第27話:PICTURE句の鉄壁と、駅前再開発のゴーストタウン
地下最最深部からメインフレームとともにせり上がってきたコボルばあさんは、まるで「最新の都市計画(青写真)をすべて無視して駅前のド真ん中に居座り続ける、地元の一大大地主」のような、圧倒的な不動のオーラを放っていた。
「コボルばあさん……。頼むから最新のクラウドAPIの仕様変更に合わせて、家賃決済のロジック(土地)を少しだけアップデート(譲渡)させておくれよ。そうすりゃ駅前再開発みたいに、オアシス幕張のシステムがもっとスマートになるんだからさ」
パー子姉さんがハスキーボイスで懇願するが、コボルばあさんは冷徹に鼻で笑った。
「ふん、スマートだか何だか知らないがね、新参者のデベロッパー(クラウドAPI)が勝手に引いた境界線なんぞに、明治の時代から続く我が家の登記(10進数演算)を1ミリだって明け渡すわけがないだろう。だいたい、あんたたちの持ってきた最新の図面は贅肉が多すぎるんだよ」
「おばあさん、それは頑固が過ぎるというものだ」
ネオHeavenのジョーさんが、最新のグラファイト製タブレットをスマートにフリックしながら前に出た。
「我がMojoの超高速自動生成アルゴリズム(重機)をもってすれば、お宅の古い40年物のブラックボックスロジック(木造平屋)など、一瞬でリバースエンジニアリングして更地にできる。これより我がシステムが、その頑固なコードを強制的にリビルド(立ち退き執行)させてもらう!」
ジョーさんのタブレットから、最新の不正決済検証用パケット(数万通りの疑似トランザクション)が、地下のメインフレームへ向けて一斉に射出された。最新AIが誇る、力技のデータハッキング。
しかし、コボルばあさんは表情一つ変えず、古い緑色のCRTモニターの前に立ち、独自の型宣言(地主の境界線)を厳かに指定した。
cobol
01 KANJOU-DATA PI 909).
コードは注意してご使用ください。
「ジョーさん。あんたの最新言語は、データを自動で型変換(動的型付け)して賢ぶるから、裏で1円の誤差(浮動小数点バグ)を出してハルシネーション(地理的嘘)を起こすんだよ。
うちの土地(固定長データ)はねぇ、1文字のデータの歪みも、1円の計算ズレも絶対に許さない【PICTURE句の鉄壁】さ。あんたの重機を、構文エラー(SYNTAX ERROR)でその場に埋めてあげるわ!」
ジョーさんの放った数万発の超高速パケットが、コボルばあさんの指定した固定長データ(PICTURE句)に衝突した瞬間――。
[ERROR] SYNTAX ERROR: データ長が一致しません(403 Forbidden)
カシャコン!という鈍いシステム音とともに、ジョーさんの最新ハッキングコードは、更地にするどころか境界線をまたぐことすらできず、その場で文字通りすべて粉砕(立ち退き失敗)させられた。
コボルばあさんがパンチカードをパチンと叩くと、オアシス幕張の周りのデジタル道路(通信網)が、その「頑固な一画」を避けるように、不自然にカクカクと曲がったレガシーパッチだらけの迷宮へと変貌していった。開発に応じない大地主がもたらす、完璧なシステムのデッドロック。
最新のAIが、古い平屋の前に完全にお手上げになった瞬間だった。




