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初めての魔法(2)

私たちは、おじさんの家の裏に回る。するとそこには、小さな小屋があった。倉庫位の広さで、中には何もない。


「この小屋は、防御魔法がかけてある。この中でなら、ある程度の黒魔法を使ってもびくともしねえぞ。

お前らは、こんなかで魔法の練習をしろ。俺は、魔法は使えるがお前らほど魔力の量も質も高くない。教えられるのは基本だけだ。あとは、自主練しろ。わかったか?」

「「はい!」」


私たちは一斉に頷く。


「よし。じゃあ、そうだな。まずは炎の黒魔法からだ。指を一本立てて、そこに火が灯るイメージをしろ。魔法で重要なのはイメージと、魔法に疑問を持たないことだ。魔法を受け入れろ。なぜ、なんて考えなくていい。自分ができると思ったら、できる。それくらいの気持ちでやれ。呪文は人それぞれだ。魔法を発動しようと思ったとき、自然と頭に言葉が浮かぶ。それが、発動の合図となる。」


私は、森で魔獣を燃やしたとき、「燃え尽きろ」といった。呪文とは、あのようなものの事を言うのだろう。


「よし、やってみろ」


私は、指先に、そうそくのような日が灯るところをイメージする。


「「灯れ」」


私たちは、同じ言葉を唱えた。すると、イメージ通りの火が、指先で燃えている。ルカも同じだった。

るかは、すごく驚いた顔をしている。しかし私は、魔法とはこういうものだろう、と思い、特に驚くことはなかった。これが、魔法を受け入れるということなのかもしれない。



「おまえら、なかいいなぁ。同じ言葉で発動したか。まあいい。このくらいなら、難なくできるようだな。よし、次だ。この木に、なんでもいいから、黒魔法を放て。コイツが敵だと思って、殺すつもりで発動しろ。」


「切り刻め」

「・・・」


私はすぐにそう唱え、風で木を木っ端微塵にした。さっきは火を使ったので、今度は風を使おうと思ってイメージをした。

しかし、ルカはまだ魔法を発動していない。


「ルカ、どうしたの?」

「なんか、イメージはしたんだけど、言葉が浮かばなくて。」


困り顔のルカに、おじさんが笑って説明をする。


「そうか。ルカは黒魔法が得意じゃないようだな。俺はさっき、敵を殺すつもりで発動しろ、といっただろう。それは、黒魔法は、何かを傷つける為の魔法だからだ。お前は、あまり好戦的な性格ではないのだろう?だから、魔法に迷いが生まれ、発動できなかった。魔法の向き不向きは、術者の性格に大きく左右されるんだ。」

「・・・では、何らかの理由で、ルカが何かを傷つけることに迷わなくなれば、黒魔法を使えるんですか?例えば、大切なものを守るため、とか。」


私は、疑問に思ったことを口にする。


「お、鋭いな。これから説明しようと思っていたんだが。結果から言うと、そういうこともあり得る。が、すごくまれだ。」

「なぜ?」

「ああ。さっきの例えで行くと、術者は何かを守るために仕方なく、仕方なく相手を傷つけているんだ。つまり、それは術者の本意ではない。その感情の揺れが迷いとなり、魔法発動の邪魔になるんだ。だから、術者が相当、相手のことを恨むなり蔑むなりしてないと、無理だ。」

「なるほど。」


つまり、本来何かを傷つけることを望まない者は、強力な黒魔法が使えない。しかし、黒魔法の対象が術者にとって、心から「傷つけても構わない」と思えるものであれば、強力な黒魔法を使える・・と。

そういうことだろう。そして、ルカは、何かを傷つけることを望んでいないから、黒魔法が得意ではない、と。


「・・・じゃあ、黒魔法が得意な人って、何かを傷つけることを望んでるってことですか?」

「いやいや、違うよ。まあそう言う奴もいるもかもしれないが、黒魔法が得意な奴は、傷つけることに抵抗がないってだけだ。これも、魔法の対象によるがな。黒魔法が得意な奴も、大切なものなどに対しては、大した威力は出せんよ。」


あ、安心した。いま、私は難なく木を傷つけることができたから、もしかして自分には何かを傷つけて快楽を感じるような趣味があるんじゃないかと、マジで焦った。

でも、そういうことなら安心だ。私はさっき、木を敵だと思って発動したから、成功したのだろう。


「まあ、とにかく、だ。今ので、リュリアは黒魔法が得意、ルカは苦手、とまではいかなくても、不得意だとわかったわけだ。で、次は白魔法だ。さっき、紙に血を垂らすために切ったところがあるだろう?そこを、治してみろ。」


私たちは自分の傷に意識を集中させる。


「・・・」

「治れ」


今度沈黙したのは、ルカでなく私だった。ルカの傷は治っている。

あー、やばい。よりによって、治癒魔法で躓くとは。どうにかしなければ、マジで私の命が危ない。


「お、今度はリュリアが引っかかったか。そうだなあ、リュリア、今度は治癒じゃなく、防御魔法をかけてみろ。この木に。」


そう言って、さっきルカが攻撃できなかった木をワわたしてくる。


「守られよ」


私がそう口にすると、木は光に包まれ、光はやがて、木に収束してきえた。


「我が魂に宿りし力よ。燃やし尽くせ。」


おじさんが魔法を発動し、木を炎が包むが、木には焦げは少しもなかった。


「防御魔法は使えるのか。白魔法自体が使えないわけじゃないみたいだな。おい、あんた。なんか、怪我が治ることに、なんか疑問を持ってねえか?」


怪我がいきなり治ることへの疑問。そんなの、ありすぎるくらいある。

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