表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/32

初めての魔法(3)

怪我がいきなり治ることへの疑問。そんなの、ありすぎるくらいある。


怪我だけではない。病気だって。

いきなり治るなんてことはありえない。なぜそう思うのかというと、そんなことはありえないと、知識として知っているからだ。


私は子供の頃、医者を目指していた。度々あいつに傷つけられる家族の怪我を、自分が治すためだ。日々、あいつからの扱いで疲弊していく家族の心の病を、治すためだ。本当は、傷つけられる前に守ってあげられたらよかった。しかし遅くに生まれてきた私は、いつも守られる側だったのだ。

小さく軽い私の体は、大切なものをかばいきれない。

大切な人に庇われれば、その腕の中から抜け出せず、家族が傷ついていくのを見ているしかなかった。


ならば。ならばせめて、私のせいで傷ついた彼らを、今度は私が癒そう。そう思った。

私は一刻も早く、少しでも多くの知識を身に着けようと、医療の知識を貪った。

まあ結果的に、私の治したい傷を持つ人はいなくなってしまったわけだが。

光太が傷を負う前にあいつが死んだのは幸いだったが。

そんなこんなで、私が学んだことを活かす機会は訪れなかった。


しかし、私が身につけた知識は余りにも膨大だ。

世界に存在するすべての怪我や病気の名前、その原因と治療法、治るまでの体の動き。

あいとあらゆる薬の名前、その効果や成分、それを体に取り込むと体に何が起こるか。

人の体のつくり、どのような流れで怪我や病気が治るか、治すためには何がどのくらい必要でどのくらいの時間を要するか。

それこそ、元いた世界でわかっている、全ての医療知識を持っていたと言っても過言ではない。


このような知識を持っていて、なぜいきなり怪我が治ると言われて、「はい、そうですか。」と言えるだろう?

長いあいだ頭に詰め込んできた膨大な知識が邪魔をして、リュリアは治癒魔法が使えないのだ。



(まさか、知識を持っていることにこんな欠点が有るなんて・・・)


「・・・その様子だと、なんか理由がありそうだな。まあ、使えないもんは仕方ねえ。次行くか。」

「っ!待って!使えないと困る!」


自分でもびっくりするような、悲痛な声が出る。

おじさんは、私の数倍はびっくりしただろう


「訳あり、みたいだな。よければ話してくれ。物によっちゃあ、力になれる。」


隠す理由もないので、病気のことを話した。


「・・・という訳で、病気をどうにかしないと私、一ヶ月持たずに死にます。」


事実だ。薬は、後二週間分しかない。発作を起こした状態で何日もつかどうか。


「おいおいおいおい、チョーおおごとじゃねえか。随分さらっと言うなぁ!?」

「いえいえ、それほどでも。」

「褒めてねえよ!!!!でも、それなら自分で治癒しなくても、誰かにやってもらえばいいじゃねえか。何がそんなに問題なんだ?」

「いえ、それが。私の病気って特殊でして。自分でしか直せないらしんですよ。」


これもまた事実だ。以前、リーレンから聞いた。

私の病気の原因は、魂の傷。その傷をなくすことはできないが、凹んだ部分に魔力を送り込み、本来の形に戻すことはできる。根本的な解決にはなっていないが、そうすることで、症状を抑えることはできるらしい。

だがそれには条件があって、それが、自分の魔力で傷を埋めること。そうでないと、拒否反応を起こし、死んでしまうそうだ。

リーレンと私は、魔力を共有しているのだから、リーレンを通して私の魔力を魂にし込めばいいと思ったのだが、そうすると、リーレンの魔力が少なからず私の魔力に混ざってしまうので、無理らしい。

このような理由から、自分でやるしかなかったのだが、私にはできないことが今わかった。絶望的である。


「なんだ、それ。しかし、それが本当ならきつい状況だな。お前の病気って、どんなのだ?」


私は、発作の症状を詳しく教える。


「頭痛、吐き気、高熱、呼吸困難、心臓麻痺、体に力が入らない、ってとこですかね。」

「おいおいおいおい、お前、そんなんでよく生きてこれたな。」

「私もそう思います。」

「はぁ~~~~~。まあいい。そうだなあ。ほかの魔法でどうにかするぞ。頭痛や吐き気なんかの苦痛は、自分の体に麻痺をかけて、感じなくさせる。呼吸困難、心臓麻痺、体に力が入らないことに関しては、傀儡で体を操り、通常運転させる。熱は、冷却魔法で体内から冷やす。これをすべてやれば、外から見れば普通の人間の出来上がりだ。」

「おお!!それなら出来そう!」


私がそう言うと、おじさんは呆れた顔をした。


「できそうって、お前なあ。本来なら、有り得ねぇことのんだぞ。こんなに魔法を重ねがけしたら、魔力枯渇で死ぬっつうの。つうか、ここまで重ねる前に枯渇するわ!」

「でも、私の魔力の量が規格外だから、できるかもしれないんでしょ?」

「ああ。かも、な。でも、失敗したら死ぬぞ。」

「いいよ。それならそれで。どうせできなければ死ぬし。」

「ダメだよ、姉さん。死ぬなんて許さない。それに、死ぬ気、無いでしょう?」


これまで黙って話を聞いていたルカが、いきなり口を挟む。


「当たり前♫こんなんで死ねるかって言うの!」

「お前らなあ。ついでに言うと、これを実行するには、傀儡魔法、麻痺魔法、冷却魔法が使えて、重ねがけ出来るだけの才能が必要なわけだが?リュリアはまず、この条件を満たすところからだ。言っておくが、そんなことできるやつ、歴史上にも存在しな」

「それならもう出来てると思うけど?」

「・・・・・はっ??????」


私は今、松葉杖を置き、自力で立っている。手も、両方きちんと動く。動かない手足を傀儡で操っているのだ。そして、それと同時におじさんの体の痛覚を麻痺させ、空気を一部冷却し、氷を作っている。ついでに、その氷も、傀儡魔法で浮かせている。


「・・・・・・・・・・・・・・・・はああああああああああああああ?!おまっ、ほんとに人間か!?」

「失礼な。人間でしょ。どこからどうみでも。」


文句を言うついでに、氷をおじさんにぶつける。勿論、傀儡魔法で操って、だ。


「いっ・・たくない。お前、俺に麻痺までかけてんのか!?っていうか、いつ発動した!?詠唱、いつの間にしたんだ!?」

「してない。なんか、しないでもできた。」


事実をありのまま口にする。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。もう突っ込まないことにする。お前は、人間じゃねえ。こんな人間、ありえない。」

「でもまあ、かなり魔力減ったね。八割くらいは使ったかも。」

「おま!早く魔法とけ!!枯渇するぞ!!!!」

「あ、了解」


私が、魔法が解けるようにと願うと、魔法は解けた。手足の傀儡だけはそのままにしたが。


「よし、解いたな。あー、気を取り直してだなあ。お前が規格外だということはよくわかった。だが、今のまま発作を抑えようとすれば、必ず枯渇するだろう。人体に魔法をかけるのは、かなりの魔力を使うからな。という訳で、今日からみっちり特訓だ。より少ない魔力で、より正確で威力の高い魔法を使えるようにな。わかったか?」

「はい!」

「よし。じゃあまずは、一回テルガんとこもどって飯食って来い。その間に、俺はいろいろ準備しておくから。」


ふと時計を見ると、お昼を回ろうとしている。


「わかった。食べ終わったらまた来るよ。」

「いいか。おまえ、絶対に魔法のこと正直に話すなよ。魔力はルカと同じくらいの量で、質は二人共、平均より少し高め、そうだな、36色くらいだったことにしとけ。使える魔法に関しては、ルカはそのまま言っていいが、リュリアは、重ねがけできること、無詠唱で発動できることは隠せ。んで、病気は普通に、治癒魔法で治す事にしとくんだ。下手に治癒魔法が使えないといって、じゃあどうやって病気を治すのか、なんて聞かれると面倒だからな。いいか?」

「「了解」」


私たちは同時に返事を返し、小屋を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ