第02稿06話~これよりここを仮拠点とする1~
__遊び人|仮拠点A
あの後、勇者は女子勢にお風呂に連れてかれたお陰で解放された。
部屋で休んでいると頬を軽く叩かれた。
目を開けると誰も居ない。いや、暗くてわからないが忍者に起こされたのだろう。
後ろを振り向くと棒人間が居た。心して無かったら驚いていただろう。
と言うか真夜中にふと起きたら人型のスライムが居るとか普通にホラーである。
棒人間が窓を開いて形が変わる。なんだ。何がしたいんだ。
近寄ってみると身体に纏わりついてきた。人肌の温度で吸着感が凄い。良くこれで人の身体に憑りつかせてバレないもんだ。
『把握されて無かったらバレないのかも知れないな』
あぁ、俺が認識してるから違和感がするのか。
で?装着したが。どうなるんだ?
「変わり身の術でござる」
目の前に忍者が居た。待て待て、どういう原理なんだ。周りは外、グラス先生が建てた屋敷がここから見える。部屋から一瞬でここに連れてこられたのか?変わり身の術強くね?忍術強くね?
部屋から結構距離があるのに射程距離が長いな。俺の状態異常魔法よりも距離あるぞ。
と言うか変わり身の術って自分以外も指定出来る……もしかして、この血製スライムも自分としてターゲット指定出来るのか?
いや、自分と入れ替える訳だから。ん?俺がスライムに包まれる必要はあったのか?
「呼び出し方が雑だよカタナ」
「おっと、これは失礼でござる。どうやら、なりふり構わず追いかけてきた様でござるな」
「俺が?」
「エネミーがでござるよ」
「あぁ、そういう。と言う事はクラインとか言う王子の手先か?」
「分からないでござるが。哀れ、王宮騎士を捨て駒にしに来たでござるよ」
忍者の指さした方を見る。うむ、暗すぎて見えん。
「暗闇の中から一気に殺る予定でござるからトキトー殿のする事は無いでござるよ」
「しかし、34人か。大隊長1人に隊長3人の10人編成かな。王宮騎士の制服着てるし。少しは隠れる事を覚えた方が良い位には頭弱いんじゃないかな」
「この暗闇の中、奇襲をかけるつもりなのに白地に金のマント羽織った甲冑はちょっと装備ミスってるとしか思えないでござるね」
「学園長が言うには制服をパクってる可能性もあるって言ってた」
「学園長殿の情報なら正確でござろうな。では王宮騎士モドキを蹂躙するでござるよ」
「今回はどうするの?」
「今回はトキトー殿に俺つえーと言うモノを実体験してもらおうと思うでござる」
「え?俺?」
「そうでござるよ。トキトー号発進するでござる」
「嘘、か、え、ま?」
身体が勝手に動き始めた。え、マジで俺が行かされるの?
「あ、取り敢えず翼を生やして空を飛ばすでござる」
……は?いやいや、人は空を飛べるように出来てないぞ。ちょ、身体が浮いていく!降ろして降ろして。
『人、本当にテンパった時は声に出ないもんだなー』
そんな呑気な。あ、ちょっと落ち着いたかも。
てか、これは俺TUEEEじゃない。絶対違う。マリオネットになった気分だ。
身体はどんどん天に舞い上がって行く。
止めてー、これ以上は止めてー。と思ったら地上に向けて急下降していく。
ヤバい。吐きそう。あ、目の前が真っ赤に。これ聞いたことある。
レッドアウトだったっけ。重力の影響で頭に血が登る奴。
地面に降り立つ。足元の地面が隕石が墜ちたかのようにへこんでいく。
しかし、自分の身体に衝撃が走る事も無く軽く地面に立った感触がした。
眩暈が酷すぎて気のせいかも知れないけど。
「な、何が起きた!!」
「親分!何かが落ちてきたみたいです!」
「隕石か?」
「UFOか!」
「いやこれは、キリングマシーン星人でござる」
「なんだ。この茶番」
UFOはロックオンの発言だった。忍者の声は真後ろから聞こえた。しかも耳元。
手に赤黒い大鎌が生成される。おお怖い。
手が勝手に振られ。地面毎、白いマントの集団が吹っ飛んでいった。ナニコレ怖い。
身体が勝手に舞い上がり大鎌を振るうと無数の針が伸び地面に突き刺さる。
それだけで王宮騎士と見られる集団は全滅した。
「これにて終了でござる」
「……」
喋る気力も起きない。これがグロッキーって奴か。
『その割にはクリアな思考してんけどな』
「あー、トキトー大丈夫?」
「大丈夫に見えるか?いきなり、空に舞い上げられて落されるとか想像にもしてなかったぞ」
「あはは」
「どうでござるか。これがほぼ拙者の視点でござる」
「身体の作りが違う。吐く。」
「ううむ、そうでござるか。では後は拙者らに任せて休むと良いでござるよ」
言われた瞬間、目の前にベッドがあった。いや、もう何も言うまい。疲れた寝よう。




