精霊
朝食をとっているとき、私はテルガさんに話を持ち出した。教会に行きたい、と。
「協会?なんでまたそんなところに?」
「前に、協会には精霊がいるって言ってたじゃないですか。一回見てみたいなあ、と思いまして。」
嘘ではない。一番の目的はリーレンに会うことだが、その次ぐらいの目的は、これである。
「姉さん。精霊は必ずしも見える訳ではない、とも言ってたよ。あまり期待しないほうがいいと思うけどなあ。」
「いいじゃん。駄目で元々。見えればラッキー、ってことで。」
「リュリアちゃんは元気だな。昨日までは、余命を気にして生活してたっていうのに。」
呆れ半分、関心半分の目をされた。
「だから、ですよ。せっかく、大問題が解決したんですから、遊びたい気分になったんです。」
「ん、確かにそうだな。じゃあ行ってみるか。だが、この村の協会は本当に小さいし、古いぞ。あんまり期待すんなよ。」
そんな会話をしながら協会へ向かう。
で、目に付いた協会は、はなしのとおり、古く、小さかった。
しかしなんというか、趣があって、いい感じのところだった。
「どうだ、精霊は見えたか?まあそう肩を落とすな。見えないのが当たり前なんだからな。」
「・・・私、見えないって言ってなくない?」
「強がるなって。大丈夫。見えないのが当たり前な、ん・・だから・・・・・な?」
見えていないと決め付けるテルガを、全力で睨みつける。すると、テルガさんの言葉が尻すぼみになっていった。
「まさか、みえてんのか?だってさっき、ぼーっとして・・・」
「それは、残念がってたんじゃなくて感動してたの!ていうか、ルカも見えてるみたいですが?」
ルカは先程から、空中を泳ぐように移動する精霊たちを目で追っていた。
精霊は皆、とても綺麗な容姿を持っている。皆一様に、淡く光る粉を全身にまぶしているように輝いているが、光の色は違った。赤や青、緑にオレンジ、黄色、それから、黒と白がある。
おそらくこの色は、種族によって違うのだろう。
「まじかお前ら。穏当にハイスペックな奴らだな。つうか、早速目的果たしちまったぞ。」
「あ、たしかにそうですね。でも、どうせなので中も覗いてきますよ。」
そう言って私は協会の中に入る。テルガさんは、精霊に見入っているルカとともに外で待っているそうだ。
協会の窓には、おそらくここで崇めている神様を模したものであろうステンドグラスで飾られている。
(なんかこのステンドグラスの絵、リーレンにどことなく似てないか?まさか、ここって・・・)
そんなことを考えていると、足音が聞こえてきた。
「おやおや、若い礼拝者とは珍しい。」
音がする方に目を向けると、そこにいたのは、かなり年をとった老人だった。
「神父様、ですか?」
服装からそう判断する。
「いかにも。といっても、この協会には、儂しかいないがな。なにせ小さいから、そんなに人手がいらんのだ。それより、お前さん、祈りを捧げに来たのだろう?初めて良いぞ。」
「ああ、いえ、そのことなんですが。私、この協会で崇めてる神様のこととか、何も知らないんです。よければ教えて頂けませんか?」
なんとなく予想は付いているが、知らないのは事実なので教えを請うことにする。
「そうだったのか。しかし、この国に住んでいながらリーレン様のことを知らないとは。今までどのように育ってきたんじゃ?」
はい、爆弾発言頂きました~。
神父様、今リーレン様って言ったよな。やっぱり、ここで崇めてるのって
りーれんなのか。
「いえ、私、ひどい病気を持っておりまして。今まであまり外に出たことがないんですよ。」
適当な事を言うと、神父様は納得して話をしてくれた。
神父様の話をまとめると、こんな感じだ。
この世界がまだ出来たばかりの頃、まだ大陸はひとつしかなく、人間と魔族、魔獣がひとつの大陸で暮らしていたそうで、世界は荒れまくっていた。魔族はみさかいなく人を食らっていたのだという。命の危機を感じていた人々は祈りを捧げたそうな。どうか我々をお救いください、と。
するとそこに、一人の子供が現れ、大陸を二つに分け、人間と魔族の大陸に分けた。それが今の陰大陸と陽大陸だそうで。
この言い伝えから、その子供は人々の救世主として、崇められているそうな。
おしまい。
ちなみにこの話は三歳でも知っているような話で、陽大陸に存在する宗教はこれ一つなんだそうな。まじか。私とルカ、リーレンの加護受けてんだけど。ついでに私、リーレンの真名知ってんだけど。事実上、契約してるようなモンなんだけど。リーレンの言う条件とやらが満たされれば、会話もできるし、会うこともできるし、リーレンの魔力を使うことも、呼び出すこともできんだけど。
つーか、リーレンの世界、子供の時も合わせれば、数え切れないくらい行ってるんだけど?
これは、絶対に隠し通さなきゃいけない事実だな。
教会に知られでもしたら、絶対に捕まる。巫女だかなんだかにされる。それは、やばい。
・・・・・・・なんか私、隠さなきゃいけないこと多すぎないか?辛いんだが。いつぼろが出るかわかったもんじゃない。まあ、そんなヘマはしないけど。
「私、すこし礼拝したいです。いいですか?」
「もちろんだ。そこに跪きなさい。右手を心臓に当てなさい。目を閉じて、祈りを捧げるんじゃ。儂は席を外そう。ゆっくりやればいい。」
そう言って神父様は礼拝所から出て行った。




