59話:幽霊
ガサッ……!
「ねえ……今、あそこから物音がしなかった……?」
アリアさんは、道端に置いてある樽を指して言った。
「ええ……。確かにしました……」
イヴちゃんが震えながら言う。
「ニャ……。聞こえたニャ……」
にゃも助は怖いのか顔を下にして言った。
「ちょっと私、確認してみます……」
私は樽のそばに向かった……
その時!
バッ……!
「きゃああああああ!!!」
目の前に変な仮面をつけた女の子が立っていた。
「あ……あぁ……例の幽霊だ……」
アリアさんが腰を抜かして言った。
仮面の女の子は私たちに近づき……
サッ……
ガバッ……!
っ……!!!!
私はすごい速さで持ち物を奪われた。
タタタタタタッ……
仮面の女の子はそそくさと逃げた。
「あ!こら!待ちなさい!」
「梨花さん、ここは私が。エアーブースト!!!」
ヒュン……!
イヴちゃんがとんでもない速さで私の横を通り過ぎた。
「わっ……!」
女の子はイヴちゃんに捕まった。
「離せよ!デカパイ女!」
「デカッ……とにかく、盗んだものを返しなさい……」
「ふんっ!返すものか!」
「あなたは、いつもこんなことをしているのですか……?」
「そーだよ、何か悪いかよ!」
「ええ、悪いことです。なぜ、こんなことをするのですか?」
「………。お前には関係ないことだろ……」
女の子は俯きながら言った。
「はあ……とにかく、返してもらいますよ。」
「嫌だね!」
女の子が、イヴちゃんの腕を振り払おうとした時……
カランカランッ……
女の子の仮面が外れた。
仮面が外れた女の子は、緑掛かった青髪で可愛い顔立ちだった。
あの子……昼に私と、ぶつかった子じゃん……
「っ……ぅ、うぅ……」
女の子は泣き出してしまった。
「とりあえず、この子とあそこのベンチに座りましょう」
ようやく立ち上がれたアリアさんが、近くにあったベンチを見て言った。
ベンチに座り、女の子が落ち着いたので、私は女の子に聞いた。
「それで…なんで、こんなことしたの?」
「お姉ちゃんが……攫われたんだ……」
「トカゲみたいな怪物に?」
女の子はコクッと頷いた。
「お姉ちゃんは……私のために夜遅くまで水商売をしていたんだ……。いつも、朝になったら姉は帰ってきたけど……、その日は帰ってこなかったんだ……」
「……」
「それで、それで、私はずっと待ってたんだけど…2日間も帰ってこなくって……。私は両親もいないし、姉だけが頼りだったのに……」
「そうだったんだ……」
「私……生活するために、お金を盗んで……この1ヶ月間は食い繋いだんだ……」
「それは辛かったね……」
「なあ!お前達は異国の使者なんだろ!トカゲの怪物をやっつけてくれよ!」
「もちろん。君のお姉さんも探すよ」
「ありがとう!それと、私の名前は、アルカ・リンポス!」
「今、リンポスと言いましたか!?」
イヴちゃんが驚いた声で言った。
「言ったけど……。デカパイ女どうかしたのか?」
「デッ……。リンポス家は……」
イヴちゃんが少し震えた声で言った。
「リンポス家は、魔法の母の一族です」




