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異世界美容室  作者: きゆたく
四年目、異世界砂漠開拓編
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緑のリトール、忘年会と新年会


 男祭りとは、大晦日の朝から元日の朝まで続く、男だけの秘密の忘新年会だ。でも女性陣にバレたくないので、アントレンはプランを立てた。まず、朝に突然の魔物の襲来…。慌てて対応する僕達…。強敵との戦いで長引く…。そして翌日の昼過ぎに、傷付き疲れ果てて帰る…。この一連の嘘が、アントレンの考えた天才的プランだ。



「いやー、良く思い付きましたね。流石ですアントレンさん」


「エレーカシ…男だけで飲み食いしたいんだよ…俺はマイが好きだ。でもたまには、男だけでバカみたいに騒ぎたいんだよ!」


「わかるぞ、わかるぞアントレン!俺もいつも見張られてるみたいで…折角、王様を辞めたのに…自由がもっと欲しい!」


「私達もリトールに来て、貴族じゃ無くなったせいか…ターチルドが生活を満喫し過ぎてて…あいつは自由なんだけど、何故か私に自由が少ない…」


「元王様や貴族でも、嫁には逆らえないってか!はっはっは!」


「俺なんて、こっちと向こうに嫁がいたんだぜ?なのにこっちで一緒に住みだして、いつの間にか仲良くなって、俺が孤立してんの…何だったんだよこの十年…」



 皆、色々と溜まってんだな…。でも男だけでこういう話も楽しいよね。元貴族だろうが平民だろうが関係無く、わいわいするのは良い。年齢も気にならないし、リトール皆の関係性が出来てる証拠だ。



「でもこんな事が出来る様になるなんて、去年は思って無かったよ…毎日が大変だったからな…」


「俺もさ…まさかザドー王国の皆と…また会えるなんてな…」


「皆、無理して笑ったりしてたもんな…」



 元々リトールや、この近くの集落で暮らしていた者達が、去年を懐かしむ。この一年で劇的変化だったからなぁ…。



「私もエレーカシやストムさん達に、会えるとは思って無かったよ…絶対に死んでると思ってたからな…」


「俺もまさか、死んだと思ってた娘と再会するなんてな…これっぽっちも思って無かったさ…それに砂障壁が無くなるとも思って無かった…」



 ワーンズさんやタイーフンさんも、感慨深く喋る。お酒も入ってるせいか、皆が少し涙ぐむ。



「キクチ!ありがとう!お前達が来てくれて、本当に助かった!」


「僕も言わせて下さい!ありがとう!そして抱き締めさせて下さい!」


「俺も!」



 皆が僕に感謝をしてくる。嬉しいけど、少し面倒臭い…。酒臭いおじさん達に囲まれ、抱き付かれる。挙げ句の果てに、キスまでしやがった…。まぁ、今日くらいは許してやるか!



※※※



 まだ昼過ぎなのに、完全に出来上がる。まさに、どんちゃん騒ぎだ。



「ったくさ、うちの嫁はいつまで経っても、痩せねぇんだ」


「うちもさ。お酒を減らせとか言うくせに、自分の体重は減らす気が無いんだ」


「俺達が苦労してるのを、全く見ようとしないんだよな」


「そうだっ!」



 いつの間にか、嫁達の悪口合戦になってた…。こんな日ぐらいは、許してやって欲しい。



「最近キクチさんに髪切って貰って、なんか色気付いたのか…痩せる努力するんだとさ」


「俺んちもだ。先に胸を大きくしろっつーの」


「作物が豊富になったせいか、皆太ったよな…」


「わかるわかる!昔は皆がむしろ痩せてたのにな!」



 確かに体型は、皆変わったと思う。良い意味でね。作物不足で栄養が足りなかった体に、充分な栄養が渡ってるんだろう。皆、太った…というより、普通の体型になった。



「砂塵を浴びてたせいか、肌はガサガサだけどな」


「どっちにしろ、オバサンさ!」


「シワも増えてるしな!」


「俺んちはもう、ババアだ!ストムも三十過ぎて行き遅れてるしな」


「マイも心なしか年を取ったよな…」


「ナナセさんもですよ…ていうか僕もかな?」


「どっちにしろ、リトールには年増な女が多いのさ!」


「「「「「あっはっは!」」」」」



 大盛り上がりだ。でもそんな時に、皆が慌てだす。僕には何もわからない…。



「すぐに鎧を着ろ!」


「手の空いてる者は、素早く片付けろ!」


「早くしろっ!」



 何だ?戦闘か?まさか…本当に魔物が現れた?



「よしっ、お互いを殴り合え!」


「仕方無い、やるぞっ!」



 えっ?皆が急に殴り合う。軽く血を流す者も多い…。



「囲まれてるぞ!」


「慌てるなっ!声を抑えろ!危険範囲に入ってくる!」



 何が起きてるの?囲まれてる?皆が真剣な顔付きで、静かになっていく…。



「こっちに来るぞ…」


「わかってる…皆…落ち着け…今俺達は、魔物に逃げられ休憩中なんだ…」


「ああ…わかってるさ…」



 そんな事を言い出すって事は…。来たのは…奴等って事か…。マズイぞ…。そして、入口のドアが開かれる…。



「皆さんお揃いで、何をしてたのかしら?」


「すっストムじゃないか…俺達は少し傷の手当てを兼ねて、休憩をしてたんだ…魔物が結構強くてな…」


「へぇ…アントレン…その魔物はどこに…?」


「まっマイ…ちょっと、逃げられてな…少ししたら追うつもりだ…」


「エレーカシ…あなた達がいても勝てなかったの?」


「みっミスレン…!そっそうだよ!中々手強くてね…」


「元騎士団長のあなたでも歯が立たないの…?」


「あっああ、ターチルド…あんなに強いとは…」


「タイーフン…あなたは必要なの…?」


「モーンスン、もっ勿論だ!元国王として、出来る事も多いしな…!」



 気が付くと、皆の奥さん達が揃っていた。こちらの男性陣は、全員ヒビってる…。もしかして完全にバレてないか?皆の声と目が、何も信じていないよ…。



「店長は、アドバイザーとして何をしたんですか?」


「キクチくん…私も詳しく聞きたいわね…」


「ナナセさん、マイさん…いやっ色々と…」



 ヤバイ!何も思い浮かばないよ!まさかあなた達まで…。そして後ろから、マリーちゃんが現れる…。



「全部バレてますよ!ていうか何を喋ってたかも、知ってます!」


「「「「「えっ!?」」」」」



 驚愕の発言だ。さっきの話も?一体どうやって…。



「これは、私とオースリー王国のサイトウさんと協力して作った、受信機です」


「受信機?」


「で、アントレンの持っているマジックバッグに、付けてある金属の金具が送信機です…こっそりと付けたんですよ…更に…」


「まっまさか…!」


「キクチさん…そのまさかですよ!そうです、盗聴機です!」


「盗聴機?」



 まさか…そんな魔道具が発明されているとは…。サイトウさんの馬鹿野郎!



「きっキクチ!何だその盗聴機って!」


「僕達の声を拾って、離れた所でも聞けるんです…」


「うっ嘘だろ…」


「終わった…」



 皆は後悔をし始めた…。そして自分の発言を思い出し、言い訳も考えている…。



「ダウンジングもあるし、何でバレないと思ったんですか?」


「簡単に見付けられるもんね…」


「それにずっと怪しかったよね。この何日か…ずっとソワソワしてるし…」


「何年も一緒にいて、何で気付かれないと思ったの?」



 皆はそんな事にも気付けなかった…。確かに浮かれてたけど…。



「それはともかく…誰がババアだって?」


「誰がデブだって?」


「誰がペチャパイだって?」


「誰がシワクチャだって?」


「誰が行き遅れだって?」


「「「「「……」」」」」



 もう、抵抗も出来ない。何も出来ないんだ。僕でも良くわかる…。凄まじい殺気だ。鬼神が多勢に無勢だよ…。



「アントレンも私を年増と思ってるのね…」


「店長も私を年増扱いですか…」


「「……」」



 さあ、終わりの瞬間だ。



「「「「「死ねっ!」」」」」


「「「「「ギャーッ!」」」」」



※※※



 僕達は予定よりも大分ボロボロになって、街に帰る事になった。街に戻ると、皆から白い目で見られる。男達からは同情の目で見られたが、この中に情報を売った奴がいる気もするよ…。



「さあ、残りの酒や料理を出しなさい!」


「はっはいっ!」



 僕達は慌てて、マジックバッグから残りの飲食物を出す。これが街の皆に配られるのだ…。



「なにやってるんですか!店長とアントレンは、買い出しに行ってきて下さい!」


「「えっ?」」


「これから、宴会は再開ですから!パシリは準備して下さい!」



 結局、街全体で宴会は続けられた…。だが僕達男性陣は、全員からパシリとして扱われ、皆のお酌や配膳をさせられた…。買い出しにも何回も行ったよ。でも年が明ける頃には、また関係無く皆でワイワイと飲む事が出来た。



※※※



「自分達だけで楽しもうとするから、いつもこうなるんですよ!」


「ナナセさん…わかってるんだけど…僕達は過ちを繰り返すのさ…」


「…最初から私も呼んで欲しいのに…男の人とばっかり…しかもキスまでして…」


「えっ?」


「なっ何でも無いです!」


「まぁ、良いけど…今年もよろしくね…」


「はい!今年もよろしくお願いします!」



 そして僕達の四年目も、もう終わる。丸四年経ち、五年目はやる事も増える。こちらの大陸にオシャレ文化を、作り上げる事もしたい。オースリー王国に戻って確認もしたい。これからどうなるかは、まだ誰にも予想出来ない。



 少し休んでから、再開します。ここまで読んで頂き、誠にありがとうございます。

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