑張って清潔に保った僕の部屋。
作業机の背後にある寝台にダイブしたい衝動に必死に耐えて、道具調合の準備を始める。
「はい、それでは回復ポーションを作っていきたいと思います。準備はいいですか?」
「はーーいっ!」
「僕の言うことをきちんと聞かないと爆発したりするかもしれないので気をつけてください」
「ば、ばくはつするの? そーなってくると、ムゥもさんかするかどうか、かんがえさせてもらうけど」
さすがに爆発したりはしない。ただ油断すると危ないので注意のためにもそう言っておく。
「言うことを聞いていたら大丈夫です」
「わかった。それなら……てつだう!」
テレテッテッテ、テレテッテッテ、テレテッテテッテテテテテテ〜♪
(真紅の幕が上がり、ポップな見た目の小鬼たちがダンスを踊る)
【回復ポーションの作り方】
「はい、今日は冒険者たちの必需品、これさえ持っておけば安心。回復ポーションを作りたいと思います」
「それでムゥはなにをしたらいーの?」
「じゃあ、これを持って」
「はーーい!」
材料の書かれたボードを手渡す。
「材料は回復草一束、スライムの粘液が200ml、大蜜蜂のハチミツ大さじ3杯です」
「ですっ!!」
僕に続いて元気よく言う。
「つぎはなにする?」
「ではまず、採ってきたばかりの回復草を細かく刻んで、布で包み、力一杯絞ります」
僕がヒール・フラワーを刻み、ムゥに渡す。
「ふんぎぃぃ。ぐぬぬぬ。あっ! なんかでたっ」
「はい。すると植物らしい青臭さのある深い緑をした汁が垂れ出してきます」
「ホントだ! くさっ。うぅ。てがくさくなったぁ」
植物の汁で緑色に染まった手を洗面所に洗いに走っていく。
「くんくん。うーー。まだにおいがのこってるぅ」
「カセットコンロに小鍋を乗せ、火にかけます。そうして抽出したヒール・フラワーの絞り汁をスライムの粘液、大蜜蜂のハチミツと一緒に鍋に入れます」
小皿に用意してある材料をひとつずつ入れていく。
「弱火でゆっくりとかき混ぜていきます」
「ムゥがまぜる!」
小台を持ってきてムゥにも手が届くようにしてあげる。
「初めは粘度の高い液体が木べらで混ぜていて、抵抗のなくなるくらいサラリとしたら火を止めます」
「わあ! きれいなみどりいろになった!」
鍋の中が翡翠緑に輝きだす。
「冷蔵庫で一晩寝かせたら、お手製の回復ポーションの出来上がりです」
「ふっ。ムゥがつくったぽーしょん」
テレテッテテ、テレテッテテ、テレテッテテッテテテテテ〜♪
(再び現れた可愛らしいゴブリンたちの踊りとともに幕が降りる)
手間はかかってしまうけれど、市販のものを買うよりうんと安く済むのだ。それに手作りでも傷を癒す効果はほとんど変わらない。
こうしたひと手間がお金を貯めるのに役にたつ。
今の僕は貯金に燃える守銭奴と化していた。
(ゴシゴシ)
「ぬわぁっ! ムゥ! さりげなく僕の服で手を拭いたでしょ!?」
「ううん。ムゥ、しらない。それにムゥのてはきれーだもんっ!」
「悪い子にはこうだ!」
ヒール・フラワーを絞った布を持って追いかけ回す。
「きゃーー。くさいぃーー」
「ロイさん、何してるんです?」
扉が開いていて一部始終をノートさんに見られていた。
「えーーっと、何してるんでしょう……?」




