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精霊(2)

「私、すこし礼拝したいです。いいですか?」

「もちろんだ。そこに跪きなさい。右手を心臓に当てなさい。目を閉じて、祈りを捧げるんじゃ。儂は席を外そう。ゆっくりやればいい。」


そう言って神父様は礼拝所から出て行った。


(さて、はじめようか。)

私は、神父様に言われた通りのポーズを取って、リーレンに話しかける。

(リーレン、言われたとおり、協会に来たよ。どうやったらあえるの?)

心の中で呼びかけると、リーレンが答える。

(簡単さ。リュリア、僕の使徒になって。そうすれば、今すぐ会えるよ。一種の契約みたいなもんだけど、拘束力はあまりないから気にしなくていいよ。僕が契約を申し込むから、思い浮かんだ言葉をそのまま口にして。それで契約は成立する。)

(わかった。)

今更だ。リーレンの使徒になんて、望んでなる。

(じゃあ。・・・汝、我が使徒となりて、我に忠誠を尽くしたまえ。)

リーレンが言葉をつむぐ。

(お言葉のままに。我、いつなんときもそなたの傍にあり、そなたの支えになる事を誓う。)

目を開けると、心底可笑しそうに笑うリーレンの姿があった。

(あははははっ!可笑しい。神様に向かって、「そなた」だって。しかも、神様に支えてもらうために使徒になるのが普通なのに、「支えになる」って。ははっ、可笑しい。・・・・・でも、嬉しかったよ、ありがとう。リュリア。)


リーレンはふっと微笑み、私の頬に触れる。そこには確かに、柔らかな感触と、暖かい温度があった。


「え・・。リーレンにさわれるの!?」


私は嬉しくてつい、リーレンに飛びついた。私よりもいくらか小さいリーレンの体は、すっぽりと私の中に収まる。


「ちょっ、リュリア。僕、神様!神様なんだけど!」

「そんなの知らない。私にとってリーレンは、大切な家族だ。」


(・・・・・はーーーー。まあいいや。威厳が損なわれる気がするけど、大勢の使徒の信仰より、リュリアの好意のはうが嬉しいし。)

はにかみ笑いを浮かべるリーレンは、そんな事を思うが、声には出さない。

そして、リュリアの突飛な行動を許してしまう。リュリアにはめっぽう甘い。


「で、なんで使徒になるとリーレンと会えたわけ?」

「ボクとリュリアが、この世界を介してつながりを持ったからさ。今までの僕らのつながりは、直接僕らを繋げるものばかりだっただろう?真名とか、加護とか。」


私はこくりと頷く。


「だから、僕の世界では繋がりが大きかったけど、こちらの世界に来るとそうもいかない。僕らのつながりに、この世界は一切関係ないから。」

「だから、この世界の宗教で、私たちにこの世界を通したつながりをつくり、私たちだけのつながりも、この世界で発揮できるようにした、と。」

「大正解!」

「なるほどね」


リーレンはしばらく、されるがままでリュリアの質問に答えていたが、はっと気づいてリュリアから体を離す。


「それより、リュリア、発作のことはなしに来たんでしょう?教えて。」


本題を繰り出され、リーレンをだく手を緩める。そして、これまでの経緯と問題点を説明した。


「リュリアは規格外だね。そんなに魔法が使えるなんて。予想外だったよ。でもそっか。治癒魔法や回復魔法みたいな、体の働きや作りに関する魔法は使えなかったんだね。それで、[発作は感じなくなった]けど、体力が持たないから、定期的に回復魔法をかけてくれる人が必要、と。」

「うん。リーレンに頼みたいんだけど、だめ?」

「いや、そうしたいのはやまやまなんだけど、僕の力って大きすぎて、あまり何度も回復魔法かけてると、君が人じゃなくなっちゃう。」


はい、爆弾発言いただきましたぁー。

人じゃなくなるって。


「リュリアは、魂の位、霊格が高いから、これ以上その体に力を入れ込むと、神格化しちゃう。」


神格化とは、種族を超越した存在だ。

わかりやすい例だと、鯉が神格化すると龍に。

犬が神格化すれば、犬神に。といったところだ。

人が神格化すれば、人神になる。

詰まるところ、神と同じくらいの力が、何かしらの生物に宿ることを言う。

本物の神には遠く及ばないらしいが。

また、動物の種類によっても、神格化に必要な力の量が違う。

人間が神格化するには、ほかの動物とは比べ物にならないくらいの力が必要なのだが、私はそれの一歩手前らしい。


「本当は週一回くらいは回復したほうがいいけど、僕のだと、1ヶ月に一回くらいの頻度じゃないと体に力が溜まりすぎて神格化しちゃう。かなり無理をさせることになるよ。」

「んー、じゃあ、条件(回復魔法が使えること、信頼できること、いつも私とある程度近くにいること、魔力が多く定期的に回復魔法を使っても負担にならないこと)をクリアする人が見つかるまで、お願いできる?」

「わかった。じゃあ、早速かけるよ」


そういうやいなや、リーレンは私の額に手を置き、回復してくれる。


「よし、おわり。・・・うん。だいぶ顔色がとくなったよ。」

「サンキュー。リーレンはこれから、いつでも会えるんだよね?」

「うん。僕、リュリアについて回ろうと思ってるよ。」

「お、やった。じゃあ、ずっと一緒どだね。・・・そういえばだけど、リーレンて、ほかの人にも見えるの?」

「見せることはできるけど、何もしなければ見えないよ。あ、ルカは加護付けたから見えるけど。普段は姿消して、リュリアたちにも見えないようにしとくけどね。そのほうが、周りの人に怪しまれにくいでしょ。」

「そうだね。じゃ、会話は念話だね。・・そろそろ出よう。外の精霊とも話したいし。」

「わかった。きっとリュリアは、精霊たちに気に入ってもらえるよ。魂の位、霊格が高いからね。」


へえ。魂の位が高い人間を、精霊は気にいるんだ。

それを聞いて、私のテンションだだ上がりする。



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