第02稿06話~これよりここを仮拠点とする2~
__魔女|勇者の部屋
「全く、ロックオン君は人使いが荒いわ」
「結界でぐっすりです。2人とも」
ユウとソルが一緒に寝ている。別にそういう関係ではないけど。
結界を張ったらソルが眠くなってユウの隣で寝始めただけ。
結界を張るのに私とココノが掛かりきりになるから一応、護衛として置いたけども。
結界の中じゃ何も起きないし問題ないわね。
「ねぇ、スノウ。あそこ見て」
「あれではまるで死神ね」
大鎌を持って地面を切り裂いている。凄い威力だ。あんな強化の術まであるとは忍術と言うモノは想像を超えてくれる。
「魔力と体力を混ぜてるんだったよね。魔力の籠った魔剣みたいなものだろうから、あの威力も納得できるね」
「そうね。トキトー領に着いたらトキトー君に是非とも書庫を見せてもらわなきゃ」
「私も興味ある。ユウはソルに任せて私も見たい」
「一緒に見ましょうね」
「超級の回復魔術の書物あったら良いなぁ。あわよくば神級!」
この世界の魔術書はどいつもこいつも自分の得意な魔法を書いた物しか遺さない。
賢者と自称する人物の魔法書は賢者と言うだけあって書いてある魔法の種類も豊富だ。
魔法の区分は結構アバウトで初級、中級、上級、超級、神級がある。
この世界は職業によって得意な属性が決まっている。それは魔力の出力が職業によって変わるからと認識している。
属性は火、水、土、風、光、闇、無。更に発展属性として炎、氷、木、雷、気、重があり更に他の特殊な属性もある。
私の職業、魔女の得意属性はあらゆる属性が得意属性なので魔術書を読めば大体使う事が出来る。
聖女のココノは光と気に特化した職業で回復させる魔術の効果が職業特性で跳ね上がる。アンデッド系はヒール等でダメージを受けるので回復量の上がったエリアヒールで撃たれたらそこらのゾンビやスケルトンは即昇天する。
「むにゃむにゃ」
「すやすや」
現在ベッドで寝ている二人は魔法よりも物理で殴るタイプで勇者であるユウは武器に魔法の力を付与するエンチャント系の魔法、戦乙女であるソルは肉体強化系の魔法が得意である。
勇者は魔法にも精通している職業の筈だけどユウは不得意らしいのよね。
「転生してからユウが脳筋になってる気がするよ」
「でも本当に時任君と会うなんてね。あの子の勘は人智を超えているわ」
時任 遊。前世ではそんな名前だった筈。転生する直前に見た気がするけど。悠がどうしてあそこまで依存しているのかは分からない。
転生する原因となった死因について考えるが良く思い出せない。
転生の間のせいなのか、それとも死んだ時に即死で思い出せないのか。どちらかしらね。
『……思い出したい?』
いいえ、別に思い出す必要はないわね。
『転生の間の効果打ち消しならワンド達じゃなくアルカナ担当の人達なら出来るよ』
それは……どうやって?
『ワンド達は新米だから方法良く分かってないの。聞いてきても良いんだけどなるべくそれは禁止されてるから。だから渡された説明書読んでるんだけど、読み終わる気配がしないかな』
いいえ、構わないわ。調べてくれるだけでありがたいことよ。誰かと親密になれば良いのよね。
『フール様なら絶対知ってると思う。後はジャッジメント様とか』
フール様って遊び人の担当よね……トキトー君と仲良くなったら私の命が危うい気がするわ。
「スノウ?」
「何かしら」
「魔力に乱れが出てたからどうしたのかなーって」
「あぁ、いえ。気にしなくて良いわ。ちょっと信託スキルで秘密の話をしていたのよ」
信託スキルのリンク。ワンド様の説明では、仲良し度がお互いに高かったら出来ると言っていたわね。
勇者PTのメンバーは全員転生前も仲良しだったので勇者PT内は信託スキルのリンクを繋げられた。
『早く繋げられそうなのはロックオンって人かノーライルって人かな』
あぁ、遊び人よりも遊び人してる2人ね。
『確かに……ロックオンって人はともかくノーライルって人は軽薄そう』
本当の事だけれど可哀そうだわ。女性で味方に引き入れられそうなのは居ないのかしら。
『研究組?と接触してみれば良いんじゃないかな。もしかしたら良縁あるかも』
成程、その方向で行くことにするわ。